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建物に内部造作をした場合の税務上の耐用年数

概要

 事務所や店舗、工場などについて内装工事を行った場合、「内装工事だから耐用年数は○年」と一律に決めることはできません。

 まず、その工事が「建物」「建物附属設備」「器具及び備品」「機械及び装置」などのどの減価償却資産に該当するのかを判定し、そのうえで、それぞれの資産区分に応じた耐用年数を適用する必要があります。

 また、自己所有の建物に内部造作をした場合と、他人から賃借している建物に内部造作をした場合とでは、耐用年数の取扱いが異なります。

自己所有の建物に内部造作をした場合

 自己所有の建物について内部造作工事を行った場合には、まず、その支出が修繕費に該当するのか、資本的支出に該当するのかを判定します。

 固定資産の通常の維持管理や原状回復のための支出は原則として修繕費となりますが、その固定資産の使用可能期間を延長させ、又は価値を増加させる部分に対応する金額は資本的支出となります。

 修繕費か資本的支出かは、「修繕工事」「改装工事」などの名称によって決まるのではなく、その工事の内容及び効果の実質によって判断します(法令132、法基通7-8-1以下)。

 資本的支出に該当する内部造作のうち、建物附属設備等として独立した資産区分に該当しないものについては、その造作の構造が建物本体の骨格の構造と異なっている場合であっても、原則として建物に含め、当該建物の耐用年数を適用します(耐通1-2-3)。

 例えば、鉄筋コンクリート造の旅館について、その内部を和風にするため木造の内部造作を行った場合でも、その内部造作を建物本体から分離して木造建物の耐用年数を適用することはできません(耐通1-2-3)。

 また、工場建物について、温湿度の調整制御、無菌・無じん、空気の汚濁防止、防音、遮光、放射線防御等のため特別な内部造作をした場合についても、その造作が建物附属設備等に該当しない限り、原則として建物に含めて取り扱います(耐通1-2-3)。

 自社の所有する建物(鉄筋コンクリート造)の事務所内に、新たにコンピユーターを設置するための部屋を主として木材を使用し造作したとしても、建物本体とは別に木造建物の耐用年数を適用することができません。

 なお、建物を構成するものは、建物の基礎、柱、壁、はり、階段、窓、床及びこれらの仕上施工物のほか、その従物たる畳、ふすま、障子、ドア、リノリウムその他本体と一体不可分の内部造作物の一切とされており、店舗等のシャッター、建物の壁面を構成するショーウィンドー等も建物に含まれます。

東京地裁平成17年1月21日判決(税資255号-23(順号9904))

 内部造作が「建物」「建物附属設備」「機械及び装置」などのいずれに該当するのかについて参考となる裁判例として、東京地裁平成17年1月21日判決(税資255号-23(順号9904))があります。

 この事件では、電気通信機器メーカーが自己所有する工場建物の内部に設置した電波暗室について、納税者は「機械及び装置」に該当するとして10年の耐用年数を適用していました。

 これに対して課税庁は、電波暗室本体は工場建物の内部造作に該当するとして、工場建物と同じ耐用年数を適用すべきであるとして更正処分を行いました。

 東京地裁は、耐用年数省令における建物の耐用年数について、建物本体だけでなく、建物附属設備に該当するものを除いた内部造作についても総合して算定されているとの考え方を示しました。

 そのうえで、建物附属設備として独立した償却単位とされていない内部造作であって、建物と物理的・機能的に一体となり、その建物の用途における使用のために客観的な便益を与えるものについては、建物に含めて建物の耐用年数を適用するのが相当であると判断しました。

 本件の電波暗室については、工場建物の建設当初から設置することが予定され、電波暗室の設置を前提として建物が設計されていたこと、シールドルームの支柱等が建物の柱や梁等に固定されていたこと、アンテナ等の性能測定という工場の用途に即した便益を与えていたことなどから、建物と機能的・物理的に一体となった内部造作であると認定されています。

 この結果、電波暗室本体については「機械及び装置」の耐用年数10年ではなく、工場建物と同じ耐用年数31年を適用すべきであるとされました。

 一方、電波暗室に含まれていた電源盤及び絶縁トランス等については建物附属設備として15年、インターホン及び監視カメラシステムについては器具及び備品として6年の耐用年数を適用すると判断されています。

