概要
法人が外国株式に投資した場合には、株式の購入代金や手数料、外国で徴収された税金、日本で徴収された所得税等を区別して処理する必要があります。また、期末評価は、法人税法上の保有目的と、会社が採用する会計基準の両方を確認します。
消費税では、外国株式の売却が国内取引か国外取引かによって、課税売上割合や売買手数料の仕入税額控除の取扱いが変わります。
この記事では、日本の内国普通法人が、外国法人の発行する通常の株式を現物で取得・保有・売却する場合を説明します。主に国内の証券会社を通じた取引を想定し、外国子会社からの配当については別途説明します。外国ETF・REIT、ADR、信用取引、資本の払戻しなどは、商品や取引の法的性質に応じた検討が必要です。
仕訳の勘定科目は例示です。消費税の課税事業者が税抜経理を採用することを前提とし、数値例はそれぞれ独立した例とします。原則課税・簡易課税の別や仕入税額控除の可否によって、最終的な経理処理は異なります。
外国株式を購入したとき
取得価額には購入手数料を含める
外国株式の取得価額は、購入代金に、国内の証券会社に支払う購入手数料や現地の購入手数料などを加算して計算します。購入手数料を、そのまま当期の支払手数料として損金算入することはできません(法令119①一)。
ただし、税務上、取得のための通信費・名義書換料や、外国で徴収される有価証券取得税その他これに類する税は、取得価額に含めないことが認められています(法基通2-3-5)。
株式の購入代金そのものは、消費税の課税仕入れに該当しません。一方、国内の証券会社が国内で提供する売買の取次ぎ等に係る手数料は、原則として消費税の課税対象です。現地で提供される役務に係る手数料は、原則として国外取引となり、日本の消費税の対象外です。
購入時の仕訳例
次の金額で外国株式を購入したものとします。外貨建ての金額は、適用する為替相場によって円換算済みとし、決済時の為替差損益は生じない例です。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 株式の購入代金 | 1,000,000円 |
| 国内購入手数料(税抜) | 10,000円 |
| 国内購入手数料に係る消費税等 | 1,000円 |
| 現地購入手数料 | 3,000円 |
| 支払総額 | 1,014,000円 |
取得価額は、1,000,000円+10,000円+3,000円=1,013,000円です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 1,013,000円 | 未払金 | 1,014,000円 |
| 仮払消費税等 | 1,000円 |
代金を支払ったときは、未払金を普通預金又は証券会社の預け金などと振り替えます。購入代金に含めた手数料も、会計ソフトでは株式代金と区別し、消費税区分を設定します。
仮払消費税等を計上できることと、その全額を仕入税額控除できることは別です。控除の取扱いは、後述の「外国株式に関する消費税」で確認してください。
外貨建取引の円換算
外貨建ての購入・配当・売却は、原則として、その取引を計上すべき日の対顧客直物電信売買相場の仲値(TTM)で円換算します。継続適用を条件として、購入に係る原価には電信売相場(TTS)、受取配当や売却収入には電信買相場(TTB)を用いることも認められます(法法61の8①、法基通13の2-1-2)。
円で外国通貨を購入し、直ちに資産を取得する場合などには、実際に支出した円の金額による取扱いもあります。証券会社の取引報告書の換算額を利用するときも、自社の処理方法との整合を確認します(法基通13の2-1-2(注)4・5)。
有価証券の取引は、原則として約定日を基準に記録します。決算日をまたぐ約定日・受渡日の取引に注意が必要です。外貨建ての未払金、未収金、預け金などに生じる決済時の為替差損益は、株式の売買損益と区別して処理します(企業会計基準第10号第7項、法基通2-1-22)。
外国株式の配当を受け取ったとき
配当は税引前の総額で計上する
通常の外国法人から受ける配当には、国内株式についての受取配当等の益金不算入制度は適用されません。外国子会社配当益金不算入制度などの特則に該当しない限り、税引前の配当総額を益金に算入します(法法22②、23①、23の2)。
外国での源泉税と、日本での所得税・復興特別所得税は、それぞれ区別して記録します。外国の税率は、投資先国の法令、租税条約、適用手続などによって異なり、源泉税が徴収されない場合もあります。
日本での源泉徴収は受取経路を確認する
国内の支払取扱者を通じて外国株式の配当を受け取る場合には、原則として、日本で次の税率による源泉徴収が行われます。内国法人について、個人に対する配当割のような住民税5%の徴収はありません(措法9の2、9の3)。
| 区分 | 2026年に適用される国内源泉徴収税率 |
|---|---|
| 上場株式等に該当する外国株式の配当 | 15.315% |
| 上場株式等以外の外国株式の配当 | 20.42% |
