概要
前期に法人税を納めた会社が当期に税務上の赤字となった場合、一定の要件を満たせば、前期の法人税の全部又は一部を取り戻す「欠損金の繰戻しによる還付」を利用できます。
ただし、通常の青色欠損金についてこの制度を利用するには、原則として、欠損事業年度の確定申告書を期限内に提出し、その提出と同時に還付請求書を提出する必要があります。申告書の送信が完了していても、還付請求書まで提出できているとは限りません(法法80①③⑨)。
以下では、主にグループ通算制度を適用していない内国普通法人を対象として、提出手続と誤りやすい点を説明します。
欠損金の繰戻還付とは
青色申告書を提出する法人に税務上の欠損金額が生じた場合、その欠損金額を、その事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に繰り戻して、法人税の還付を請求できる制度です。欠損金が生じた年度を「欠損事業年度」、繰戻しの対象となる黒字年度を「還付所得事業年度」といいます。通常の1年決算法人では、前期が還付所得事業年度になります(法法80①)。
会計上の赤字と税務上の欠損金額は必ずしも一致しません。法人税の申告調整をした後の欠損金額に基づいて判定します。
なお、欠損金には、将来の所得から差し引く「繰越控除」もあります。繰戻還付に使用した欠損金を、法人税の繰越控除にも重複して使用することはできません。繰戻還付に使用しなかった部分は、繰越控除の要件を満たす範囲で翌期以降に繰り越せます(法法57①)。
利用できる法人と令和8年度税制改正
通常の欠損金の繰戻還付は、主に中小企業者等が利用する制度です。一般的な株式会社・合同会社では、欠損事業年度末の資本金又は出資金が1億円以下であることが対象判定の基本となります。
ただし、資本金が1億円以下でも、資本金5億円以上の法人等の大法人による完全支配関係がある法人などは除外されます。複数の大法人による一定の完全支配関係にある法人にも除外規定があるため、自社の資本金だけでは判定できません(措法66の12①一)。
中小企業者等以外の法人については、平成4年4月1日から令和10年3月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金額に、原則としてこの制度を適用しないこととされています。令和8年度税制改正では、この不適用措置の期限が2年間延長されました(措法66の12①)。
ただし、清算中の一定の事業年度の欠損金額、解散等の特例に該当する欠損金額、災害損失欠損金額、銀行等保有株式取得機構の欠損金額は、この不適用措置の例外です。それぞれに要件があるため、通常の中小企業者等の繰戻還付と区別して確認します(措法66の12①ただし書)。
通算法人には、対象法人の判定や繰戻対象となる欠損金額の計算等について特則があります。
通常の繰戻還付に必要な3つの要件
通常の青色欠損金の繰戻還付では、原則として、次の要件をすべて満たす必要があります(法法80①③⑨)。
- 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度まで、連続して青色申告書である確定申告書を提出していること。
- 欠損事業年度の青色申告書である確定申告書を、その提出期限までに提出すること。
- その確定申告書の提出と同時に、欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること。
確定申告書の別表に還付請求税額を記載しただけでは、還付請求書の提出に代えることはできません。
解散等・災害の場合は提出時期を別に確認する
「繰戻還付はすべて期限内の確定申告と同時提出が必要」と一律に考えるのは適切ではありません。適用する規定によって、提出時期等が異なります。
| 区分 | 提出時期等の基本 |
|---|---|
| 通常の青色欠損金の繰戻還付 | 原則として、期限内の確定申告書の提出と同時に還付請求書を提出 |
| 解散等の特例による繰戻還付 | 解散等の事実が生じた日以後1年以内に還付請求書を提出。連続した青色申告等の要件あり |