 この判決からも、内装工事について工事費全体を一括して同じ資産区分とするのではなく、各工事の構造、機能、建物との物理的・機能的一体性及び建物の用途との関係を確認したうえで、建物、建物附属設備、器具及び備品等に区分する必要があることが分かります(東京地裁平成17年1月21日判決・平成15年(行ウ)第633号・税資255号-23〔順号9904〕、耐通1-2-3)。

 なお、この判決では、電波暗室の性能保証期間が10年であることを理由に10年の耐用年数を適用すべきであるとの納税者の主張も退けられています。

 耐用年数省令に定められた耐用年数は、通常の維持補修を行うことを前提とした資産の効用持続年数を基礎として定められているため、メーカーが定めた性能保証期間と税務上の耐用年数とは必ずしも一致しません。

他人から借りている建物に内部造作をした場合

 法人が建物を賃借し、その建物について自己の事業のために内部造作をした場合には、自己所有建物の場合とは異なる取扱いがあります。

 賃借建物について行った造作のうち、建物についてされた造作については、その建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案し、合理的に見積もった耐用年数によって減価償却します(耐通1-1-3)。

 他人の建物についてなされた内部造作は、①建物本体の所有者と内部造作を施した者が異なること、②構造体を基礎として算定されている建物の耐用年数を造作部分のみの場合について適用することは相当でないことを理由として、その内部造作を「一の資産」として耐用年数を合理的に見積もることとするものです。

 一方、その工事が建物附属設備についてされたものである場合には、その建物附属設備について定められている耐用年数を適用します(耐通1-1-3)。

 したがって、「賃貸物件の内装工事だから一律に○年」という処理は適切ではありません。まず、各工事について資産区分を判定する必要があります。

同じ建物に複数の内部造作をした場合

 同一の建物について行った造作は、工事項目ごとに個別の耐用年数を適用するのではなく、原則として、建物についてされた造作の全部を一の資産としてまとめ、その造作全部を総合して合理的な耐用年数を見積もります(耐通1-1-3注)。

 そして、その合理的に見積もった耐用年数により償却します。

 ただし、一の区画ごとに用途が異なっている場合には、同一の用途に属する部分ごとに一の資産として取り扱います(耐通1-1-3注)。

 例えば、同じ建物の中に店舗部分と事務所部分があり、それぞれ用途が異なる場合には、建物全体について無条件に一つの耐用年数を適用するのではなく、用途の区分も考慮する必要があります。

合理的に見積もった耐用年数とは

 耐通1-1-3では、賃借建物について行った内部造作の耐用年数について、特定の計算式を定めているわけではありません。

 その建物の耐用年数、造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に耐用年数を見積もることとされています(耐通1-1-3)。

 したがって、例えば「内装工事は一律10年」「賃貸借契約が10年だから耐用年数も10年」というように機械的に決めることはできません。

 実務上は、工事見積書、請求書、仕様書、図面、使用材質、工事内容、想定される使用期間、賃貸借契約の内容等を確認し、なぜその耐用年数としたのかを合理的に説明できるようにしておくことが重要です。

 現行の耐用年数省令における耐用年数の算定の基礎は、昭和26年の「固定資産の耐用年数等に関する省令」です。

〇東京地裁平成17年1月21日判決(税資255号-23(順号9904))の「固定資産の耐用年数等に関する省令」に関する判示

 昭和26年の「固定資産の耐用年数等に関する省令」は、建物の耐用年数について、建物本体のほかに、建物附属設備に該当するものを除いた個々の内部造作を総合して算定した上、更に建物の構造及び用途の違いを勘案して、具体的な建物の耐用年数に差を設けており、店舗用なら店舗用、旅館用なら旅館用というように用途にふさわしい内部造作を想定して算定したものである。
 そうすると、「固定資産の耐用年数等に関する省令」においては、建物附属設備に該当しない建物の内部造作については、その構造のいかんを問わず、本体である建物に含めて償却されることが想定されていたと認めることができる。そして、このような算定方式は、現行の耐用年数省令における耐用年数の算定の基礎となっていることが認められる。

 具体的には、以下のようにして鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造の建物(事務所・店舗用)の耐用年数が算定されました。

