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会社が役員・従業員に社宅を貸す場合の税金|家賃の計算方法、必要書類、豪華社宅、家具・光熱費まで解説

会社が役員・従業員に社宅を貸す場合の税金|家賃の計算方法、必要書類、豪華社宅、家具・光熱費まで解説

概要

 会社が役員や従業員に社宅を貸与する場合、一定の家賃を徴収していれば、社宅の貸与による経済的利益について給与課税を避けることができます。

 ただし、役員と従業員では必要な家賃の計算方法が異なり、役員については「小規模住宅」「小規模住宅以外」「豪華社宅」のどれに該当するかによっても計算方法が変わります。

 また、実際に社宅家賃を計算しようとすると、「固定資産税の課税標準額はどの書類を見ればよいのか」「借上げ社宅なのに他人の固定資産税の金額をどうやって調べるのか」といった問題が生じます。

 この記事では、社宅家賃の計算方法だけでなく、必要な書類とその取得方法、豪華社宅に関する裁判例、家具・水道光熱費、法人税・消費税の注意点まで解説します。

1.社宅を貸与する場合の基本的な考え方

 会社が所有する住宅を役員・従業員に貸与する場合や、会社が家主から住宅を借り受け、その住宅を役員・従業員に貸与する場合には、税務上の「社宅」としての取扱いを検討します。

 これに対し、役員・従業員本人が家主と賃貸借契約を締結し、会社がその家賃を負担する場合や、会社が現金で住宅手当を支給する場合には、原則として社宅の貸与とは認められず、会社が負担・支給した金額は給与課税の対象となります(所法28・36、所基通36-15)。

 社宅を導入する場合には、社宅規程を作成し、対象者、家賃、会社と入居者の費用負担、入居・退去の条件などを明確にしておくことをお勧めします。

 ただし、社宅規程を作成しただけで税務上の要件を満たすわけではありません。実際の賃貸借関係、家賃の徴収状況、費用負担の実態なども重要です。

2.社宅家賃を計算するために必要な書類

 通常の役員社宅や従業員社宅の賃貸料相当額は、主に「建物及び敷地の固定資産税の課税標準額」と「建物の床面積」を使って計算します。

 そのため、社宅の契約をしてからではなく、できれば契約前に必要な資料を入手できるか確認しておくことが重要です。

主に確認する資料

確認する事項主な資料用途
建物の固定資産税の課税標準額固定資産税課税明細書、固定資産課税台帳、自治体の証明書等賃貸料相当額の計算
土地の固定資産税の課税標準額同上賃貸料相当額の計算
建物の床面積固定資産関係資料、登記事項証明書等小規模住宅判定・家賃計算
建物の構造登記事項証明書、固定資産関係資料等法定耐用年数の確認
マンションの共用部分固定資産関係資料、マンション関係資料等小規模住宅判定・家賃計算
会社が家主に支払う家賃賃貸借契約書小規模住宅以外の借上げ役員社宅
取得価額・特殊設備等売買契約書、固定資産台帳、図面等豪華社宅の判定

「固定資産税評価額」ではなく「固定資産税の課税標準額」を確認する

 社宅家賃の計算で使用するのは、所得税基本通達に定める「固定資産税の課税標準額」です。

 国税庁の質疑応答事例では、この固定資産税の課税標準額について、賦課期日である1月1日における固定資産の価格として固定資産課税台帳に登録されているものを基礎とする旨が説明されています(国税庁質疑応答事例「社宅に係る通常の賃貸料の額を計算する場合の固定資産税の課税標準額」、所基通36-40~43・36-45・36-46)。

 したがって、不動産会社から「固定資産税評価額は○○万円です」と聞いただけで計算するのではなく、社宅家賃の計算に使用する固定資産税の課税標準額を確認する必要があります。

 特に土地については、住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例があるため、固定資産税評価額、固定資産税の課税標準額、都市計画税の課税標準額が一致しないことがあります。

