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個人が同一銘柄の株式を複数回取得した場合の取得費の計算方法(特定口座と一般口座がある場合、端数が生じた場合等)

概要

 同じ銘柄の株式を異なる単価で買い増した後、その一部を売却した場合、通常は、売却した株式の取得費を「総平均法に準ずる方法」で計算します。自分で売却対象を指定して、高い単価で購入した株式の取得費だけを差し引くことはできません。

 また、同じ銘柄であっても、特定口座と一般口座では取得費の計算範囲が異なります。特定口座は口座ごとに区分し、複数の一般口座にある同一銘柄の株式は、原則として合わせて計算します。

 以下では、居住者による現物株式の売買を中心に、計算方法、端数処理、口座による違い、関連する裁判例・裁決例を解説します。

株式の取得費に含まれるもの

 株式を売却した場合の譲渡損益は、基本的に次のように計算します。

 譲渡損益=売却代金-売却した株式の取得費-売却手数料等

 購入した株式の取得費には、購入代金に加え、購入手数料や、その手数料に係る消費税等も含まれます。取得費を計算するときは、株価だけでなく、取得に要した費用も確認する必要があります(所法38①、所令109①五・118②)。

 譲渡所得・雑所得に該当し、同じ銘柄の保有株式がほかになく、一度の購入で取得した株式をすべて売却した場合は、その購入に要した金額が取得費の基本となります。一方、同一銘柄の株式を複数回取得している場合は、次の平均計算が必要です。

所得区分と口座によって計算方法が異なる

 同一銘柄の株式を2回以上取得している場合の基本的な計算方法は、次のとおりです。

区分計算方法
一般口座等の株式で、譲渡所得・雑所得に該当するもの総平均法に準ずる方法
一般口座等の株式で、申告分離課税の対象となる事業所得に該当するもの総平均法
特定口座内保管上場株式等事業所得・譲渡所得・雑所得のいずれも総平均法に準ずる方法

 一般口座等の株式に係る事業所得では、株式等の申告分離課税の特例により移動平均法が適用されず、総平均法を用います。これに対し、特定口座内の株式には特例があり、事業所得に該当する場合も総平均法に準ずる方法によります(所法48①③、所令105①・108①・118①、措令25の8⑧・25の9⑪・25の10の2①一)。

「総平均法に準ずる方法」の計算

売却のつど、その時点までの取得分で平均する

 総平均法に準ずる方法は、株式を種類・銘柄ごとに区分し、その売却時点までの取得価額と株数を基に、1株当たりの取得価額を計算する方法です。一般口座等では、売却後に購入した株式の取得価額は、その売却の計算には含めません(所令118①)。

 既に一部を売却している場合の算式は、次のように整理すると分かりやすくなります。

 1株当たりの取得価額=(直前の売却後に残った株式の取得価額の合計+その後、今回の売却までに取得した株式の取得価額の合計)÷(直前の売却後の残株数+その後、今回の売却までに取得した株数)

 初めて売却する場合は、最初の取得から今回の売却までの取得価額の合計を、その取得株数の合計で割ります。

 売却した株式の取得費は、この1株当たりの取得価額に売却株数を掛けて計算します。次回以後の計算には、前回売却後の残株数と、それに対応する取得価額を引き継ぎます。

計算例

 一般口座において、同じ銘柄の株式について次の取引があったとします。所得区分は譲渡所得又は雑所得とし、計算を簡単にするため、手数料等は考慮しません。

順序内容株数取得価額の合計
①前年からの繰越し100株10,000円
②買増し60株5,200円
③売却30株今回計算する取得費
④③の売却後に買増し40株3,200円

 ③の売却時点の1株当たりの取得価額と取得費は、次のとおりです。

 (10,000円+5,200円)÷(100株+60株)=95円

 95円×30株=2,850円

 ③の売却後には130株が残り、その取得価額の合計は95円×130株=12,350円となります。

 その後④の買増しをして、さらに売却する場合は、(12,350円+3,200円)÷(130株+40株)により再計算します。計算結果の1円未満を原則どおり切り上げると、次の売却に用いる1株当たりの取得価額は92円です(措通37の10・37の11共-14)。