| 災害損失欠損金額の繰戻還付 | 確定申告書又は仮決算による中間申告書の提出と同時に還付請求書を提出。確定申告書には期限後申告書も含む |
解散等の特例では、適格合併による解散は対象外です。災害損失欠損金額の特例は白色申告でも利用でき、繰戻しの対象期間は原則として前1年、青色申告の場合は前2年です。ただし、中間申告を利用する場合には、その提出期限にも注意が必要です(法法80④⑤、法基通17-2-6、国税庁「C1-52 欠損金の繰戻しによる還付の請求」)。
e-Taxでは還付請求の手続まで確認する
還付請求書をPDFで添付するだけでは足りない
欠損金の繰戻しによる還付請求は、法人税の確定申告とは別の手続です。e-Taxでは、対象年度に対応する還付請求書を所定の電子データとして作成し、提出します。
還付請求書そのものをPDFにして確定申告書に添付する方法は、所定の還付請求手続の代わりにはなりません。国税庁は、申告・申請等そのものや、イメージデータによる提出の対象外の書類をPDFで送信しても、提出の効力を有しないと説明しています。正しい方法で再提出した場合には、その再提出日が文書収受日となります(e-Tax「添付書類のイメージデータによる提出についてよくある質問」)。
送信後は、少なくとも次の点を確認しておく必要があります。
- 確定申告書だけでなく、還付請求書も送信されているか。
- 還付請求に対応する受信通知に、エラーが表示されていないか。
- 欠損事業年度・還付所得事業年度・請求金額が正しいか。
- 送信データと受信通知を保存しているか。
令和7年3月12日裁決は何を判断したのか
令和7年3月12日裁決(東裁(法)令6第144号、非公表裁決)では、法人が還付請求書をPDF形式で確定申告書に添付し、その申告書の還付金額に繰戻還付請求額を含めた事案が問題となりました。
原処分庁は、PDFによる送信では還付請求書が提出されたとは認められない旨を主張していました。
これに対し、国税不服審判所が判断したのは、還付請求書の提出の有無にかかわらず、繰戻還付請求額は欠損事業年度の確定申告書に係る還付金額には含まれない、という点です。
繰戻還付は、還付請求書を受けた税務署長が必要な事項を調査した上で行うものであり、確定申告書に金額を記載するだけで還付額が確定するものではないと判断されました。
したがって、この裁決を「審判所がPDF添付による請求を無効と判断した事例」と説明するのは正確ではありません。PDF添付による提出方法の問題と、申告書上の還付金額の問題を分けて理解する必要があります。
なお、この裁決が適用した改正前の法法80⑥⑦は、現行法ではそれぞれ還付請求書の提出に関する法法80⑨、税務署長の調査・還付等に関する法法80⑩に対応します。
還付請求書だけを期限後に提出した場合
確定申告書を期限内に提出していても、還付請求書を期限後に提出した場合には、原則として通常の繰戻還付は認められません。
ただし、法人税基本通達17-2-3では、期限内申告書に記載した欠損金額に基づく還付請求について、請求書の提出が遅れたことに税務署長が真にやむを得ない理由があると認めるときは、繰戻還付を認める取扱いが示されています。
また、確定申告書自体を期限後に提出した場合についても、税務署長がやむを得ない事情を認める場合の例外が法法80③に定められています。これらは例外的な取扱いであり、単なる失念や操作ミスでも当然に救済されるという意味ではありません。
神戸地裁令和6年1月18日判決と大阪高裁令和6年7月30日判決
神戸地裁令和6年1月18日判決(令和5年(行ウ)第26号)では、確定申告書は令和3年8月18日に提出された一方、還付請求書は申告期限である同月31日を過ぎた同年9月17日に提出されていました。
関与税理士は、申告書が正常に送信されたことから、還付請求書も送信されたものと誤信していました。
裁判所は、還付請求書の提出を確認しなかったことは税理士の事務処理上の不注意にすぎず、真にやむを得ない理由は認められないとして、法人の請求を棄却しました。
控訴審である大阪高裁令和6年7月30日判決(令和6年(行コ)第29号)も、控訴を棄却しました。同高裁は、不慣れな還付請求の手続であれば、正常送信されたか慎重に確認する基本的な作業が職務上求められると判断しています。