 住宅用地については、実務上、住宅用地特例適用後の固定資産税課税標準額を確認して計算します。この点は『税務通信』3816号(2024年9月2日、4頁)でも国税当局への取材結果として紹介されています。なお、国税庁の前記公表質疑応答事例自体は、住宅用地特例の適用前後の金額を対比して明示しているものではありません。

3.自社所有の社宅では、どの書類を確認するのか

 会社が社宅を所有している場合には、まず毎年送付される固定資産税・都市計画税の納税通知書に添付される課税明細書を確認します。

 必要な課税標準額等が課税明細書だけでは確認できない場合には、物件所在地の自治体で固定資産課税台帳を閲覧したり、固定資産関係の証明書を取得したりします。

 自治体によって、

・固定資産評価証明書
・固定資産公課証明書
・固定資産課税台帳
・土地・家屋名寄帳

など、書類の名称や記載内容が異なります。

 したがって、「公課証明書を取得すれば必ず足りる」というよりも、自治体に対し、

「役員又は従業員の社宅家賃を計算するため、土地と家屋の固定資産税の課税標準額が確認できる書類が必要です。」

と伝え、どの書類を取得すればよいか確認するのが確実です。

4.借上げ社宅では固定資産税の課税標準額をどうやって調べるのか

 会社が不動産会社や個人の家主から住宅を借りて社宅にする場合でも、原則として固定資産税の課税標準額を確認する必要があります。

 国税庁のタックスアンサーでも、他から借り受けた住宅を社宅として使用人に貸与する場合について、「貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認することが必要」と明記されています(国税庁タックスアンサーNo.2597)。

まず家主・管理会社に依頼する

 最も簡単なのは、契約時に家主又は管理会社へ、

「法人の社宅家賃を税務上計算するため、土地及び家屋の固定資産税課税標準額が分かる資料を提供してください。」

と依頼する方法です。

 そのため、借上げ社宅として使用することが決まっている場合には、賃貸借契約を締結する前に資料を提供してもらえるか確認しておくことをお勧めします。

家主から資料をもらえない場合

 借家人には、一定の範囲で固定資産課税台帳を閲覧することが認められています。

 例えば東京都23区では、賃料等の対価を支払っている借家人は、借りている家屋だけでなく、その敷地についても固定資産課税台帳を閲覧することができ、一定の固定資産関係証明を申請することもできます。

 その際には、一般に、

・賃貸借契約書
・本人確認書類
・必要に応じて賃料の支払を確認できる資料
・法人が申請する場合の委任関係等の書類

などが必要になります。

 ただし、取得できる証明書、必要書類、郵送・電子申請の可否などは自治体によって異なります。物件所在地の市区町村又は都税事務所等へ事前に確認してください。

5.区分所有マンションでは共用部分も確認する

 マンションの1室を社宅とする場合には、登記簿上の専有部分の床面積だけを見て小規模住宅かどうかを判断してはいけません。

 区分所有建物については、専有部分に対応する共用部分の床面積を按分し、専有部分の床面積に加えて判定します。

 固定資産税の課税標準額についても共用部分を含めて計算します(国税庁質疑応答事例「役員に貸与したマンションの共用部分の取扱い」、所基通36-40・36-41)。

 そのため、分譲マンション等では、専有部分の登記床面積だけでは計算できない場合があります。

6.新築で固定資産税の課税標準額がまだ決まっていない場合

 新築直後の物件などでは、社宅への入居時点で固定資産税の課税標準額がまだ定められていないことがあります。

 この場合には、社宅制度を利用できないわけではありません。

 固定資産税の課税標準額が定められていない住宅については、その住宅と状況が類似する住宅等の固定資産税の課税標準額に比準した価額を基礎として、賃貸料相当額を計算します(所基通36-42⑶、国税庁タックスアンサーNo.2597)。