外国所得税が配当の支払時に徴収される場合、日本で源泉徴収の対象となる金額は、原則として、その外国所得税を差し引いた後の金額です。受取配当金として計上する税引前総額とは異なります(措法9の2③)。
国内の支払取扱者を通じず、外国の証券口座等で直接受け取る通常の外国株式配当は、この国内源泉徴収の対象となりません。その場合も、法人税申告では配当の計上と外国税額の処理が必要です。
2027年1月1日以後に生ずる所得については、防衛特別所得税の創設と復興特別所得税率の引下げが適用されます。所得税に上乗せする割合は合計2.1%で変わらないため、上記の合計税率15.315%・20.42%は変わりません。防衛特別所得税も法人税の所得税額控除制度に組み込まれるため、適用時期に応じた明細で処理します(国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」、財務省「令和8年度税制改正の解説」)。
配当受取時の仕訳例
上場外国株式について、配当総額100,000円、外国源泉税10,000円とします。説明を簡単にするため、法人の計上額と国内源泉徴収の基礎となる額に、円換算の差はないものとします。
- 国内源泉徴収の対象額:100,000円-10,000円=90,000円
- 国内源泉税:90,000円×15.315%=13,783円(1円未満切捨て)
- 入金額:100,000円-10,000円-13,783円=76,217円
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金又は預け金 | 76,217円 | 受取配当金 | 100,000円 |
| 法人税等(外国源泉税) | 10,000円 | ||
| 法人税等(国内源泉税) | 13,783円 |
この例は、源泉税を費用計上する方法です。仮払税金等で処理する方法もありますが、勘定科目の名称だけで税額控除や損金算入の可否が決まるわけではありません。
証券会社が源泉徴収のために用いる換算日・相場と、法人が配当を計上するために用いる換算日・相場は、必ずしも一致しません。外貨で受け取る配当、円に換えて受け取る配当のいずれも、配当明細の総額、外国税額、国内税額、換算日・相場を確認します(法基通13の2-1-2、措通9の2-2・9の2-3)。
配当を計上する事業年度
外国株式の配当は、原則として、配当の効力発生日など、その配当を受ける権利が確定する日の属する事業年度に収益計上します。外国法人の所在国・地域の法令に、配当の確定時期について異なる定めがある場合には、その法令に従って確定する日によります(法基通2-1-27)。
ただし、支払のために通常要する期間内に受け取る配当について、継続して実際に支払を受けた日の属する事業年度に収益計上している場合には、その取扱いが認められます。外国からの送金に通常要する期間も考慮します(法基通2-1-28)。
原則に従って収益計上する場合、決算日までに未入金であっても権利が確定していれば、未収配当金等の計上が必要になります。
国内源泉税と外国源泉税の申告上の違い
| 税額 | 主な申告上の処理 | 注意点 |
|---|---|---|
| 国内で源泉徴収された所得税等 | 所得税額控除。別表六(一)で計算 | 国外株式配当も、原則として元本の所有期間に対応する税額を計算する |
| 外国で徴収された税額 | 外国税額控除を検討。別表六(二)等で計算 | 控除対象外国法人税への該当性、国外所得金額、控除限度額、証明書類等を確認する |
国内源泉税をすべて自動的に控除できるとは限りません。外国株式配当についても、原則的な計算方法又は簡便法によって所有期間対応額を確認します。控除対象額が法人税額を上回るときは、控除しきれない額が還付されます(法法68、78、措法9の2④、国税庁タックスアンサーNo.5760)。
外国源泉税も、徴収されたという理由だけで全額が当期の税額控除になるわけではありません。外国法人税に該当するか、租税条約で認められる課税額を超えていないか、控除限度額や繰越制度の適用があるかを確認します(法法69、法令141・142の2)。
上記の仕訳例のように費用計上している場合、所得税額控除又は還付を受ける国内税額は、損金不算入となるため申告調整が必要です。外国税額控除を選択した場合の控除対象外国法人税額も損金不算入であり、当期の控除限度額を超える部分を直ちに損金にできるわけではありません。税額控除と損金算入を二重に行わないようにします(法法40・41)。
外国子会社から受ける配当の特則
一定の外国子会社から受ける配当は、原則として、その配当額の95%が益金不算入となります。外国法人であるというだけで適用される制度ではありません(法法23の2①、法令22の4②)。
原則として、所定の持株割合又は議決権株式等の保有割合が25%以上であり、その状態が配当の支払義務の確定日以前6月以上継続していることが必要です。租税条約による割合の特例や、設立後6月以内の外国法人等に関する特則も確認します(法令22の4)。