「総平均法」との違い

 総平均法は、年初の保有株式と、その年中に取得した株式をまとめて平均する方法です。そのため、同じ設例でも、一般口座等の株式に係る事業所得について総平均法を用いる場合は、③の売却後に取得した④も含めます(所令105①一、措令25の8⑧・25の9⑪)。

 (10,000円+5,200円+3,200円)÷(100株+60株+40株)=92円

 ③の取得費:92円×30株=2,760円

 このように、総平均法に準ずる方法は売却時点まで、総平均法は原則として年全体を計算の基礎とします。特定口座内の株式には、事業所得でも総平均法に準ずる方法を用いる特例があります。

平均計算を行う理由

 東京地裁令和4年2月24日判決は、同一銘柄の株式には代替性があり、取得価額が違っても株主としての地位は同じであることから、単価を平均することに合理性があると説明しています。また、取得価額の変動を利用した利益操作を排除することも、総平均法に準ずる方法を採用した理由として挙げています。

東京地裁令和4年2月24日判決(令和2年(行ウ)377号)判示

「所得税法48条3項の委任を受けた所得税法施行令118条1項は、(省略)、譲渡所得の計算上取得費に算入する金額に関し、2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券の取得費については、総平均法に準ずる方法を用いて算出した1単位当たりの金額により計算をすることとしている。これは、総平均法が棚卸資産の評価方法として企業会計処理上の合理性が認められることを踏まえ、同一銘柄の有価証券が代替性を有し、各有価証券の取得価額が異なるとしても、一株ごとの株主の当該株式会社に対する社員としての地位は同一であることから、その価値を等価とみて単価を平均化することが合理的であること、また、これによって取得価額の変動を利用した利益操作の可能性を排除することができることから、取得費の算出方法として総平均法に準ずる方法を採用したものであると解される。」

1株当たりの取得価額に端数がある場合

 計算した1株当たりの取得価額に1円未満の端数がある場合は、原則として切り上げます。例えば、平均単価が100.2円であれば、101円として売却株数を掛けます(措通37の10・37の11共-14)。

 切り上げる対象は、平均計算で求めた1株当たりの取得価額です。通達上、この端数処理は「原則として」の取扱いである点にも注意が必要です。

 なお、公社債については、額面100円当たりの価額とした場合の小数点以下2位未満の端数を原則として切り上げます(措通37の10・37の11共-14)。

特定口座は口座ごと、一般口座の同一銘柄は合算する

 特定口座内の株式は、他の特定口座や一般口座の株式と同じ銘柄であっても、銘柄が異なるものとして区分して計算します。特定口座の源泉徴収の有無によって、この計算範囲が変わるわけではありません(措法37の11の3①、措令25の10の2①二、措通37の11の3-1)。

 例えば、同じ甲社株式を次のように保有している場合は、A証券の特定口座、B証券の特定口座、一般口座の合算分という3つの範囲で取得費を計算します。

保管先株数・取得単価取得費の計算範囲
A証券の特定口座100株・1,000円A証券の特定口座内で計算
B証券の特定口座100株・2,000円B証券の特定口座内で計算
C証券の一般口座100株・1,000円D証券の一般口座と合算
D証券の一般口座100株・2,000円C証券の一般口座と合算

 C証券・D証券の一般口座にある株式を、いずれも売却前から保有している場合、一般口座分の平均単価は、(100株×1,000円+100株×2,000円)÷200株=1,500円です。C証券の一般口座から売却しても、C証券分だけの1,000円を取得単価にすることはできません。

 各計算範囲で取得費と譲渡損益を求めた後、確定申告の対象とする上場株式等の譲渡損益を合計します。源泉徴収ありの特定口座について申告不要制度を選択した場合は、その口座の所得を申告対象に含めません。

同じ日に売却と買戻しをした場合

 一般口座等の株式で譲渡所得・雑所得に該当する場合は、原則として売買の時間的な順序に従って計算します。

 一方、特定口座の現物株式では、同じ日の売買について、買付けを先に行い、その後に売却したものとして取得単価と譲渡損益を計算する取扱いです。ここでいう「同じ日」は、同一受渡日の取引を前提としています(措令25の10の2①三、措通37の11の3-1、SBI証券「取得価額の算出方法」)。

