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会社が役員に貸付けをした場合(役員貸付金)、会社は利率(認定利息)をどのように定めれば良いのか?

会社が役員に貸付けをした場合(役員貸付金)、会社は利率(認定利息)をどのように定めれば良いのか?

概要

 会社が役員に無利息又は通常より低い利率で金銭を貸し付けた場合、その貸付契約自体が直ちに税務上否定されるわけではありません。

 ただし、役員が無利息又は低利で金銭を借りることによって受ける利益は税務上の「経済的利益」に当たり、通常の利率により計算した利息相当額と実際に支払う利息との差額は、原則として役員の給与所得として課税されます(所法28①、36①②、所基通36-15(3)、36-49)。

 所得税基本通達36-49では、使用者が役員又は使用人に貸し付けた金銭の利息相当額について、次の利率により評価することとされています(所基通36-49)。

  1. 会社が他から借り入れた資金を貸し付けたものであることが明らかな場合
    その借入金の利率
  2. その他の場合
    貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法93条2項に規定する利子税特例基準割合による利率

 近年の利率は次のとおりです。

・平成30年~令和2年中に貸付けを行ったもの 年1.6%
・令和3年中に貸付けを行ったもの 年1.0%
・令和4年~令和7年中に貸付けを行ったもの 年0.9%
令和8年中に貸付けを行ったもの 年1.3%

 令和8年の利子税特例基準割合は年1.3%とされています(所基通36-49、措法93②、国税庁「延滞税の割合」)。

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貸付利率は毎年変更するわけではない

 ここで特に注意が必要なのは、所得税基本通達36-49が「貸付けを行った日の属する年」の利率によるとしていることです。

 したがって、例えば令和7年中に行った貸付けについて、令和8年になったという理由だけで適用利率を0.9%から1.3%へ変更するものではありません。

 また、既存の貸付金とは別に追加貸付けをした場合には、原則としてその追加貸付けを行った年の利率を判定することになるため、貸付年月日ごとに元本を把握しておくことが重要です(所基通36-49)。

 東京地裁平成27年9月15日判決(税資265号-137(順号12720))でも、個々の貸付金の発生日を基準として、それぞれの貸付金について適用利率が判定されています。

所得税基本通達36-49(利息相当額の評価)

 使用者が役員又は使用人に貸し付けた金銭の利息相当額については、当該金銭が使用者において他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には、その借入金の利率により、その他の場合には、貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項《利子税の割合の特例》に規定する利子税特例基準割合による利率により評価する。

会社の借入金の平均調達金利など合理的な利率によることもできる

 所得税基本通達36-49の利率より低い利率で貸し付けたからといって、必ず給与課税が生じるわけではありません。

 役員に貸し付けた金額について、会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、その利率によって実際に利息を徴収している場合には、36-49の利率との差額について給与として課税しなくても差し支えないとされています(所基通36-28(2))。

 所得税基本通達36-28(2)では、合理的な平均調達金利の例として、貸付けを行った日の前年又は前事業年度における借入金の平均残高に対する支払利息の割合などが挙げられています(所基通36-28(2))。

 したがって、「令和8年は必ず1.3%以上で貸さなければならない」という意味ではありません。

所得税側の評価と法人税側の「通常取得すべき利率」は区別する

 所得税基本通達36-49は、役員又は使用人が受ける経済的利益を所得税上評価するための基準です。

 一方、法人税側では、法人が役員に無利息又は通常の利率より低い利率で金銭を貸し付けた場合、「通常取得すべき利率」によって計算した利息と実際に徴収した利息との差額が、その役員に対して供与した経済的利益として取り扱われます(法法34④、法基通9-2-9(7))。

 したがって、法人側の通常取得すべき利率と所得税基本通達36-49の利率を、あらゆる場合に機械的に同一と考えるべきではありません。

 この点について、平成18年12月14日裁決(裁事72集382頁)は、金銭貸付けの通常の利率は、貸主の借入状況や市中金利の動向等を総合勘案して算定するのが原則であるとしています。

 そして、複数の借入金が貸付金の原資となっているものの、どの借入金をどの貸付金に充てたかを特定できず、借入利率も異なっていた事案について、各借入金の利率を加重平均した利率を適正利率とすることに合理性があると判断しています。