外国子会社側で損金算入される配当等には適用除外・調整規定があり、明細書の添付や関係書類の保存も必要です。会計上「子会社」に該当することと、この制度の要件を満たすことは区別します(法法23の2②~⑦)。
この益金不算入制度の適用を受ける配当に係る外国源泉税等は、原則として損金不算入であり、外国税額控除の対象にもなりません。一般の外国株式配当と同じ処理をしないように注意します(法法39の2、69)。
外国株式の期末評価
法人税では売買目的と売買目的外を分ける
| 法人税法上の区分 | 期末評価 | 通常の外貨建株式の円換算 |
|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 時価評価し、評価損益を益金又は損金に算入 | 期末時換算法 |
| 売買目的外有価証券 | 原価法。評価損の損金算入は別途要件を確認 | 発生時換算法 |
外国株式であっても、法人税法上の売買目的有価証券に該当するかを確認します。短期間で売却したことや、会計ソフトの勘定科目を「売買目的有価証券」にしたことだけで、その区分になるわけではありません。専担者による短期売買や、取得日における帳簿書類への記載などの要件があります(法法61の3①、法令119の12)。
通常の売買目的外の外国株式は、株価や為替相場が変動しただけでは、法人税上の期末帳簿価額を変更しません。売買目的有価証券の外国株式は、期末の株価と期末の為替相場を用いて評価します(法法61の3①・②、61の9①二)。
株式と、外貨建ての預け金・未収金等は別の資産です。株式を発生時換算法で扱う場合でも、外貨建ての預け金等には、その資産に適用される換算方法を確認します。
売買目的有価証券の評価仕訳例
会計上・税務上ともに売買目的有価証券に該当するものとし、期末帳簿価額1,013,000円、期末株価100米ドル、保有株数100株、期末の換算相場120円とします。
- 期末評価額:100米ドル×100株×120円=1,200,000円
- 評価益:1,200,000円-1,013,000円=187,000円
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 有価証券 | 187,000円 | 有価証券評価益 | 187,000円 |
この評価益は、法人税上も益金に算入します。翌事業年度には、前期の評価益相当額を損金に算入する洗替え処理を行います。会計でも洗替法を採用する場合の翌期首の仕訳は、次のとおりです(法令119の15①)。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 有価証券評価損益 | 187,000円 | 有価証券 | 187,000円 |
会計上、売買目的有価証券について切放法を採用する場合には、税務上の洗替えとの相違を申告上調整します(移管指針第9号第67項)。
会計では採用基準による違いも確認する
売買目的外の外国株式でも、会計上の「その他有価証券」として時価評価する場合があります。法人税法上の評価と同じとは限りません。
| 採用する会計基準等 | 通常の市場価格のある「その他有価証券」に該当する株式 |
|---|---|
| 一般の企業会計基準 | 原則として時価評価し、評価差額を税効果調整後に純資産へ計上。評価損を損益計上する方法も定められている |
| 中小会計指針 | 取得原価によることができる。ただし、市場価格のある株式を多額に保有する場合には時価評価し、評価差額を税効果調整後に純資産へ計上 |
| 中小会計要領 | 原則として取得原価。売買目的有価証券は時価評価 |
中小企業であっても、採用する基準、適用対象、保有目的、保有金額、減損の有無を確認して処理します。上表は通常の期末評価の整理であり、会計上の減損処理を省略できるという意味ではありません(企業会計基準第10号第15項・第18項~第20項、中小会計指針第19項~第24項、中小会計要領各論5)。
例えば、一般の企業会計基準を適用し、その他有価証券について全部純資産直入法を採用する場合、取得原価1,013,000円、期末の円換算時価1,200,000円、税効果に用いる税率30%とすると、次の仕訳になります。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 187,000円 | 繰延税金負債 | 56,100円 |
| その他有価証券評価差額金 | 130,900円 |
計算は、評価差額187,000円、繰延税金負債187,000円×30%=56,100円、純資産計上額187,000円-56,100円=130,900円です。30%は説明用の仮定であり、実際には自社の適用税率等によって税効果を計算します。
この例の評価差額は、会計上の損益に計上しません。税務上も、所定の洗替方式で評価・換算差額を純資産に計上している場合は、原価法・発生時換算法の取扱いとなります。損益に計上していない評価差額を、そのまま別表四で加算する処理は行いません(法基通2-3-19、13の2-2-4)。
