クラウド会計対応 月額5,500円からの顧問料 東京都豊島区池袋の格安顧問料の税理士です

リストリクテッド・ストック(特定譲渡制限付株式、RS)とリストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)の所得税の取扱い

概要

 RSやRSUによる株式報酬では、株式を売却していなくても所得税が課税されることがあります。申告に当たっては、報酬としての課税と、その後の株式売却による課税を分けて確認する必要があります。

 この記事では、日本の居住者である役員・従業員が勤務の対価として受け取る株式報酬を中心に、課税時期、所得区分、取得費及び源泉徴収を解説します。非永住者に該当する方や、海外赴任・帰国を伴う方については、課税対象となる所得の範囲を別途確認する必要があります。

RSとRSUの違い

 RSはRestricted Stockの略で、株式を先に交付し、その株式に一定期間の譲渡制限や勤務条件等を設ける報酬制度です。勤務条件等を満たさない場合に、会社が株式を無償で取得する仕組みが設けられています。

 RSUはRestricted Stock Unitの略で、将来、条件を満たしたときに株式等を受け取るためのユニットを付与する報酬制度です。通常は付与時に株式そのものを取得するわけではなく、契約で定められた条件の充足や株式への転換等を経て、株式を取得します。

項目RSRSU
当初交付されるもの譲渡制限等の付いた株式将来株式等を受け取るためのユニット
株主としての権利株式の内容や契約に応じ、制限期間中も議決権・配当受領権等を持つ場合がある通常、株式取得前には株主としての議決権等を持たない
報酬の主な課税時点税法上の特定譲渡制限付株式では、原則として譲渡制限解除日株式等の取得に係る収入の原因となる権利が確定した時点。契約上の権利確定日や株式転換日等を確認する

 RSUの権利確定と株式の交付が同日に行われる制度もありますが、両者が別の日となる制度もあります。税務上の判断では、「RS」「RSU」という名称に加えて、契約の内容と実際の手続を確認することが大切です。

特定譲渡制限付株式に該当するRSの課税

特定譲渡制限付株式の要件

 所得税法上の特定譲渡制限付株式は、役務提供の対価として交付される株式で、主に次の要件を満たすものです(所令84①②)。

  • 役務提供の対価として個人に生ずる債権の給付と引換えに交付されるもの、又は実質的に役務提供の対価と認められるものであること。
  • 譲渡、担保権の設定その他の処分が制限され、その制限期間が設けられていること。
  • 役務提供を受ける法人、発行法人又は交付法人が、その株式を無償で取得する事由を定めていること。その事由は、勤務継続・勤務実績等の勤務状況や、法人の業績その他の指標に基づくものに限られること。

 例えば、会社が役員に金銭報酬債権を付与し、その債権を現物出資することで株式を交付する方式が用いられます。ただし、税法上の対象は、この方式だけに限定されません。

 会社法上、株式の譲渡に会社の承認を要するというだけでは、上記の要件を満たすことにはなりません。また、外国企業の株式報酬についても、日本の税法上の要件と契約内容を照合する必要があります。

株式の交付時と譲渡制限解除時

 特定譲渡制限付株式の交付に係る経済的利益は、原則として、交付時ではなく譲渡制限が解除された時に、その解除日の株式の価額により課税されます。勤務の対価として受け取る場合は、通常、給与所得となります(所令84①、所基通23~35共-5の2・5の3)。

 上場株式の評価は、原則として公表された最終価格、通常は終値を基礎とします。当日に最終価格がない場合や、非上場株式等の場合には、所定の評価方法を確認します(所基通23~35共-5の4)。

 例えば、100株の譲渡制限が解除され、解除日の1株当たりの価額が2,000円であれば、20万円が報酬としての課税対象となります。この20万円は、給与所得に該当する場合の給与収入の額であり、給与所得控除後の給与所得の金額とは異なります。

会社による無償取得と死亡時の例外

 勤務条件等を満たさず、交付法人が株式を無償で取得することとなった場合、その株式の交付に係る経済的利益には課税されません(所基通23~35共-5の3注2)。

 譲渡制限の解除前に受給者が死亡した場合には、例外があります。死亡時に、会社が株式を無償で取得する事由に該当しないことが確定しているものは、死亡日における株式の価額が亡くなった本人の収入となります。制限解除前の死亡であれば一律に同じ処理になるわけではありません(所令84①、所基通23~35共-5の3)。

RSUの課税時期

 通常のRSUでは、ユニットの付与後も勤務条件等を満たさなければ失効するため、付与だけでは株式報酬に係る収入の原因となる権利が確定していません。その後、契約上の条件を満たして株式等の取得に係る権利が確定した時点で、経済的利益を収入に計上します(所法36①②、平成24年2月10日裁決・裁事86集、東京地裁平成28年1月21日判決・税資266号順号12784)。