平成18年12月14日裁決(裁事72集382頁)判断要旨

 原処分庁は、所得税基本通達36-49《利息相当額の評価》について、個人の経済的利益を評価する際の定めであるから、法人の経済的利益を評価する際に直接適用することはできないが、当事者間で通常収受すべき利息相当額を計算するという目的からすれば、特段の事情のない限り、法人の経済的利益の評価に準用するのが相当であるとし、本件債権については、同通達の「その他の場合」の利率(利子税の特例基準割合と同率)を適用すべきである旨主張する。
 しかしながら、金銭の貸付けに係る通常の利率については、貸主の借入状況や市中金利の動向等の事情を総合勘案して適正利率を算定することが原則であり、本件債権のように、借入金をもって貸し付けているが、いずれの借入金をもって貸し付けているか特定できず、かつ、借入金の利率が同一でないものについては、当該各借入金の借入利率に基づく平均借入利率をもって適正利率とすることに合理性があると解されるところ、当該各借入金の借入利率に基づいて算定した平均借入利率は、原処分庁が認定した利率を下回っている。
 したがって、原処分庁が適用した利率は採用できない。

無利息又は低利でも給与課税しなくてよい場合

 役員に無利息又は低い利率で金銭を貸し付けた場合でも、次のいずれかに該当する経済的利益については、給与として課税しなくても差し支えないこととされています(所基通36-28)。

1.災害や病気などにより臨時に多額の生活資金が必要となった場合

 災害、疾病等により臨時的に多額の生活資金を必要とすることとなった役員に対し、その生活資金に充てるために合理的と認められる金額を貸し付け、その返済に必要な合理的期間内に生じる経済的利益については課税しなくても差し支えありません(所基通36-28(1))。

2.会社の平均調達金利など合理的な貸付利率によって貸し付ける場合

 会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、その利率によって実際に利息を徴収している場合に生じる経済的利益については課税しなくても差し支えありません(所基通36-28(2))。

3.経済的利益が少額である場合

 上記1及び2以外の貸付金について、その法人の事業年度における経済的利益の合計額が5,000円以下である場合には、給与として課税しなくても差し支えありません。

 なお、法人の事業年度が1年未満の場合には、5,000円をその事業年度の月数に応じて按分します(所基通36-28(3))。

無利息・低利貸付けによる経済的利益と定期同額給与

 法人税上、役員に対して継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは、定期同額給与に該当します(法法34①一・④、法令69①二)。

 役員への無利息又は低利貸付けによる経済的利益についても、その額が毎月著しく変動するものを除き、定期同額給与として取り扱われます(法基通9-2-9(7)、9-2-11(2))。

 したがって、別途現金で定期同額給与を支給していること自体が、この取扱いの要件となっているわけではありません。

 もっとも、経済的利益の額が不相当に高額である場合や、事実を隠蔽又は仮装して経理した場合などには、損金算入が認められないことがありますので注意が必要です(法法34、法基通9-2-9~11)。

 法人税基本通達逐条解説(9-2-11、税務研究会出版局)では、以下のように解説しています。

 金銭の貸付けであれば、元本の返済状況等により利息の額が遁減していき毎月の経済的利益の額が一定しないものもあろうが、そのような場合であってもその額が毎月著しく変動するものでなければ、『その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの』として取り扱われる。

所得税基本通達36-49の合理性が争われた裁判例

 東京地裁平成27年5月26日判決(税資265号-86(順号12669))では、所得税基本通達36-49によって役員貸付金の利息相当額を評価することの合理性が争われました。

 同判決は、使用者が他から借り入れた資金を貸し付けたものであることが明らかでない場合に、貸主と借主の関係、担保、貸付期間などを個別に評価すると評価額が事案ごとに異なり、納税者の予測可能性や課税事務の統一的執行に問題が生じることから、客観的な基準によって画一的に評価する所得税基本通達36-49には合理性があると判断しています。