減損・評価損の損金算入は別途判定する
売買目的外の株式について会計上の減損処理をしても、その評価損が自動的に法人税上の損金になるわけではありません。損金経理と、税法上の評価損計上事由の双方を確認します(法法33②、法令68①二)。
通常の市場有価証券等では、期末価額が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、近い将来の回復が見込まれないことなどが判断要素です。企業支配株式等には別の要件があるため、一律の「50%ルール」として扱わないようにします(法基通9-1-7~9-1-11)。
外国法人の資産状態の悪化を判定する場合には、原則として、その法人の使用する外国通貨による1株又は1口当たりの純資産価額を比較します。単なる円換算額の減少と、外国法人自体の資産状態の悪化を混同しないことが必要です(法基通9-1-10)。
外国株式を売却したとき
法人税では、円換算した売却収入から、売却した株式の税務上の帳簿価額を差し引いて譲渡損益を計算します。外国株式の売却益も、通常の法人所得に含めて申告します(法法61の2①)。
国内の証券会社に売却を委託した場合、原則として、その売却取引が成立した日に損益を計上します。売却代金の入金日や受渡日だけで事業年度を判断しないようにします(法基通2-1-22)。
次の金額で売却したとします。売却前の帳簿価額は1,013,000円であり、会計と税務の差異や決済時の為替差損益はないものとします。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 株式の売却代金(手数料控除前) | 1,200,000円 |
| 国内売却手数料(税抜) | 10,000円 |
| 国内売却手数料に係る消費税等 | 1,000円 |
| 現地売却手数料 | 2,000円 |
| 差引入金額 | 1,187,000円 |
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収金 | 1,200,000円 | 投資有価証券 | 1,013,000円 |
| 有価証券売却益 | 187,000円 |
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 12,000円 | 未収金 | 13,000円 |
| 仮払消費税等 | 1,000円 |
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金又は預け金 | 1,187,000円 | 未収金 | 1,187,000円 |
売却益は1,200,000円-1,013,000円=187,000円で、売却手数料12,000円を差し引いた損益は175,000円です。同じ銘柄を複数回取得している場合には、選定した移動平均法又は総平均法などにより、売却した株式の帳簿価額を計算します。
通常の株式売却による内国普通法人の譲渡益について、日本で配当のような源泉徴収は行われません。ただし、外国での課税は、その国の法令や租税条約によって確認します。「外国株式の売却益は外国では必ず非課税」と判断することはできません。
外国で売買代金等を基礎とする取引税・取得税などが課されても、所得を対象とする外国法人税とは異なるため、当然に外国税額控除の対象になるものではありません。
外国株式に関する消費税
株式の売却は最初に国内外の判定をする
株式を売却する場合は、外国法人の株式であることや、国内の証券会社を利用していることだけで消費税区分を決めません。
| 株式等の取扱い | 国内外の判定基準 |
|---|---|
| 振替機関又はこれに類する外国の機関が取り扱うもの | 原則として、その振替機関等の所在地 |
| 振替機関等で取り扱われない、券面の発行のない株式等 | 原則として、発行法人の本店等の所在地 |
| 上記の振替による取扱いに該当せず、券面の発行のあるもの | 原則として、その有価証券の所在地 |
複数の振替機関で扱われる重複上場有価証券等には、実際の決済に伴う振替業務がどこで行われるかに応じた規定があります。国内の証券会社に口座を開設していることと、国内の振替機関で取り扱われることを区別します(消法4③一、消令6①九)。
外国の振替機関で取り扱われる通常の外国上場株式の売却は、原則として国外取引です。国内取引に該当する株式の売却は、原則として非課税取引となります(消法6①、別表第二二)。
課税売上割合の計算は売却益ではなく売却対価を確認する
| 取引 | 消費税の区分 | 課税売上割合への算入 |
|---|---|---|
| 国外取引となる株式の売却 | 不課税(国外取引) | 分母・分子の双方に算入しない |
| 国内取引となる通常の株式の売却 | 非課税 | 売却対価の5%相当額を分母に算入 |
| 通常の株式配当の受領 | 不課税(資産の譲渡等の対価に当たらない) | 分母・分子の双方に算入しない |