これらの判決は、税理士に委任していたことや、使用ソフトの操作に不慣れであったことだけで、期限後の請求が認められるわけではないことを示しています。なお、大阪高裁判決について、国税庁公表資料では上告・上告受理申立てとされています。
還付を請求できる金額
通算法人以外の法人について、過去に同じ還付所得事業年度への繰戻還付をしていない場合の基本的な算式は、次のとおりです(法法80①②)。
還付請求額=還付所得事業年度の法人税額×繰り戻す欠損金額÷還付所得事業年度の所得金額
繰り戻す欠損金額は、還付所得事業年度の所得金額が上限です。また、算式の法人税額は、所得税額控除等について所定の調整をした額であり、実際に納付した税額と必ずしも一致しません。
計算例
次の前提で、欠損金100万円をすべて繰り戻すとします。税額控除や既往の繰戻還付等による調整はないものとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 前期の所得金額 | 200万円 |
| 前期の法人税額 | 30万円 |
| 当期の欠損金額 | 100万円 |
還付請求額は、30万円×100万円÷200万円=15万円です。
仮に当期の欠損金額が300万円あっても、前期の所得金額が200万円であれば、この例で繰り戻せる欠損金額は200万円、法人税の還付額は30万円が上限となります。
地方法人税と地方税は分けて処理する
国税である地方法人税は、欠損事業年度の地方法人税確定申告書の提出等の要件を満たせば、法人税の繰戻還付に伴って所定の金額が併せて還付されます。地方法人税について別途還付請求する手続は不要です(地方法人税法23①、国税庁「C1-52 欠損金の繰戻しによる還付の請求」)。
これに対し、地方税である法人住民税の法人税割や法人事業税には、同様の繰戻還付制度はありません。将来の事業年度における控除の取扱いを別に確認し、法人税との違いを管理する必要があります(東京都主税局「法人事業税・法人都民税」その他Q1)。
申告期限後に欠損金の計上漏れが分かった場合
上記の例で、当初は当期の欠損金額を100万円として、これを計算の基礎とする15万円の還付を請求したとします。申告期限が過ぎた後、費用の計上漏れ40万円が判明し、正しい欠損金額が140万円となった場合はどうなるでしょうか。
単純に計算すると、30万円×140万円÷200万円=21万円となります。しかし、欠損金額を増額する更正の請求をしたからといって、当初の繰戻還付額を当然に21万円へ増やせるわけではありません。
法人税基本通達17-2-2では、還付額の計算に使用する欠損金額について、還付請求書に計算の基礎として記載した欠損金額を上限とする取扱いが示されています。
したがって、この例では、更正の請求によって欠損金額が140万円になっても、当初の還付請求書の計算の基礎とした欠損金額が100万円である以上、増加した40万円をその請求の計算の基礎に加えて、繰戻還付額を増やすことはできません(法基通17-2-2)。
欠損金額自体の増額を求める更正の請求と、繰戻還付の増額は別の問題です。追加の40万円は、欠損金額の増額が認められ、繰越控除の要件を満たす範囲で、翌期以降の控除対象となります。
なお、ここで説明したのは、計算に使用する欠損金額の上限です。還付所得事業年度の所得金額や法人税額が更正された場合の還付額の再計算とは区別する必要があります(法基通17-2-2)。
主な根拠資料
- 法人税法57①、80①~⑤・⑨⑩、租税特別措置法66の12①、地方法人税法23①
- 国税庁「No.5763 欠損金の繰戻しによる還付」
- 国税庁「C1-52 欠損金の繰戻しによる還付の請求」及び掲載の記載要領
- 法人税基本通達17-2-2、17-2-3、17-2-6
- e-Tax「イメージデータによる提出の対象外のものをイメージデータで提出した場合、どのように取り扱われるのですか。」
- 財務省「令和8年度 税制改正の解説」租税特別措置法等(法人税関係)の改正、印刷頁669~670
- 『法人税基本通達逐条解説』十二訂版、17-2-2・17-2-3の解説、印刷頁1843~1845