金額/1万円耐用年数金額/年数
防水設備135206.7
7203024.0
外装タイル7205014.4
窓サッシ1,2603042.0
構造体その他7,16515047.7
10,000134.8

 以上により、耐用年数は10,000/134.8=74.1・・・75年を耐用年数としています(現行の耐用年数省令は、昭和26年大蔵省令第50号を全部改正して制定された昭和40年大蔵省令第15号を基礎としており、その後も数次の改正が行われています。)。

 つまり、建物は防水設備、床、外装、窓、構造体の主要な5部分から成り立っているとし、各部の耐用年数を総合して制定されたものであるということになります。また、建物附属設備に該当するものは除かれています。

 この考え方を踏まえて、他人の建物に内部造作をした場合の合理的に見積もった耐用年数を算定する方法もあります。

 具体的な造作の耐用年数の見積り方法については、まず造作工事費を個別に分類し、各部分ごとにそれぞれの造作工事費の金額を確定し、次に各部分ごとに使用可能期間を見積った上で総合耐用年数の算定方式にしたがって行うのが原則です。

「審理専門官情報第23号 大阪国税局個人課税審理専門官 平成19年1月26日 他人の建物について行った内部造作に係る減価償却」より

 合理的に見積もった耐用年数の計算例(単位:円)

金額耐用年数金額/年数
ショーウィンドー(建物一体型)5,000,00016年312,500
その他の内装部分(木造)2,000,00022年90,909
7,000,000403,409

 以上により、耐用年数は7,000,000/403,409=17.3・・・17年となります。

賃貸借契約期間を耐用年数とすることができる場合

 賃借建物については、一定の場合には、合理的に見積もった耐用年数ではなく、賃貸借契約の期間を耐用年数とすることができます。

 具体的には、

・建物について賃借期間の定めがあること
・その賃借期間を更新することができないこと
・有益費の請求又は買取請求をすることができないこと

 という要件を満たす場合には、その賃借期間を内部造作の耐用年数とすることができます(耐通1-1-3ただし書)。

 したがって、単に賃貸借契約書に「契約期間5年」と記載されているというだけで、当然に耐用年数を5年とすることができるわけではありません。

 契約更新の可否、有益費請求権や買取請求権の有無まで確認する必要があります。

店用簡易装備や可動間仕切りに該当する場合

 内装工事の中には、建物ではなく「建物附属設備」に該当するものもあります。

 例えば、耐用年数省令別表第一の建物附属設備のうち「店用簡易装備」に該当するものの法定耐用年数は3年です。

 ただし、店舗の内装工事であればすべて店用簡易装備になるわけではありません。

 店用簡易装備とは、主として小売店舗等に取り付けられる装飾を兼ねた造作、陳列棚、カウンター等で、短期間に取り替えることが見込まれるものをいいます(耐通2-2-6)。

 また、建物附属設備に該当する「可動間仕切り」については、簡易なものの耐用年数は3年、その他のものは15年です。

 ここでいう可動間仕切りとは、建物内部に取り付けられた間仕切りのうち、取り外して他の場所で再使用することが可能なパネル式、スタッド式等のものをいいます。

 そのうち、材質及び構造が簡易で容易に撤去できるものが「簡易なもの」に該当します(耐通2-2-6の2)。したがって、単に「間仕切りだから3年」と判断することはできません。

賃借建物を退去するときに未償却残額がある場合

 賃借建物の内部造作について未償却残額がある状態で退去する場合には、その造作をどのように処理したかによって税務上の取扱いが異なります。

 内部造作を実際に撤去・廃棄した場合には、原則として、その時点の帳簿価額が除却損の対象となります。

 また、物理的には内部造作を残したまま建物を明け渡した場合でも、その資産の使用を廃止し、今後通常の方法によりその法人の事業の用に供する可能性がないと認められる場合には、帳簿価額から処分見込価額を控除した金額を有姿除却損として損金算入できる場合があります(法基通7-7-1、7-7-2)。

 したがって、「賃貸物件を退去した」という事実だけで、当然に未償却残額の全額を除却損として処理できるとは限りません。

 内部造作の撤去又は残置の状況、賃貸人への譲渡の有無、対価の有無等を確認する必要があります。

造作を賃貸人が買い取る場合

 建物の明渡しに際して造作が賃貸人に譲渡される場合や、借地借家法33条に基づく造作買取請求権が問題となる場合には、実際に取得する対価とその造作の帳簿価額等を基礎として税務上の損益を処理することになります。