7.役員に貸与する社宅が小規模住宅である場合

 役員社宅については、まず小規模住宅に該当するかを判定します。

建物の法定耐用年数小規模住宅の床面積
30年以下132㎡以下
30年超99㎡以下

 ここで注意したいのは、「木造か木造以外か」で直接判定するのではなく、住宅用建物としての法定耐用年数が30年以下か30年を超えるかによって判定することです。

 例えば鉄骨造でも、骨格材の肉厚によって法定耐用年数が異なるため、単に「鉄骨造だから99㎡以下」と判断することはできません。

 小規模住宅に該当する場合、月額の賃貸料相当額は次の①から③までの合計額です(所基通36-41)。

① その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%

② 12円 × 建物の総床面積(㎡)÷ 3.3㎡

③ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

 この計算方法は、自社所有の社宅だけでなく、他から借り受けた小規模住宅を役員に貸与する場合にも適用します。

実際の家賃の10~20%程度になることもある

 小規模住宅の賃貸料相当額は、会社が実際に家主へ支払う市場家賃ではなく、固定資産税の課税標準額等を基礎として計算します。

 そのため、特に都市部の借上げマンションなどでは、計算した賃貸料相当額が実際の家賃の10~20%程度になるケースもあります。

 例えば、次のような物件を考えてみます。

・会社が家主に支払う家賃 月額30万円
・建物の固定資産税課税標準額 1,200万円
・土地の固定資産税課税標準額 600万円
・床面積 80㎡

 賃貸料相当額は、

建物分
1,200万円 × 0.2% = 24,000円

床面積分
12円 × 80㎡ ÷ 3.3㎡ = 約291円

土地分
600万円 × 0.22% = 13,200円

合計
約37,500円

となります。

 実際の家賃30万円に対して約12.5%です。

 このように、結果として実際の家賃の10~20%程度になる物件はあります。

 ただし、「10~20%」という割合は所得税法や通達に定められた基準ではありません。

 物件の築年数、建物評価額、土地の課税標準額、立地、実際の市場家賃等によって割合は大きく変わります。

 したがって、「実際の家賃の20%を役員から徴収しておけばよい」という意味ではありません。必ず、その物件について固定資産税の課税標準額等を確認して計算する必要があります。

 また、後述する「小規模住宅に該当しない借上げ役員社宅」については、会社が家主に支払う家賃の50%という基準があるため、この10~20%程度という感覚は当てはまりません。

8.小規模住宅に該当しない役員社宅

 小規模住宅に該当せず、豪華社宅にも該当しない場合には、自社所有か借上げかによって計算方法が異なります。

自社所有の場合

 月額賃貸料相当額は、次の①と②の合計額を12で除して計算します(所基通36-40)。

① 建物の固定資産税の課税標準額 × 12%

② 敷地の固定資産税の課税標準額 × 6%

 ただし、建物の法定耐用年数が30年を超える場合には、①の12%を10%として計算します。

借上げ社宅の場合

 次の①と②のうち、いずれか多い金額が月額賃貸料相当額となります。

① 会社が家主に支払う家賃の50%

② 自社所有の場合と同じ計算方法で算定した賃貸料相当額

 したがって、小規模住宅に該当しない借上げ役員社宅では、通常、会社が家主に支払っている家賃の50%未満の金額を徴収するだけでは足りません(所基通36-40)。

9.役員から徴収する家賃が不足する場合

 役員に社宅を無償で貸与すると、原則として賃貸料相当額が給与課税の対象となります。

 役員から賃貸料相当額より低い家賃しか徴収していない場合には、原則としてその差額が給与課税の対象となります。

 後述する従業員についての「賃貸料相当額の50%以上を徴収していれば差額を給与課税しない」という取扱いは、役員には適用されません(所基通36-40・36-41・36-47)。