 この判決に対する控訴も棄却され、確定しています(東京高裁平成28年3月29日判決・税資266号-58(順号12836))。

東京地裁平成27年5月26日判決(税資265号-86(順号12669))判示抜粋

 使用者が役員等に貸し付けた金銭が、使用者において他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかでない場合に、利息相当額を個別に評価することとすると、貸主と借主の関係、担保の有無とその種類、貸付期間など種々の要素により異なった評価額が生じることとなり、納税者の予測可能性を害する上、課税事務の統一的な執行が困難になるおそれを生じさせるから、客観性を有する基準によって画一的に評価するという基本通達36-49の定めは、納税者の予測可能性の向上、納税者間の公平、納税者の便宜及び徴税費用の節減という見地から見て合理的なものというべきである。
(略)
 基本通達36-49は、利息相当額を評価する利率として、利子税における特例基準割合を採用したものであるが、利子税の割合は税法上の基準金利(国から延納税金に相当する金銭を借り入れた場合の約定利率に相当するもの)と考えられ、客観性を有することに加え、特例基準割合が、国民にとって最も分かりやすい基準割引率を基準とし、かつ、変動要素を持った利率であることに照らすと、特例基準割合を採用したことには合理性があるというべきである。

個別事情も無視できないとした東京地裁平成27年9月15日判決

 東京地裁平成27年9月15日判決(税資265号-137(順号順号12720))では、多額の役員貸付金について所得税基本通達36-49の適用が争われました。

 同判決は、通常の第三者間利率を判断する際には、本来、借主の属性、担保の有無及び種類、貸付期間、その時々の経済実態などの個別的要素を一切無視することは適切ではないとしています。

 その一方で、課税の公平性や安定性を考慮すれば、特に考慮すべき個別的要素がない場合に一定の客観的利率を用いることにも合理性があるとしました。

 そして、本件では、貸付金が十数億円に上る一方、担保権が設定されず、使途及び返済期限も特に定められていなかったことなどを踏まえ、所得税基本通達36-49の利率を本件貸付金に適用する限度では、経済的利益の算定方法として必ずしも不合理ではないと判断しています。

 したがって、この判決を「所得税基本通達36-49の利率が、あらゆる役員貸付金について必ず適正利率になると判断した判決」と理解するのは適切ではありません。

認定利息は複利計算しないといけないのか?

 会社が役員に対して無利息又は低利で貸付けをしている場合、実務上は、決算時に適正な利率による認定利息を計算し、例えば次のような仕訳をすることがあります。

(借)未収金(未収利息) ×××円 /(貸)受取利息 ×××円

 この場合、決算のたびに未収計上した認定利息が累積していきます。

 そこで問題となるのが、翌事業年度以降の認定利息を計算する際に、元本である役員貸付金だけでなく、過年度に未収計上した認定利息についてもさらに利息を計算し、いわゆる「複利計算」をする必要があるのかという点です。

 この点について、国税庁の「認定利息の取扱について」では、同族会社が代表者等に対する仮払金又は貸付金について認定利息を計算し、「未収金/受取利息」として経理している場合を前提として、原則として元本である貸付金等についてのみ認定利息を計算し、未収計上した認定利息の累積額についてまでさらに認定利息を計算する必要はないとしています。

 したがって、例えば役員貸付金1,000万円について毎年認定利息を計上し、その認定利息が未収金として累積している場合でも、原則として翌事業年度の認定利息は役員貸付金1,000万円を基礎として計算すればよく、過年度の未収認定利息を元本に加えて複利計算する必要はありません(昭和29年9月15日直法1-165・国協178「認定利息の取扱について」)。

 ただし、認定利息を元本に組み入れた場合や、役員から返済を受ける際に元本だけを返済したこととして認定利息を長期間未収のまま残すなど、特に課税上弊害があると認められる場合には、この取扱いによらないこととされています(昭和29年9月15日直法1-165・国協178「認定利息の取扱について」)。

 なお、会社が役員に金銭を貸し付ける場合には、税務上の認定利息を毎期計上するだけでなく、できる限り当初から金銭消費貸借契約書に適正な利率を定め、契約に従って実際に役員から利息を徴収することが望ましいと考えられます。