 借地借家法33条では、賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作等について、一定の場合に賃貸人に時価での買取りを請求することが認められています(借地借家法33)。

 ただし、税務上「建物の内部造作」として取り扱われるものと、借地借家法上の「造作」とは、必ずしも同じ範囲ではありません。

 このため、退去時には、賃貸借契約の内容、原状回復義務、造作買取請求権の有無、賃貸人に移転する造作の範囲及び対価の有無を個別に確認する必要があります。

平成24年2月6日裁決(裁事86集)

 賃借建物について行った工事の資産区分と耐用年数について参考となる裁決例として、平成24年2月6日裁決(裁事86集)があります。

 この事案では、印刷業を営む法人が工場移転に伴い、新たに賃借した工場について、内装工事、給排水設備工事、エレベーター工事、高圧受電設備工事、照明工事等を行っていました。

 国税不服審判所は、賃借建物について行った造作について、建物本体と造作とでは所有者が異なり、建物本体の構造を基礎として算定された建物そのものの耐用年数を、そのまま造作について適用することは相当ではないとしました。

 そして、建物についてされた造作の全部を一つの資産として、その造作全部を総合して耐用年数を見積もるという耐通1-1-3の取扱いを相当であると判断しています。

 そのうえで、実際に行われた各工事については、工事費全体を一括して「内装工事」として取り扱うのではなく、その内容に応じて資産区分を行っています。

 具体的には、壁、床及び窓に施された内部造作については、建物本体と一体不可分であるとして「建物についてされた造作」に含める一方、給湯用ミニキッチン、部品洗浄用流し台、配管、便器等については建物附属設備の給排水・衛生設備等、エレベーターについては建物附属設備の昇降機設備、照明設備については建物附属設備の電気設備として区分しています。

 また、工場の高圧受電設備については、その性質に応じて機械及び装置として取り扱っています。

 この裁決からも、賃借建物に対する内装工事については、工事費全体を一括して同じ耐用年数で償却するのではなく、まず各工事の実際の内容に応じて、建物、建物附属設備、機械及び装置、器具及び備品等に資産区分する必要があることが分かります。

 そのうち「建物についてされた造作」に該当するものについて、まとめて合理的な耐用年数を見積もることになります。

 なお、この裁決では、工事費について、固定資産の取得価額となるものだけでなく、既存設備の移設費として損金となるものや、一定の少額減価償却資産として損金算入されるものも個別に区分されています。

 したがって、実務上は「内装工事一式」などの請求書上の名称だけで判断するのではなく、見積書や工事明細書等によって各工事の内容を確認することが重要です。

「合理的に見積もった耐用年数」とは―実務では何年にすればよいのか

 賃借建物に内部造作をした場合、実務上最も難しいのが「結局、耐用年数を何年にすればよいのか」という問題です。

 耐用年数通達1-1-3には、建物についてされた造作について、「当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数」によって償却すると定められています。

 ところが、通達は「どのような計算式で見積もるのか」「事務所なら何年、店舗なら何年とすればよいのか」というところまでは定めていません。

 国税庁のタックスアンサーNo.5406も、同一の建物についてされた造作は、その全部を一の資産として総合して耐用年数を見積もると説明していますが、具体的な算定式や標準的な年数は示していません(耐通1-1-3、国税庁タックスアンサーNo.5406)。

 したがって、例えば「賃貸物件の内装だから10年」「店舗の内装だから5年」というように、あらかじめ決まった年数があるわけではありません。

まず「何年か」を考える前に、どこまでが「建物の造作」なのかを確定する

 耐用年数を見積もる前に行わなければならないのが、工事内容の資産区分です。これは非常に重要です。

 例えば、内装工事の請求書が1,000万円であったとしても、その1,000万円全額について「内部造作の耐用年数」を見積もるわけではありません。

 工事内容を確認し、建物、建物附属設備、機械及び装置、器具及び備品等に区分したうえで、そのうち「建物についてされた造作」に該当する部分について耐通1-1-3による合理的な耐用年数を見積もります。 建物附属設備などに区分されたものまで、同じように合理的見積耐用年数を使うわけではありません。