- 神戸地裁令和6年1月18日判決(令和5年(行ウ)第26号、税務訴訟資料274号・順号13923)
- 大阪高裁令和6年7月30日判決(令和6年(行コ)第29号、税務訴訟資料274号・順号14009)
- 令和7年3月12日裁決(東裁(法)令6第144号、非公表裁決、情報公開法に基づく開示資料、TAINS F0-2-1397)
- 東京都主税局「法人事業税・法人都民税」その他Q1
法人税基本通達17-2-3(還付請求書だけが期限後に提出された場合の特例)
法人が法第74条《確定申告》の規定による確定申告書を期限内に提出し、当該申告書に記載された欠損金額(当該法人が通算法人である場合にあっては、法第80条第7項《欠損金の繰戻しによる還付》の規定により計算される欠損金額)に基づいて法人税の還付請求書を期限後に提出した場合において、その期限後の提出が錯誤に基づくものである等期限後の提出について税務署長が真にやむを得ない理由があると認めるときは、法第80条の規定を適用することができるものとする。
還付請求書を期限後提出した場合、欠損金の繰戻還付をすることはできないとされた事例-神戸地裁令和6年1月18日判決(税資274号(順号13923))・大阪高裁令和6年7月30日判決(税資274号(順号14009))(棄却)(上告・上告受理申立て)
(1)事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 原告Xは株式会社であり、平成元年6月期(昭和63年7月1日から平成元年6月30日までの事業年度)から、法人税確定申告書を青色申告書により提出することの承認を受けている。
② Xは、令和2年8月28日、処分行政庁に対し、令和2年6月期(令和元年7月1日から令和2年6月30日までの事業年度)の法人税の青色申告書である確定申告書を、国税電子申告・納税システム(以下「e-Tax」という。)を利用して提出した。
令和2年6月期の所得金額は1,446万円余、法人税額は203万円余だった。
③ Xは、令和3年8月18日、処分行政庁に対し、令和3年6月期(令和2年7月1日から令和3年6月30日までの事業年度)の法人税の青色申告書である確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)を、e-Taxを利用して提出した。本件確定申告書の提出は、Xが税務代理人と定めたZ税理士(以下「本件税理士」という。)が行った。
令和3年6月期の欠損金額は6,450万円余だった。
④ Xは、令和3年9月17日、処分行政庁に対し、法人税法(以下「法」という。)80条1項に基づき、欠損金の繰戻しによる還付請求書(以下「本件還付請求書」という。)を、e-Taxを利用して提出し、法人税の還付の請求(以下「本件還付請求」という。)をした。本件還付請求書の提出は、本件税理士が行った。本件確定申告書の提出期限は、同年8月31日であった。
本件還付請求書の提出により還付を請求した法人税額は204万円余だった。令和3年6月期の欠損金額6,450万円余のうち、令和2年6月期の所得金額1,446万円余と相殺した後の残額5,004万円余を翌期へ繰り越すべき欠損金額とした。
⑤ 本件税理士は、令和3年9月24日、処分行政庁に対し、「還付請求書だけが期限後に提出された理由について」と題する書面を提出し、同年11月16日、処分行政庁に対し、同日付けの「嘆願書」と題する書面を提出した。
本件税理士は、電子申告ソフトウェアを利用して本件確定申告書を提出する際、同申告書が正常に送信されたことをもって、本件還付請求書も正常に送信されたものと誤信していた。
⑥ 処分行政庁は、令和4年2月28日付けで、Xに対し、本件還付請求には理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」といい、本件通知処分に係る通知書を「本件通知書」という。)を行った。
⑦ Xは、令和5年4月20日、本件通知処分の取消しを求め、本件訴訟を提起した。
(2)本件の主な争点
本件の争点は、本件通知処分の適法性である。
(3)一審判決要旨(棄却)(控訴)