10.豪華社宅に該当する場合

 社宅が社会通念上一般に貸与されている住宅等とは認められない、いわゆる豪華社宅に該当する場合には、固定資産税の課税標準額による通常の計算方法は使用できません。

 その住宅を利用するために通常支払うべき使用料に相当する額を賃貸料相当額とします(所令84の2、平成7年4月3日付課法8-1ほか)。

 豪華社宅に該当するかどうかについては、床面積が240㎡を超える住宅について、住宅の取得価額、会社が支払う賃料、内外装、設備などを総合的に考慮して判定します。

 240㎡を超えたから自動的に豪華社宅になるわけではありません。

 一方、240㎡以下であっても、一般の住宅には通常設置されていないプール等の設備や、役員個人の趣味・嗜好を著しく反映した設備を有している場合には、豪華社宅に該当することがあります(国税庁タックスアンサーNo.2600)。

11.豪華社宅の賃貸料相当額が争われた裁判例

 会社の創業者が居住する大規模な社宅について、賃貸料相当額の算定方法等が争われた裁判例があります。

 松山地裁平成15年2月13日判決及びその控訴審である高松高裁平成16年2月26日判決です。

 この事件では、課税庁が「積算法(積算式評価法)」によって賃貸料相当額を算定しており、裁判所は、この事件の事情の下では、その算定方法には合理性があると判断しました(松山地裁平成15年2月13日判決・平成12年(行ウ)第11号、税資253号・順号9280、高松高裁平成16年2月26日判決・平成15年(行コ)第12号、税資254号-69・順号9576)。

積算法とはどのような方法か

 積算法とは、不動産の価格と、その不動産に投下した資本から通常期待される収益、さらに不動産を所有・賃貸するために必要となる費用を基礎として、適正な賃料を求める不動産鑑定評価の方法です。

 基本的な考え方は、

「基礎価格 × 期待利回り + 必要諸経費等」

です。

 例えば、5億円程度の経済価値を有する不動産であれば、まずその5億円という投下資本に対して通常期待される収益を計算し、さらに固定資産税、建物の減価償却費、維持管理費などを加えて、適正な賃料を求めていく考え方です。

 この事件では、課税庁は社宅の基礎価格を5億7,180万6,992円として、期待利回りを5%として計算していました。

 裁判所は、課税庁が期待利回りを5%としたことや、必要経費のうち建物等の減価償却費を定額法で算出したことなどについて、この事件の具体的事情の下では合理性があると判断しました。

 ただし、この判決が、「豪華社宅については常に期待利回りを5%として計算しなければならない」と判断したわけではありません。

 実際、判決では、本来、積算法の基礎価格については評価時点における不動産の経済価値を反映すべきであるとも指摘されています。

 また、会社側は、不動産鑑定評価書を提出し、積算法による積算賃料だけでなく、賃貸事例比較法による比準賃料も考慮すべきと主張しました。

 しかし、本件社宅は規模や構造が特殊で、類似する賃貸事例がほぼ存在しなかったことから、裁判所はこの事案では賃貸事例比較法が有用とはいい難いと判断しています。

 したがって、豪華社宅の賃貸料相当額は、単純な計算式だけで決めるのではなく、同程度の住宅の賃貸事例、不動産鑑定評価、取得価額、再調達価格、物件の設備・立地・利用状況等を踏まえて検討する必要があります。

 特に高額な豪華社宅については、不動産鑑定士による賃料評価を取得しておくことも検討すべきでしょう。

12.非常勤役員に社宅を貸与する場合

 非常勤役員に貸与した住宅だからという理由だけで、一律に豪華社宅と同じ時価評価をするわけではありません。

 ただし、非常勤役員の職務内容、住宅を貸与する必要性、居住状況、会社による費用負担の実態などを確認し、通常の社宅貸与として取り扱うことができるかを個別に検討する必要があります。

 単に役員個人の住宅費を会社に負担させているだけの場合には、社宅という名称や社宅規程があるというだけで給与課税を避けることはできません(所法28・36、所基通36-15)。