 この点について参考になるのが、国税不服審判所平成24年2月6日裁決(裁事86集)です。

 この裁決では、賃借した工場について行われた各種工事について、壁、床及び窓に施された内部造作は「建物についてされた造作」とする一方、給湯用ミニキッチン、流し台、配管、便器等は建物附属設備、エレベーターは昇降機設備、照明設備は建物附属設備、高圧受電設備は機械及び装置などと区分しています。

 そのうえで、「建物についてされた造作」については、その全部を一つの資産として総合して耐用年数を見積もるという耐通1-1-3の取扱いを相当と判断しています。

 つまり、実務上の順序は、

「内装工事1,000万円だから何年にするか」

ではなく、

「1,000万円の工事内容を資産区分する」
 ↓
「その中から建物附属設備等を除く」
 ↓
「残った『建物についてされた造作』を一つの資産として耐用年数を見積もる」

 という順序になります。

では、実際に何年にすればよいのか

 ここからが難しいところです。耐通1-1-3は、少なくとも次の事情を考慮するよう求めています。

・造作した建物の耐用年数
・造作の種類
・造作の用途
・使用材質
・その他、造作の使用可能期間を判断するための事情

 ただし、これらをどのような割合で考慮するのかについて、通達上の計算式はありません。

 例えば、鉄筋コンクリート造の事務所用建物であれば建物自体の法定耐用年数は50年ですが、賃借人が行った内装造作について当然に50年で償却するという意味ではありません。

 平成24年2月6日裁決(裁事86集)も、賃借建物では建物本体と造作とで所有者が異なり、建物の耐用年数は建物の構造体を基礎として算定されていることから、建物の法定耐用年数を造作にそのまま適用することは相当でないとしています。

 そのため、建物の法定耐用年数はあくまで考慮要素の一つであり、実際には造作自体の内容、材質、用途等を見ながら、その造作が通常どの程度使用されるものなのかを判断する必要があります。

「10年」「15年」としておけばよいのか

 実務では、賃借建物の内部造作について「10年」や「15年」という耐用年数を目にすることがあります。

 興味深いことに、税務大学校が掲載している2023年度公開講座「リスキリング、副業、起業の際の所得課税上の留意点」(明治大学大学院法務研究科・岩﨑政明教授)12頁にも、賃借建物の内装について、

「この合理的に見積もった耐用年数というのは、実務上は一般的に10年ないし15年とされているようである」

 との記述があります。

〇 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kokai/pdf/08230910_01.pdf

 しかし、この記述には注意が必要です。

 これは税務大学校の公開講座における大学教授の講義資料中の記述であって、耐用年数通達や国税庁の質疑応答事例が「10年又は15年を標準的な耐用年数として認める」と定めているものではありません。

 また、文言自体も「10年ないし15年とされている」ではなく、「とされているようである」とされています。

 したがって、「実務では10年が多いらしいから10年」というだけでは、耐通1-1-3のいう「合理的に見積った耐用年数」の説明としては十分とはいえないでしょう。

 10年又は15年という年数を採用する場合であっても、「なぜこの会社、この建物、この造作についてその年数なのか」を説明できるようにしておくことが重要です。

賃貸借契約が5年なら、耐用年数も5年でよいのか

 これもよく問題となります。

 例えば、賃貸借契約が5年間であれば、「5年後には退去する可能性があるのだから、内装も5年で償却してよいのではないか」と考えたくなります。

 しかし、耐通1-1-3は、賃借期間をそのまま耐用年数とすることができる場合について特別の要件を定めています。

 すなわち、賃借期間の定めがあり、その賃借期間を更新することができず、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができない場合に限り、その賃借期間を耐用年数として償却することができます(耐通1-1-3ただし書)。

 したがって、例えば「契約期間5年・更新可能」という通常の賃貸借契約について、契約期間が5年であることだけを理由に内部造作の耐用年数を5年とすることはできません。

 もちろん、賃貸借契約の内容、原状回復義務、退去予定等は、その造作を実際にどの程度使用することが想定されているのかを検討する際の事情にはなり得ます。

 しかし、それは「契約期間=耐用年数」ということとは別の問題です。

「5年後に改装する予定」「10年保証だから10年」というだけでは弱い

 耐用年数を見積もる際には、「会社として何年使う予定なのか」も気になるところです。しかし、単なる会社内部の予定だけで耐用年数を決めるのは慎重に考える必要があります。