 例えば、同一受渡日の取引として、次の順序で売却・買戻しを行ったとします。手数料等は考慮しません。

  • 以前から10,000株を保有し、取得単価は600円。
  • その10,000株を、1株1,000円で全て売却。
  • 売却後、同じ日に10,000株を、1株1,000円で買戻し。
項目特定口座一般口座
売却分の取得単価(600万円+1,000万円)÷20,000株=800円600円
売却分の取得費800万円600万円
譲渡益1,000万円-800万円=200万円1,000万円-600万円=400万円
買戻し後に残る株式の取得単価800円1,000円

 一般口座の欄は、譲渡所得又は雑所得に該当する場合を示しています。事業所得について総平均法を用いる場合や、信用取引の場合は、計算方法を別に確認する必要があります。

特定口座から一般口座に払い出した場合

 特定口座から一般口座に株式を払い出した場合、原則として、その払出し時に特定口座内で譲渡したと仮定して計算される取得費を基礎とする金額を、一般口座での取得価額として引き継ぎます。所定の払出し費用がある場合には、その取扱いも確認します(措令25の10の2㉕一・⑪二イ)。

 証券会社等は、払出しに係る取得費の額や取得日等を通知することとされています。一般口座での計算に備え、払出通知書等を保存しておくことが大切です(措令25の10の2⑨一)。

 払出し後に一般口座で同一銘柄の株式を売却する場合は、払い出された株式と、もともと一般口座で保有していた同一銘柄の株式を合わせて計算します。特定口座に残っている株式は、この一般口座の平均計算には含めません。

 なお、NISA口座から課税口座への移管では、原則として移管日の終値相当額を取得価額とする取扱いです。特定口座から一般口座への払出しとは、取得価額の引継ぎ方が異なります(措法37の14、国税庁タックスアンサーNo.1464)。

一般口座と特定口座の取得価額を合算できないとした裁判例

東京地裁令和4年2月24日判決の事案

 この事件は平成25年分の所得税等に関するもので、納税者は同一銘柄の株式を一般口座と特定口座の双方で保有していました。一般口座の株式の取得単価は59円でしたが、一般口座の株式の一部を売却した後、特定口座で同じ銘柄の725,000株を21億3,827万7,946円で取得しました。

 その後、一般口座に残っていた113,000株を売却した際、納税者は、特定口座で購入した株式の取得価額も合算して平均単価を計算し、取得費を申告しました。これに対し、課税庁は、一般口座と特定口座を区分すべきであるとして更正処分等をしました。

計算方法1株当たりの取得価額113,000株の取得費
納税者の申告:特定口座分も合算2,560円2億8,928万円
課税庁・裁判所:一般口座分で計算59円666万7,000円

争点と裁判所の判断

 納税者は、特定口座に関する区分計算の規定は、特定口座内の株式を譲渡した場合に適用されるものであり、一般口座内の株式だけを譲渡した場合には適用されないと主張しました。課税庁は、一般口座の株式を譲渡した場合も区分計算が必要であると主張しました。

 東京地裁は、特定口座制度の趣旨、特定口座への受入れ・払出しの規制、取得費の計算方法などを総合的に検討し、一般口座の株式を譲渡した場合でも、特定口座にある同一銘柄の株式の取得価額を含めることはできないと判断しました。

 特定口座では、証券会社等がその口座の記録に基づいて取得費を計算します。一般口座の売却に際して特定口座分の取得価額を合算すると、特定口座で保持される取得価額との整合性を保てなくなることなどが、判断の背景にあります(東京地裁令和4年2月24日判決・令和2年(行ウ)377号、税資272号・順号13674)。

裁決・控訴審と確定までの経過

 この訴訟に先立つ審査請求では、令和2年4月17日裁決が納税者の主張を退けています(名裁(所)令元第25号、TAINS収録裁決F0-1-1237)。

 東京高裁令和4年9月1日判決は、地裁の判断を維持し、控訴を棄却しました。その後、最高裁第三小法廷令和5年2月8日決定により上告受理申立てが不受理となり、判決が確定しています(東京高裁令和4年9月1日判決・令和4年(行コ)73号、税資272号・順号13750、最高裁第三小法廷令和5年2月8日決定・税資273号・順号13813)。