13.役員本人の持ち家を会社が借り上げ、本人へ貸し戻す場合

 役員が所有し、既に本人が居住している住宅を会社が借り上げ、そのまま役員本人に社宅として貸与する場合には、慎重な検討が必要です。

 会社がその住宅について実質的に賃借権を取得しているのか、契約内容が実際に履行されているのか、会社が住宅を借り受けることについて合理的な目的があるのかなど、取引の実態を確認する必要があります。

 役員個人の住宅費を会社に負担させるために、形式的に賃貸借契約を締結しただけであれば、会社から役員への支払額について役員給与として課税される問題が生じます。

 一方、役員から会社への住宅の賃貸と、会社から役員本人への社宅貸与が、それぞれ実質を伴う取引として成立しているのであれば、役員が会社から受け取る賃料の所得区分と、会社から社宅の貸与を受けることによる経済的利益の問題を分けて検討する必要があります。

 したがって、「役員本人の住宅を会社が借り上げれば、会社から受け取る賃料は必ず給与所得となる」と一律に判断することも適切ではありません(所法26・28・36)。

14.従業員に社宅・寮を貸与する場合

 従業員については、次の①から③までの合計額を月額の賃貸料相当額とします(所基通36-45)。

① その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%

② 12円 × 建物の総床面積(㎡)÷ 3.3㎡

③ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

 会社所有の社宅だけでなく、会社が家主から借り受けた住宅を従業員へ貸与する場合にも、この計算方法を使用します。

従業員は賃貸料相当額の50%以上を徴収すればよい

 従業員から実際に徴収する家賃が、上記の賃貸料相当額の50%以上であれば、賃貸料相当額と実際に徴収する家賃との差額は給与課税されません(所基通36-47)。

 例えば、賃貸料相当額が月額1万円の場合には次のようになります。

従業員から徴収する家賃給与課税される金額
0円10,000円
3,000円7,000円
6,000円0円

 6,000円は賃貸料相当額1万円の50%以上なので、差額4,000円については給与課税されません。

 ここでも注意したいのは、会社が家主へ支払う実際の家賃の50%ではなく、「税務上計算した賃貸料相当額」の50%であるという点です。

15.社宅の一部を会社の業務に使用している場合

 社宅の一部を実際に会社の業務に使用している場合には、その使用状況を考慮して賃貸料相当額を計算する取扱いがあります(所基通36-43)。

 ただし、部屋に「事務所」「会議室」「応接室」と名前を付けただけで、その部分を役員の居住部分から除外できるわけではありません。

 実際の業務使用状況、部屋の構造、会社関係者の利用実績、役員やその家族による私的利用の有無などが重要です。

 前述の松山地裁判決の事案でも、会社側が主張する住宅の利用状況を裏付ける宿泊者名簿や使用実績簿等が存在しないことが判断材料とされています。

 社宅の一部を会社のゲストルームや会議室として扱う場合には、実際の使用記録を残しておくことも重要です。

16.職務上の必要から住宅に住ませる場合

 会社が「業務上必要だから」という理由で役員・従業員に住宅への居住を命じても、それだけで住宅の無償貸与が非課税になるわけではありません。

 職務の性質上欠くことができず、主として使用者側の業務遂行上の必要から住宅等を貸与している場合には、一般の社宅とは異なる非課税の取扱いがあります(所法9①六、所令21四、所基通9-9)。

 前述の松山地裁判決及び高松高裁判決でも、会社側は、一部の役員らについて職務上の必要から住宅への居住を義務付けていると主張しました。

 しかし裁判所は、その業務内容について、24時間の業務を行う必要があるといえるような事情は認められないとして、非課税所得に該当するとの主張を認めませんでした。

 単に「会社の近くに住んでほしい」「緊急時に対応してほしい」という程度ではなく、職務の性質上その場所に居住することが欠くことのできないものかを具体的に検討する必要があります。