 この点で参考になるのが、東京地裁平成17年1月21日判決(税資255号-23(順号9904))です。

 この事件は賃借建物ではなく、自己所有の工場建物内に設置された電波暗室についての事件ですので、耐通1-1-3を直接判断したものではありません。

 しかし、耐用年数を判断する際に何を重視すべきかという点では参考になります。

 納税者側は、電波暗室の性能保証期間が10年間であることや、技術の進歩等により10年程度で取り壊されることが予想されることなどを主張しました。

 これに対し東京地裁は、耐用年数省令が想定する耐用年数は、通常の維持補修を加えることを前提として通常予定される効果を上げることができる年数、すなわち効用持続年数を基礎としているとして、メーカーが設定した性能保証期間をそのまま耐用年数とする考え方を採用しませんでした。

 また、10年程度で取り壊すことが予想されるとしても、それだけを理由として建物全体の耐用年数を変更したり、電波暗室だけを独立させて別個の耐用年数を適用したりする根拠にはならないと判断しています。

 この判決は自己所有建物についてのものですから、賃借建物の内部造作について「10年という見積りは認められない」と判示したものではありません。

 しかし、

「メーカー保証が10年だから10年」
「社内では10年後に改装する予定だから10年」

 という事情だけで、税務上の耐用年数を決めることにはリスクがあることを示唆しています。

 重要なのは、主観的な予定ではなく、造作の種類、用途、材質、使用状況等から、その年数を客観的に説明できるかどうかです。

実務上は、どのような資料を残しておけばよいのか

 耐通1-1-3による耐用年数について税務調査で質問された場合、「10年にしました」と答えるだけではなく、「なぜ10年なのですか」という質問に答えられるようにしておく必要があります。

 耐通1-1-3について国税庁が保存すべき資料を具体的に列挙しているわけではありません。

 ただし、別制度である「耐用年数の短縮の承認申請」では、国税庁は、取得価額が確認できる請求書等に加えて、個々の資産の内容及び使用可能期間が確認できる見積書・仕様書等、資産の状況が分かる写真・カタログ・設計図等の提出を求めています。

 耐用年数短縮制度と耐通1-1-3とは別の制度ですが、「使用可能期間を客観的に説明する」という意味では、このような資料は参考になります。

 実務上は、少なくとも次の資料を残しておくとよいでしょう。

・工事請負契約書、見積書、請求書及び工事明細書
・平面図、施工図、仕様書及び完成時の写真
・造作ごとの材質及び施工方法が分かる資料
・施工業者、設計業者等から入手できる使用期間、更新時期等に関する資料
・賃貸借契約書、更新条項、原状回復条項及び造作買取りに関する条項
・同種の店舗、事務所等について過去に行った全面改装の実績があれば、その履歴
・採用した耐用年数と、その年数を採用した理由を記載した社内資料

 特に最後の「なぜその年数にしたのか」という検討記録を、申告時点で作成しておくことが重要です。

 税務調査が行われてから、数年前の内装工事について「なぜ10年にしたのか」を思い出して説明するのは容易ではありません。

使用可能期間を考える際の一つの参考

 耐通1-1-3そのものではありませんが、耐用年数という考え方を理解するうえで参考になる通達があります。

 法人税基本通達7-3-20は、耐用年数短縮制度における「使用可能期間」の見積りについて、通常の維持補修を加え、通常の使用条件で使用した場合に、通常予定される効果を上げることができなくなり、更新又は廃棄されると見込まれる時期までの年数によるとしています(法基通7-3-20)。

 これは耐通1-1-3の合理的見積耐用年数を直接計算するための規定ではありません。

 したがって、この通達をそのまま耐通1-1-3に適用することはできません。

 しかし、「耐用年数」というものが、単なる物理的な寿命でも、メーカー保証期間でも、経営者が希望する使用期間でもなく、通常の維持補修と通常の使用条件を前提として、その資産が通常の効用を発揮できる期間を考えるものであるという点は、合理的な耐用年数を見積もる際にも参考になる考え方でしょう。