期中で役員貸付金残高が変わった場合

 期中に追加貸付け又は返済があり役員貸付金残高が変動する場合には、実際の貸付残高と貸付期間に対応して利息相当額を計算する方法が合理的です。

 例えば、利率1%で、365日の事業年度中、200万円の貸付残高である期間が165日、100万円の貸付残高である期間が200日であった場合には、次のように計算できます。

 200万円×1.0%×165日÷365日+100万円×1.0%×200日÷365日=約14,521円

 ただし、異なる年に追加貸付けを行い、所得税基本通達36-49による適用利率が異なる場合には、それぞれの貸付金について適用利率を区分して計算する必要があります(所基通36-49)。

認定利息の金額を積数計算法により算定された事例

 東京地裁昭和55年2月26日判決(昭和44年(行ウ)126号)では、役員に対する仮払金等の認定利息の計算方法が問題となりました。

 同判決は、月末平均残高法について、貸付け及び回収が頻繁で貸付残高が常時変動し、貸付期間も相当長期にわたる場合には、概算的な利息計算方法として一応の合理性が認められるとしています。

 一方、一般的には積数計算法による方が正確であり、本件では、貸付残高の変動回数が少ないにもかかわらず変動額が極めて大きく、貸付残高の低い期間が事業年度の大半を占めていたことから、月末平均残高法ではなく積数計算法を採用すべきであると判断しました(東京地判昭和55年2月26日・)。

 したがって、認定利息の計算について必ず積数計算法しか認められないということではありませんが、期中残高の変動が大きい場合には、実際の貸付残高と日数に基づく積数計算法を採用するのが適切です。

 東京地裁昭和55年2月26日判決では、以下のように判示しています。

 被告(編注、所轄税務署長)は、右認定利息額を算出するについて月末平均残高法を採用しているが、この方法は、貸付け及び回収が頻繁であるため貸付残高が常時変動し、しかも、その貸付期間が相当長期にわたるような場合においては、各月未における貸付金額の増と減とは相互に打ち消しあつて自ずと平均化されるのが通常であることから、そうした場合の概算的な利息の計算方法として一応の合理性が認められているものであり、一般的には積数計算法によるのが正確であることはいうまでもない。
 ところで、本件について見ると(略)、貸付残高は、昭和37年7月から昭和38年3月までは8万円と一定しているが、同年4月、5月は一挙に113万3,000円と14倍になり、同年6月は83万3,000円と若干減少している。してみると、本件は、貸付残高変動の回数が少ないにもかかわらず、貸付残高変動額は極めて大きく、しかも、貸付残高の低い期間が一事業年度の大半を占めているのであつて、かかる条件下においては、月末平均残高法を採用するのは相当ではなく、積数計算法を採用すべきである。
 そこで、K(編注、原告であるH社の代表取締役)に対する仮払金、仮受金の差額につき、積数計算法に基づきH社が争わない年1割(日歩2銭7厘4毛)の利率で認定利息を計算すると、次のとおりである。
ア) 自昭和37年7月17日至昭和38年4月25日(283日)
 80,000円×0.000274×283日=6,203円
イ) 自昭和38年4月26日至同年6月25日(61日)
 1,133,000円×0.000274×61日=18,936円
ウ) 自昭和38年6月26日至同月29日(4日)
 983,000円×0.000274×4日=1,077円
エ) 昭和38年6月30日(1日)
 833,000円×0.000274=228円
 以上合計( ア)+ イ)+ ウ)+ エ)) 2万6,444円
 よつて、2万6,444円は、H社の修正申告所得金額に加算すべきである。

役員貸付金と貸倒引当金

 役員に対する貸付金であっても、実際に貸付金債権が存在する場合、その貸付金は原則として一括評価金銭債権に含まれます(法法52、法基通11-2-16~18・20、国税庁タックスアンサーNo.5500)。

 ただし、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金を税務上繰り入れることのできる法人は法人税法52条等により限定されています。