17.社宅内の家具・家電を会社が負担する場合

 会社が社宅に設置した家具や家電を役員・従業員に無償で使用させる場合には、原則として社宅の家賃とは別に、家具等の貸与による経済的利益を検討します。

 自社所有の家具等については、定額法による減価償却費相当額に、通常必要となる維持管理費相当額を加えるなどの方法によって、合理的に経済的利益を算定します。

 会社が家具等をリースしている場合には、原則としてリース料相当額を基礎とします(国税庁質疑応答事例「社員に家具等を貸与した場合の経済的利益」)。

 従業員について社宅の家賃を賃貸料相当額の50%以上徴収していたとしても、その取扱いが家具・家電にまで自動的に及ぶわけではありません。

家具等の無償貸与が争われた裁決

 平成21年10月28日裁決では、宗教法人が代表者の居住するマンションに設置した家具、カーテン、食器等が問題となりました。

 国税不服審判所は、マンションが専ら代表者の居住の用に供され、家具等も代表者が専属的に使用していたことなどから、家具等の無償貸与による経済的利益を認めています。

 一方、具体的な利益額の算定には誤りがあるとして、源泉所得税の納税告知処分等の一部を取り消しました(平成21年10月28日裁決・裁事78集237頁)。

18.水道光熱費を会社が負担する場合

 通常の社宅において、役員・従業員が専有住戸内で私的に使用した電気・ガス・水道料金を会社が負担した場合には、原則として入居者に対する経済的利益として給与課税を検討します。

 一方、寄宿舎等について、電気・ガス・水道等の料金が居住のため通常必要な範囲内で、各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでない場合には、課税しなくても差し支えないとする取扱いがあります(所基通36-26)。

 この取扱いを、各入居者の水道光熱費が個別に明らかな一般の社宅へそのまま適用することはできません。

 なお、マンションの共用部分の電気料、エレベーター保守料、火災報知機保守料、一定の火災保険料等が家主に支払う家賃・管理費に含まれている場合には、これらを含めて通常の賃貸料の額を計算して差し支えないとされています(国税庁質疑応答事例「役員に貸与したマンションの管理費」)。

19.入居・退去のための引越費用

 社宅への引越費用を会社が負担した場合に給与課税されるかどうかは、その転居の理由によって異なります。

 業務上の転勤に伴い、通常必要と認められる運賃や移転料等を会社が負担する場合には、原則として給与課税されません(所法9①四)。

 一方、転勤等とは関係のない、役員・従業員の私的な都合による転居費用を会社が負担する場合には、給与課税の要否を検討する必要があります。

20.入居月や固定資産税の課税標準額が変わった場合

 社宅が月の中途で役員の居住の用に供された場合には、その月ではなく翌月分から賃貸料相当額を計算します。従業員についても、この取扱いに準じます(所基通36-42⑷・36-45)。

 固定資産税の課税標準額が改訂された場合には、原則として、改訂後の課税標準額に係る固定資産税の第1期の納期限が属する月の翌月分から、新しい課税標準額に基づいて計算します(所基通36-42⑵)。

 ただし、従業員社宅については、課税標準額の改訂幅が従来の金額に比べて20%以内である場合には、改めて計算しなくても差し支えない取扱いがあります(所基通36-46)。

21.複数の社宅をプール計算する場合

 会社が複数の役員又は従業員に社宅を貸与している場合には、一定の要件の下で、徴収した家賃の合計額によって経済的利益の有無を判定する、いわゆるプール計算が認められています(所基通36-44・36-48)。

 ただし、役員社宅と従業員社宅を一緒にして計算することはできません。

 役員については役員社宅全体、従業員については従業員社宅全体を、それぞれ別に判定します。

 また、豪華役員社宅を通常の役員社宅とまとめてプール計算することもできません。

22.役員社宅の法人税上の注意点

 役員に対する社宅の無償貸与や低額貸与によって給与課税される経済的利益が生じた場合には、法人側でも役員給与の損金算入要件を検討する必要があります。

 毎月継続して供与される経済的利益で、その額がおおむね一定であるものについては、定期同額給与に該当する場合があります。

 ただし、不相当に高額な役員給与の部分や、事実の隠蔽・仮装による経理を通じて供与された給与等については、損金不算入の問題があります(法法34、法令69・70、法基通9-2-9以下)。