 最高裁の決定は上告不受理の決定であり、取得費の計算方法について最高裁が実体判断を示した判決として紹介するものではありません。

確定申告で取得費を確認するときの注意点

 一般口座の取得費を計算するときは、売却した証券会社だけでなく、ほかの証券会社の一般口座にも同一銘柄の保有・売買がないかを確認します。前年からの残株数と取得単価、年中の購入・売却、特定口座からの払出しも整理します。

 株式分割・併合、合併、資本の払戻し等があった場合には、株数や取得単価の調整が必要になることがあります。NISA口座で保有している株式は、課税口座の取得費の平均計算に混ぜません(所令110~118、措法37の14)。

 特定口座については、特定口座年間取引報告書の計算を基本として確認します。令和6年4月22日裁決では、特定口座内で譲渡した株式について、納税者が申告時に売却代金の5%相当額による概算取得費へ置き換えることは認められませんでした。報告書に誤りが疑われる場合は、取得記録や受入れ時の資料を確認し、証券会社等に照会することが必要です(令和6年4月22日裁決)。

 本記事は、令和8年11月3日現在の法令・公表資料に基づいています。

参考資料・根拠

  • 所得税法38・48、所得税法施行令105・108~118。
  • 租税特別措置法37の11の3・37の14、租税特別措置法施行令25の8⑧・25の9⑪・25の10の2①・⑨一・⑪二イ・㉕一。
  • 国税庁タックスアンサーNo.1464「譲渡した株式等の取得費」。
  • 国税庁タックスアンサーNo.1466「同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費」。
  • 措通37の10・37の11共-14「1単位当たりの取得価額の端数処理」。
  • 措通37の11の3-1「特定口座内保管上場株式等の譲渡による取得費等の額の計算」。
  • 東京地裁令和4年2月24日判決(税資272号・順号13674)。
  • 東京高裁令和4年9月1日判決(税資272号・順号13750)。
  • 最高裁第三小法廷令和5年2月8日決定(税資273号・順号13813)。
  • 令和2年4月17日裁決(名裁(所)令元第25号)。
  • 令和6年4月22日裁決(裁事135集)。
  • SBI証券「取得価額の算出方法」(同一受渡日の売却・買戻しに関する実務上の取扱い)。

同一銘柄の株式を一般口座と特定口座で保有していた場合、それぞれの口座ごとに取得価額を計算すべきとされた東京地裁令和4年2月24日判決(税資272号(順号13674))

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 原告Xは、保有するA株式85万株のうち、平成25年6月11日に72万5000株を総額21億3585万円で、同月12日に1万2000株を総額3403万円余で、それぞれ譲渡した。
 Xは、上記平成25年6月11日の譲渡の直前において、A株式の全て(85万株)をB証券会社の一般口座において保有していたところ、同株式について、総平均法に準ずる方法により算出した1株当たりの取得価額は59円であった。

② Xは、平成25年6月12日、B証券会社の特定口座において、A株式72万5000株を総額21億3827万7946円で取得した。

③ Xは、平成25年6月13日から同月24日までの間に、一般口座において保有していたA株式の残り11万3000株を、総額3億2052万円余で順次譲渡した(以下、これらA株式11万3000株を併せて「本件譲渡株式」という。)。

④ Xは、平成26年3月、平成25年分の所得税等の確定申告書を法定申告期限内に提出した。同申告書において、Xは、平成25年分の所得税等に係る株式等の譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入する金額を、平成25年6月11日及び同月12日に譲渡したA株式〔前記①〕については概算取得費とし、本件譲渡株式〔前記③〕については、特定口座で取得したA株式の取得費〔前記②〕を含めて総平均法に準ずる方法により算出した。
 申告書におけるXが算出した本件譲渡株式の取得費の計算方法は以下のとおりであった。

(ア) 1単位当たりの金額の計算
(59円/株×11万3000株+21億3827万7946円)÷(11万3000株+72万5000株)
=2560円/株(1円未満の端数は切り上げ)
(イ) 本件譲渡株式の取得費の計算
2560円/株×11万3000株=2億8928万円

 つまり、Xは、A株式を特定口座と特定口座以外の口座(一般口座)の双方において保有していたところ、平成25年6月13日から24日までの間に、そのうち一般口座において保有する株式のみを譲渡したが、その譲渡における取得費とした金額は、一般口座において保有するA株式の取得価額だけでなく、特定口座において保有するA株式の取得価額も含めて総平均法に準ずる方法により算出した額で申告した。