| 株式の期末評価損益 | 資産の譲渡等に該当しない | 分母・分子の双方に算入しない |
例えば、売却対価1,200,000円の株式売却が国内の非課税取引に該当する場合、分母に算入する金額は1,200,000円×5%=60,000円です。売却益187,000円の5%ではありません(消令48①・⑤)。
同じ売却が国外取引であれば、その1,200,000円も5%相当額の60,000円も、課税売上割合の分母に算入しません。
売買手数料の仕入税額控除
国内の証券会社の国内役務に係る売買手数料には、株式自体の売却が国外取引であっても、原則として消費税が課されます。
原則課税で個別対応方式を適用する場合、手数料の用途区分は次のように整理します。
| 手数料の使途 | 個別対応方式での区分 |
|---|---|
| 国外取引となる株式売却のために国内で支払う手数料 | 課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ |
| 国内の非課税取引となる株式売却のために支払う手数料 | その他の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ |
国外取引のための国内課税仕入れは、個別対応方式では「課税売上げにのみ要するもの」として扱われます。したがって、外国株式であるという理由だけで、国内手数料をすべて「非課税売上げにのみ要するもの」に区分することは適切ではありません(消基通11-2-11、11-2-15)。
購入手数料についても、対応する売却が国内の非課税取引か国外取引かなど、その手数料の使途を踏まえて判断します。国内外の取引や複数の用途に共通する管理手数料等は、個々の実態に応じた区分が必要です。
仕入税額控除には、原則として帳簿及び適格請求書等の保存が必要です。証券会社の取引報告書等も必要事項を確認して保存します。一括比例配分方式では課税売上割合による計算、簡易課税では実際の手数料税額によらない計算となるため、上記の個別対応方式の処理と区別します(消法30、37)。
法人税申告と資料保存の確認点
- 受取配当金は、外国税・国内税を差し引く前の総額で計上しているか。
- 配当の権利確定日、実際の受領日、適用した円換算日・相場を確認したか。
- 国内源泉税について、別表六(一)の区分と元本所有期間対応額を確認したか。
- 外国税について、控除対象外国法人税への該当性、控除限度額、条約上の課税限度、必要書類を確認したか。
- 外国子会社配当の益金不算入と、一般の外国株式配当を区別したか。
- 会計上の評価・換算方法と、法人税法上の方法との違いを把握したか。
- 損益計上した評価損等に申告調整が必要な場合、別表四・別表五(一)に適切に反映したか。
- 株式売却の消費税の国内外判定と、手数料の仕入税額控除の区分を確認したか。
取引報告書、配当明細、外国税額の証明資料、為替相場の資料、期末残高・評価資料などを保存し、帳簿、決算書、法人税・消費税申告書を照合できるようにしておくことが大切です。
関連する記事
- 法人の外貨建取引と為替差損益|換算レート・期末換算・仕訳・届出
- 法人の有価証券の保有目的・期末評価・区分変更|売買目的と売買目的外の違い
- 法人税申告書 別表六(一)「所得税額の控除に関する明細書」の区分と記載方法
主な根拠資料
- 法人税法22・23・23の2・33・39の2・40・41・61の2・61の3・61の8・61の9・68・69・78、法人税法施行令22の4・68・119・119の12・119の15・141・142の2
- 租税特別措置法9の2・9の3、消費税法4・6・30・37、消費税法施行令6・48
- 国税庁・法人税基本通達2-1-22・2-1-27・2-1-28・2-3-5・2-3-19・9-1-7~9-1-11・13の2-1-2・13の2-2-4、消費税法基本通達11-2-11・11-2-15
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」第8・配当所得の源泉徴収事務
- 国税庁タックスアンサーNo.5760「所得税額控除」
- 国税庁「振替機関及びこれに類する外国の機関について」
- 国税庁「非課税と不課税の違い」
- 国税庁「国外取引に係る仕入税額控除」
- 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」
- 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第7・15・18~20項等、移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」第67項等
- 日本税理士会連合会「中小企業の会計に関する指針」2025年9月19日修正版、第19~24・76~80項/「中小企業の会計に関する基本要領」2012年2月1日公表、各論5
2026年10月16日現在の法令・公表資料等に基づいて作成しています。