① 法80条1項、3項及び6項によれば、内国法人の青色申告書である確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金額がある場合、その内国法人が、当該確定申告書の提出と同時に、納税地の所轄税務署長に対し、法人税の還付を請求することができるとされ、還付請求をするためには、欠損事業年度の確定申告書をその提出期限までに提出すること、所定の事項を記載した還付請求書を納税地の所轄税務署長に提出することが必要であるとされている。これらの規定によれば、欠損金の繰戻しによる法人税の還付請求は、原則として、欠損事業年度の確定申告書をその提出期限までに提出し、その提出と同時に還付請求書を所轄税務署長に提出することを要するものと解される。
これに対し、Xは、法80条6項は還付請求書の提出期限を定めていないため、同条1項の還付請求をするためには、提出期限までに確定申告書を提出するのと同時に還付請求をする意思が示されていれば足り、確定申告書と同時に還付請求書を提出する必要はない旨主張する。しかし、(イ)上記のとおり、欠損金の繰戻しによる法人税の還付請求が、欠損事業年度の確定申告書の提出と同時に行うことに加え、所定の事項を記載した還付請求書の提出を求めていることからすれば、還付請求書を確定申告書の提出と同時に提出することを要求していると解するのが合埋的である。加えて、(ロ)Xの上記主張は、同項所定の事項を記載していない確定申告書を、実質的に同項の還付請求書と同視することとなる点でも相当でない。したがって、Xの上記主張は採用することができない。
② 法80条3項によれば、確定申告書が提出期限後に提出された場合であっても、その期限後の提出について「やむを得ない事情」があると認められるときは、例外的に、還付請求が許容される。かかる規定に照らすと、法は、確定申告書が提出期限までに提出され、当該申告書に記載された欠損金額に基づいて還付請求書が確定申告書の提出期限後に提出された場合についても同様に、同期限後の提出について「やむを得ない事情」があると認められるときは、同期限後の還付請求を許容する趣旨であると解され、法人税基本通達17-2-3(以下「本件通達」という。)は、上記の法の趣旨を受けたものであると考えられる。
そして、本件通達は、確定申告書と還付請求書を確定申告書の提出期限までに同時に提出するという法の定める要件を緩和するものである以上、上記「真にやむを得ない理由」とは、法人の責めに帰することのできない事情により法人が確定申告書の提出期限までに還付請求をなし得なかったと認められる場合をいうものと解すべきである。
これに対し、Xは、本件通達は還付請求を認める場合を「真に」やむを得ない理由がある場合に限定する点で不合理である旨主張する。しかし、「真にやむを得ない理由」の意義を上記のように解する限度で、本件通達は法80条3項の趣旨に反するものではないから、Xの上記主張は採用することができない。
したがって、確定申告書の提出期限までに本件確定申告書が提出され、確定申告書の提出期限後に本件還付請求書が提出されたという本件の事実関係の下において、本件通知処分が適法であるか否かは、Xの責めに帰することのできない事情によりXが確定申告書の提出期限までに本件還付請求をなし得なかったと認められるか否かにより、判断されるべきこととなる。
③ Xは、確定申告の事務を委任した本件税理士を通じて、処分行政庁に対し、令和3年8月18日に本件確定申告書を提出したが、本件還付請求書は、確定申告書の提出期限である同月31日を経過した後の同年9月17日に提出されたこと、本件還付請求書が確定申告書の提出期限までに提出されなかった理由は、本件税理士が、電子申告ソフトウェアを利用して本件確定申告書を提出する際、同申告書が正常に送信されたことをもって、本件還付請求書も正常に送信されたものと誤信したためであることが認められる。
上記経緯からすれば、Xが本件還付請求書を確定申告書の提出期限までに提出しなかったのは、本件確定申告書の提出の際に、本件還付請求書の提出の有無を確認しなかったという本件税理士の事務処理上の不注意によるものにすぎないといえる。