⑤ 処分行政庁が、平成31年3月、Xに対し、本件譲渡株式の譲渡所得の金額の計算においては、租税特別措置法(以下「措置法」という。)37条の11の3第1項及び措置法施行令25条の10の2第1項2号の規定により、特定口座内で保管する株式と当該特定口座以外で保管する株式が同一銘柄の株式であったとしても、それぞれの銘柄が異なるものとして区分して計算することとなるから、一般口座において譲渡した本件株式に係る1単位当たりの取得単価を算定するに当たって特定口座内のA株式の取得費を含めるのは相当ではないとして、平成25年分の所得税等に係る更正処分等をしたため、Xは、その取消しを求めた。 処分行政庁における本件譲渡株式の取得費の具体的な計算方法は以下のとおりであった。

(ア) 1単位当たりの金額
59円/株
(イ) 本件譲渡株式の取得費の計算
59円/株×11万3000株=666万7000円

(2)本件の主な争点

 本件の争点は、本件譲渡株式の取得費の計算方法及びその金額であり、具体的には、措置法37条の11の3の規定は、特定口座内保管上場株式等を譲渡した場合だけでなく、一般口座に保有する同一銘柄の上場株式等を譲渡した場合にも適用があり、それぞれの銘柄が異なるものとして取得費の計算を行うべきである(被告国主張)か、特定口座内保管上場株式等が譲渡された場合にのみ適用され、一般口座内に保管されている上場株式等が譲渡された場合には適用がない(X主張)かである。

(3)判決要旨(棄却)

① 措置法及び措置法施行令は、個人投資家である居住者等の申告事務の負担を軽減することを目的として、特定口座内保管上場株式等の譲渡に係る区分計算を定めた(措法37の11の3①、措令25の10の2①)。そして、既に開設された特定口座に新たに受け入れることのできる上場株式等は、原則としてその特定口座において行われた取引により取得した上場株式等に限られるものとされ、居住者等が特定口座外で保管している株式を特定口座へ受け入れることができるとする経過措置は廃止された。また、特定口座内保管上場株式等が一般口座に払い出された場合において一般口座に引き継がれる取得費の計算方法を定め、上記計算方法に従って算出された当該払出しに係る上場株式等の取得費の額を、居住者等に通知するものとしている。

② 以上に判示した各規定の内容や経過措置の廃止等に照らせば、措置法及び措置法施行令は、特定口座内保管上場株式等と一般口座において保管されている上場株式等とを、譲渡、払出しの各処理において区分して取り扱うことを前提としているものと解される。そうすると、特定口座内保管上場株式等を譲渡した場合だけでなく、一般口座内に保管されている同一銘柄の上場株式等を譲渡した場合についても、それぞれの銘柄が異なるものとして取得費の計算をする国主張に係る計算方法が、上記の各口座に保管された株式を区分して取り扱うという前提に沿うものといえる。

③ 他方、X主張に係る計算方法は、特定口座内保管上場株式等と一般口座において保管されている上場株式等とを譲渡、払出しの各処理において区分して取り扱うという趣旨、内容と整合的であるということはできない。

④ 以上に判示したとおり、特定口座制度が創設された趣旨等、特定口座の受入れと払出しの規制等、取得費の算出方法として総平均法に準ずる方法が採用された趣旨等を総合考慮すると、一般口座内に保管されている上場株式等を譲渡した場合に所得税法48条3項及び所得税法施行令118条1項を適用するに当たり、同一銘柄の特定口座内保管上場株式等については、その銘柄が異なるものとして、その取得価額は、一般口座内に保管されている上場株式等の取得費の計算において考慮されないものと解するのが相当である。
 したがって、本件譲渡株式の取得費は、特定口座において取得したA株式の取得費を含めずに総平均法に準ずる方法により算出した金額である666万7000円(=59円/株×11万3000株)となる。

その後

 東京高裁令和4年9月1日判決・税資272号(順号13750)は原判決を引用し、Xの請求は理由がないと棄却した。

 Xは上告受理申立てをしたが、最高裁(第三小法廷)令和5年2月8日決定において不受理された。

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