個々の造作ごとに年数を出して平均すればよいのか

 例えば、建物についてされた造作の中に、

「この部分は10年程度使用できそう」
「この部分は15年程度使用できそう」
「この部分は20年程度使用できそう」

 という複数の造作が含まれている場合、それぞれの取得価額で加重平均して一つの耐用年数を計算したくなるところです。

 このように、造作ごとの金額、材質、想定使用期間等を一覧表にして検討すること自体は、合理的な見積りを行うための資料として有用と考えられます。

 しかし、耐通1-1-3は、特定の「加重平均方式」や「総合耐用年数計算式」を定めているわけではありません。

 したがって、一定の計算式によって算出した年数を使用する場合であっても、「この計算式が税法上定められた算式だからこの年数になる」という説明ではなく、「造作全部を総合的に検討した結果、この年数が合理的であり、その検討過程を数値化するためにこの計算を使用した」という位置付けにすべきでしょう。

例えば10年と見積もるのであれば

 例えば、更新可能な5年契約の賃貸事務所について、建物附属設備や器具備品を除いた建物の内部造作の耐用年数を10年と見積もったとします。

 この場合、「賃貸だから10年にした」では十分ではありません。

 例えば、主要な造作の材質・仕様から10年前後の使用が想定されること、同じ用途で使用してきた他の事務所についてもおおむね同程度の期間で全面的な改装を行っていること、施工会社等の資料からも同程度の更新期間が想定されること、賃貸借契約の内容から5年で必ず撤去するものではなく更新も予定されていることなど、複数の客観的事情を整理したうえで10年という結論に至っているのであれば、単に「10年が一般的だから」という説明よりも、はるかに合理性を説明しやすくなります。

 もちろん、このような資料があれば「10年なら必ず税務上認められる」という意味ではありません。

 耐通1-1-3に具体的な算定式がない以上、最終的には個々の事実関係によって判断されることになります。

結局、実務ではどうすればよいのか

 賃借建物の内部造作について「何年が正解か」という質問に対して、税法上、

「事務所なら15年」
「店舗なら10年」
「契約期間が5年なら5年」

 という答えは用意されていません。

 耐通1-1-3が求めているのは、その会社が造作した建物、その造作の内容、用途、材質等を踏まえた「合理的な見積り」です。

 平成24年2月6日裁決(裁事86集)も、建物自体の耐用年数をそのまま適用するのではなく、建物についてされた造作全部を一つの資産として総合して耐用年数を見積もるという考え方を採用しています。

 したがって実務上重要なのは、「何年なら税務署に否認されないか」という年数だけを探すことではありません。

 工事内容を正しく資産区分したうえで、建物の耐用年数、造作の種類・用途・材質等を検討し、採用した耐用年数について、申告時点で第三者にも説明できる資料を残しておくことです。

 「10年」という数字そのものよりも、「なぜこの造作について10年と判断したのか」を説明できることの方が重要といえるでしょう。

まとめ

 建物の内装工事や内部造作の耐用年数を判断するときに最も重要なのは、「内装工事」という名称だけで一律に耐用年数を決めないことです。

 まず、工事の内容を確認して、

・建物
・建物附属設備
・機械及び装置
・器具及び備品

 などのどの減価償却資産に該当するのかを判定します。

 自己所有建物について行った建物の内部造作は、原則としてその建物に含めて建物の耐用年数を適用します(耐通1-2-3)。

 これに対して、賃借建物について行った建物の内部造作は、建物の耐用年数、造作の種類、用途、使用材質等を勘案して合理的に見積もった耐用年数を適用します(耐通1-1-3)。

 また、同一建物についてされた造作は、原則として建物についてされた造作全部を一つの資産として総合的に耐用年数を見積もりますが、用途が異なる区画がある場合には、同一用途に属する部分ごとに判断します(耐通1-1-3注)。

 東京地裁平成17年1月21日判決(税資255号-23(順号9904))及び平成24年2月6日裁決(裁事86集)からも、内装工事については工事費全体を一括して処理するのではなく、個々の工事の構造、機能、建物との一体性及び用途等を確認したうえで資産区分を行うことが重要であることが分かります。

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