 したがって、「役員貸付金であれば、すべての法人が貸倒引当金を設定できる」という意味ではありません(法法52、法令96、国税庁タックスアンサーNo.5501)。

まとめ

 会社が役員に金銭を貸し付ける場合には、単に「その年の利子税特例基準割合を使えばよい」と考えるのではなく、次の順序で検討するのが適切です。

  1. その貸付金が会社の特定の借入金を原資としたものであることが明らかかを確認する。
  2. 明らかな場合には、その借入金の利率を確認する。
  3. それ以外の場合には、役員側の経済的利益の評価について、原則として貸付けを行った日の属する年の利子税特例基準割合を確認する(所基通36-49)。
  4. 会社の平均調達金利など合理的な貸付利率によることができないかも確認する(所基通36-28(2))。
  5. 法人側の「通常取得すべき利率」については、所得税基本通達36-49を常に機械的に適用するのではなく、会社の借入状況その他の事実関係も確認する(法基通9-2-9(7)、平成18年12月14日裁決・裁事72集382頁)。
  6. 貸付年月日、貸付額、利率、返済期限及び返済状況を契約書や帳簿によって明確にしておく。

 特に、役員貸付金が長期間・多額にわたる場合には、単に決算時に認定利息を計算するだけではなく、貸付けの必要性、返済能力、返済実績、担保、返済期限、適用利率の根拠などを客観的に説明できる状態にしておくことが重要です。

内部文章

内部文章(法事例2054 他からの借入資金を役員に貸し付けた場合の利息の計算額)

〔問〕 会社が役員に金銭の貸付けを行った場合の利息の額の計算について、次の場合にはどのように取り扱われるか。
(1) 会社が、他の銀行等から借入れを行った資金を貸し付けた場合
(2) 会社の自己資金を貸し付けた場合
(3) 会社の定期預金を担保にして、不動産担保の場合より低い利率で借り入れた資金を貸し付けた場合

〔答〕 (1)会社が他の銀行等から借入れた資金を役員に貸し付けた場合は、原則としてその借入金と同じ利率により計算した額、(2)会社の自己資金を貸し付けた場合は、通常取得すべき利率により計算した額、(3)会社の定期預金を担保にして借り入れた資金を貸し付けた場合は、定期預金を担保にして借り入れた利率(不動産担保の借入利率より低い利率)により計算した額によればよい。
 法人が、役員等に対し、通常より低い利率で金銭の貸付けを行った場合には、通常の利率により計算した利息の額から、その役員等から徴収した利息の額を差引いた差額は、その役員に対する給与として取り扱われる。〔法基通9-2-9(7)〕
 銀行等からの借入金を貸し付けた場合とは、通常借入れがない法人が、一時的に納税資金等の調達のために借入れをした場合は、その借入資金を貸し付けたことにはならず、この場合の利率は利息の認定とは関係がないことになる。
〔法法34〕

内部文章(法事例3318 一括評価金銭債権となる役員に対する貸付金)

〔問〕 役員に対する貸付金は貸倒引当金の設定の対象となる一括評価金銭債権に該当するか。

〔答〕 役員に対する貸付けの事実が明らかであれば貸金に該当する。
 貸倒引当金の設定の対象となる一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で、個別評価の対象となった金銭債権及び非適格合併等により合併法人等に移転する金銭債権を除いたものとされており、役員に対する貸付金が排除される規定はない。〔法法52(2),法令96(6)〕
 したがって、役員に対する貸付金は一括評価金銭債権となる。同族会社の役員であっても同様である。
 なお、役員に対する貸付けの事実が明らかであることの証明として、「金銭消費貸借契約」が結ばれているか、貸付金に対する認定利息の計上があるかなどがポイントとなる。

所得税基本通達36-49(利息相当額の評価)が利子税の特例基準割合をもって利率として定めている点は、本件についてこれを適用する限度においては、必ずしも不合理ではないとされた事例-東京地裁平成27年9月15日判決(税資265号-137(順号12720))(棄却)(確定)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 原告X社は、平成5年7月21日に成立した医療法人社団であり、X社の事業年度は、毎年7月1日から翌年の6月30日までである(以下では、例えば、平成17年7月1日から平成18年6月30日までの事業年度を「平成18年6月期」と表記し、他の事業年度の表記もこれに従う。)
② X社は、A(理事長)に対して、十数億円に上る貸付金(以下「本件貸付金」という。)を有していた。
 なお、本件貸付金に関しては、契約書は作成されていない。
 本件貸付金の利息は、X社の総勘定元帳の「受取利息」勘定及び「未収入金」勘定において、以下の表のとおり計上された(以下では、この計上金額を「本件計上利息」という。)。