 したがって、「社宅だから会社側では必ず全額損金になる」というわけではありません。

23.社宅に関する消費税

 会社が住宅を家主から借り、役員・従業員へ住宅として転貸することが契約書等から明らかな場合、会社が家主へ支払う住宅家賃も、役員・従業員から受け取る住宅家賃も、原則として消費税の非課税取引となります(消法別表第二第13号、消基通6-13-7)。

 従業員から徴収した社宅家賃を、会社が家主に支払う家賃のマイナスとして経理している場合でも、消費税の計算上は非課税売上げの計上漏れがないか確認する必要があります。

会社が社宅を購入する場合

 会社が建物を購入して社宅として使用する場合には、その建物が消費税法上の「居住用賃貸建物」に該当するかを検討する必要があります。

 居住用賃貸建物とは、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、一定の高額特定資産等に該当するものをいいます。

 高額特定資産については、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額が税抜1,000万円以上であることなどが要件です。

 したがって、「従業員から家賃を徴収する社宅を購入すれば、金額に関係なく建物の消費税を仕入税額控除できない」というわけではありません(消法30⑩、国税庁質疑応答事例「社宅に係る仕入税額控除」)。

24.社宅制度を導入するときの実務上のチェックポイント

 社宅制度を導入するときには、少なくとも次の事項を確認しておくとよいでしょう。

・会社名義で所有又は賃借している住宅か
・役員社宅か従業員社宅か
・役員社宅の場合、小規模住宅に該当するか
・豪華社宅に該当する可能性がないか
・土地と家屋の固定資産税の課税標準額を確認できるか
・区分所有マンションの場合、共用部分を含めているか
・建物の法定耐用年数を正しく判定しているか
・毎月必要額以上の家賃を実際に徴収しているか
・家具・家電・水道光熱費を社宅家賃と混同していないか
・会社の業務使用部分がある場合、その実態を説明できる資料があるか
・固定資産税の課税標準額が改訂されたときに再計算しているか

 特に借上げ社宅では、契約後になって「固定資産税の課税標準額が分からない」という問題が起こりやすいため、賃貸借契約を締結する前に資料の入手方法まで確認しておくことをお勧めします。

主な根拠資料・参考資料

・所得税法9条、28条、36条
・所得税法施行令21条、84条の2
・所得税基本通達9-9、36-15、36-26、36-40~49
・国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」
・国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
・国税庁質疑応答事例「社宅に係る通常の賃貸料の額を計算する場合の固定資産税の課税標準額」
・国税庁質疑応答事例「役員に貸与したマンションの共用部分の取扱い」
・国税庁質疑応答事例「役員に貸与したマンションの管理費」
・国税庁質疑応答事例「社員に家具等を貸与した場合の経済的利益」
・国税庁質疑応答事例「社宅に係る仕入税額控除」
・平成7年4月3日付課法8-1ほか「使用者が役員に貸与した住宅等に係る通常の賃貸料の額の計算に当たっての取扱いについて」
・『令和8年版所得税基本通達逐条解説』(所基通36-40~48関係)
・平成12年6月20日裁決(高裁(法・諸)平11第64号・情報公開資料)
・松山地裁平成15年2月13日判決(平成12年(行ウ)第11号、税資253号・順号9280)
・高松高裁平成16年2月26日判決(平成15年(行コ)第12号、税資254号-69・順号9576)
・平成21年10月28日裁決(裁事78集237頁)
・『税務通信』3816号(2024年9月2日)4頁「役員社宅に係る“固定資産税の課税標準額”と住宅用地特例の適用関係」

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