そして、Xは、確定申告の事務を本件税理士に委任していたのであるから、Xの責めに帰することのできない事情の存否の判断に当たっては、本件税理士に係る事情が、Xの事情と評価されるところ、上記のとおり本件還付請求書が確定申告書の提出期限までに提出されなかった理由が本件税理士の不注意にすぎないことからすれば、Xの責めに帰することのできない事情によりXが確定申告書の提出期限までに本件還付請求をなし得なかったとは認められない。
その他、Xが確定申告書の提出期限までに本件還付請求をなし得なかったと認めるべきXの責めに帰することのできない事情があるとは証拠上認められない。
以上からすれば、本件還付請求書が確定申告書の提出期限後に提出されたことについて「真にやむを得ない理由」があるとは認められない。
④ 以上によれば、本件通知処分は適法である。
(4)控訴審判決要旨(棄却)(上告・上告受理申立て)
一審判決と同旨
令和7年3月12日裁決(東裁(法)令6第144号)(棄却)
(1)事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 審査請求人Xは、飲食店の経営等を目的とする合同会社である。
② Xは、令和4年2月1日から令和5年1月31日までの事業年度(以下「令和5年1月期」という。)の法人税について、青色の確定申告書を国税電子申告・納税システム(以下「電子申告」という。)により、法定申告期限までに申告した(以下、Xの令和5年1月期の法人税に係る青色の確定申告書を「本件確定申告書」という。)。
③ Xは、令和5年1月期を欠損事業年度、令和3年2月1日から令和4年1月31日までの事業年度を還付所得事業年度とし、繰戻還付請求金額を■■■■とする繰戻還付請求書(以下「本件繰戻還付請求書」という。)をPDF形式にし、本件確定申告書の添付書類として、原処分庁に送信した。
④ 原処分庁は、令和5年12月26日付で、Xに対し、要旨本件繰戻還付請求書は、PDF形式で送信されているため、原処分庁に提出されておらず、本件確定申告書に記載された還付金額が過大であるなどとして、令和5年1月期の法人税について更正処分(以下「本件更正処分」という。)をした。
⑤ Xは、令和6年3月22日、本件更正処分を不服として審査請求をした。
(2)本件の主な争点
本件繰戻還付請求書に記載された繰戻還付請求金額は、Xの令和5年1月期の還付金額に含まれるか否かである。
(3)判断要旨(棄却)
① 法人税法80条1項は、青色申告書を提出する法人は、各事業年度において欠損金額が生じた場合には、その欠損金額を還付所得事業年度の所得に繰り戻し、その還付所得事業年度の所得に対する法人税の全部又は一部の還付を請求することができる旨規定し、同条6項は、欠損金の繰戻しによる法人税額の還付を請求する場合には、繰戻還付請求書を提出しなければならない旨、同条7項は、税務署長は、繰戻還付請求書の提出があった場合には必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求に係る金額を限度とした法人税の還付等をする旨規定している。
上記各規定の定めからすると、欠損金の繰戻しによる還付は、提出された繰戻還付請求書について税務署長が必要な事項に係る調査をした上で行われることになる。
② 欠損金の繰戻しによる還付に当たっては、少なくとも繰戻還付請求書の提出とともに税務署長による必要な事項に係る調査を要し、その調査をしたところにより還付することとなっていることからすれば、確定申告書に繰戻還付請求金額を記載することで直ちに還付金額が確定するものではない。したがって、Xが、繰戻還付請求書を欠損事業年度の確定申告書の提出期限までに原処分庁に提出しているか否かにかかわらず、繰戻還付請求書に記載された繰戻還付請求金額は、Xの令和5年1月期の還付金額に含まれないと認められる。
③ 本件繰戻還付請求書に記載された繰戻還付請求金額は、Xの令和5年1月期の還付金額に含まれない。これに基づき、Xの令和5年1月期の還付金額及び翌期へ繰り越す欠損金の額を計算すると、いずれも本件更正処分の金額と同額となる。したがって、本件更正処分は適法である。