計上日金額利率
平成18年6月30日10万4165円年0.01%
平成19年6月30日11万7312円年0.01%
平成20年6月30日11万7312円年0.01%
平成21年6月30日1027万4466円年2.0 %
平成22年6月30日837万6435円年2.0 %

③ Y(課税庁)が、本件貸付金に係る受取利息の計上額が低額であるから、本件貸付金に係る通常収受すべき利息の額を所得税基本通達36-49の定めに基づいて計算し、受取利息との差額がAに対する経済的利益の供与(給与所得)と認められるとして、その経済的利益に係る源泉所得税の納税告知処分(以下「本件納税告知処分」という。)を行った。
③ X社は、その処分の取消しを求めた

(2)本件の主な争点

 本件貸付金の利息相当額の算定は、所得税基本通達36-49後段に定める利率によるべきか否かである。

(3)判決要旨(棄却)(確定)

① 使用者が役員又は従業員(以下「役員等」という。)に対して金銭の貸付けをした場合、当該貸付けに係る利率が、使用者以外の第三者から金銭の貸付けを受けるとした場合の通常の利率(以下「第三者利率」という。)よりも低いときには、使用者が、当該役員等に対し、上記の各利率の差額により算出される利子の金額に相当する経済的利益を供与したこととなり、この経済的利益は、所得税法28条1項、36条1項により、当該役員等の給与所得(同法28条1項にいう「給与等」)に当たると解される。
 上記の第三者利率の算定方法を具体的に定めた法令はないが、個々の納税者が得た経済的利益の評価をするものである以上、借主の属性、担保の有無とその種類、貸付け期間、時々の経済実態など、利率に関わる個別的な要素を一切無視して決することは適切ではない一方、課税の公平性や安定性の要請に配慮すると、特に個別的な要素がない場合には、法定利率等の一定の水準の利率をもって通常適用すべき第三者利率とすることにも合理性があるということができる。
② 使用者の役員等に対する貸付金は、一般に、使用者と役員等との特殊な関係を反映して、担保権を設定せず、その使途及び返済期限も特に定めない形態をとることも少なくないということができ、客観的にみれば貸倒れのリスクが比較的高い類型のものであるところ、そのような類型の貸付けにおける金利は一般に必ずしも低廉なものとはいえず、金融機関が利子税の特例基準割合に近似する水準の利率を設定することも十分に考えられる。以上の諸点を勘案すると、特に個別的な要素がない場合において、利子税の特例基準割合を適用することには、一応の合理性がないわけではない。
③ これに対し、X社は、第三者利率としては、全国の銀行(銀行法2条1項参照)等が行った多数の貸付けにおける金利(利率)の平均値である貸出平均金利を採用することが適切である旨主張する。
 しかしながら、上記の平均値の基礎とされた貸付けの中には、(イ)会社又は地方公共団体等の法人に対する貸付けに加え、(ロ)個人に対する貸付けであっても、詳細に返済期限を定め、貸付金の使途を特定の目的に限定し、確実な担保を徴するなどの合理的な方策を講じることにより、元本の回収が相当に確実であると見込まれる貸付け(典型的には住宅ローン)が相当数含まれているものと考えられる。そうすると、そのような方策を講じていない個人に対する貸付金の利率についてまで、上記金利を採用することが合理的であるとはいい難い。現に、本件貸付金は、貸付額が合計で十数億円に上る多額のものであるが、担保権を設定せず、その使途及び返済期限も特に定めていない。
④ 以上を総合考慮すれば、基本通達36-49が利子税の特例基準割合をもって利率として定めている点は、少なくとも、本件貸付金についてこれを適用する限度においては、経済的利益の供与の額の算定方法として必ずしも不合理ではないというべきである。
 したがって、本件各期間における本件貸付金の通常の利率は、基本通達36-49の定める利率によることができると解される。
⑤ 本件納税告知処分は適法である。

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