 ここで確認する日には、付与日、権利確定日、株式転換日、株式交付日及び証券口座への入庫日があります。名称が似ていても、それぞれの法的な意味は契約によって異なります。

 平成24年2月10日裁決では、権利確定後も株式転換前には契約上の取消しの余地がある制度について、ユニットが株式に転換された日が収入すべき時期とされました。株式が証券口座に入庫した日や、取引制限が解除された日まで課税を繰り延べるという主張は認められていません(平成24年2月10日裁決・裁事86集)。

 東京地裁平成27年9月30日判決でも、株式転換日を基準に収入を計上することが認められ、東京高裁平成28年4月14日判決で控訴が棄却されました。その後の最高裁第三小法廷平成29年1月10日決定は、上告理由が法定の上告事由に当たらないとして上告を棄却したものです(税資265号順号12728、税資266号順号12842、税資267号順号12950)。

 したがって、権利確定日と株式交付日等が異なる場合は、その間に残る取消条件や、株式の受領を請求できる権利の内容を確認します。売却可能となった日や口座に表示された日を、そのまま課税日とすることはできません。

RS・RSUの所得区分(給与・退職・事業・雑)

 RS・RSUによる経済的利益の所得区分は、受給者と会社との関係、報酬を与える目的及び退職との関係により判断します。役員・従業員の勤務報酬であれば通常は給与所得ですが、退職給付や、雇用関係によらない業務の報酬では、所得区分が異なります。

 以下のRSは、税法上の特定譲渡制限付株式に該当するものを指します。RSUは、ユニットを通じて株式等を取得する通常の株式報酬を前提とし、その報酬の実質により所得区分を判断します。

所得区分RSの場合RSUの場合
給与所得雇用契約又はこれに類する関係に基づき、役員・従業員の勤務報酬として交付された場合役員・従業員の勤務や業績に対する報酬として付与され、その経済的利益を受ける場合
退職所得雇用契約等に基因して交付されたRSの譲渡制限が、受給者の退職に基因して解除されたと認められる場合退職を原因とする給付で、継続勤務への報償・労務の対価の後払い、一時の給付という退職所得の実質を備える場合
事業所得雇用契約等によらず、個人が営む事業の業務に関連して交付された場合雇用契約等によらず、個人が営む事業の業務の報酬として付与され、その経済的利益を受ける場合
雑所得雇用契約等によらない業務に関連する交付で、その業務が事業と認められない場合。また、給与・退職・業務関連の区分に該当しない交付は原則として雑所得雇用契約等によらない業務の報酬で、その業務が事業と認められない場合など、給与・退職・事業等の他の所得に該当しない役務報酬

 RS・RSUは株式報酬制度の呼称です。税法上の特定譲渡制限付株式への該当性は、制度の名称ではなく、役務対価性、処分制限及び無償取得事由等の法令上の要件により判断します(所令84①②)。

 特定譲渡制限付株式及び承継譲渡制限付株式については、所得区分の具体的な取扱いが通達に示されています。通常のRSUや、これらに該当しないRSについても、適用される法令・通達を確認した上で、報酬の実質に応じて所得区分を判断します。特定RSを含め、所得区分の根拠となるのは所得税法の各所得の規定であり、RS・RSUという名称だけで所得区分や適用規定が決まるわけではありません(所基通23~35共-5の2、所法27①・28①・30①・35①)。

給与所得となる場合

 RSでは、雇用契約又はこれに類する関係に基づいて株式が交付された場合、原則として給与所得となります。例えば、従業員に対する賞与や、取締役の職務執行の対価としてRSを交付する場合です(所基通23~35共-5の2)。

 RSUでも、従業員の勤務や業績、取締役の職務執行に対する報酬として付与される場合、その経済的利益は通常、給与所得となります。現金の賞与に代えて株式報酬を受ける場合も、報酬としての性質により判断します(所法28①)。

 外国親会社から日本子会社の役員・従業員に支給される株式報酬についても、外国親会社との直接の雇用契約の有無だけで判断することはできません。東京地裁平成17年12月16日判決では、外国親会社のRSによる利益が職務の対価として給与所得に該当すると判断されています(同判決・訟月53巻3号871頁)。

退職所得となる場合

 RSでは、雇用契約等に基因して交付された株式について、受給者の退職に基因して譲渡制限が解除されたと認められる場合、退職所得となります。例えば、役員の退任日を制限期間の満了日とする制度について、大阪国税局の文書回答事例では、照会の事実関係を前提に退職所得となることが認められています(所基通23~35共-5の2、大阪国税局令和元年6月25日文書回答事例)。

 この取扱いは、雇用契約又はこれに類する関係に基づく報酬についてのものです。外部の個人事業主との業務委託契約が終了したというだけで、退職所得になるものではありません。

 RSUでは、退職所得に当たるかを、退職給付としての実質から判断します。原則として、退職によって初めて給付されるものか、継続的な勤務に対する報償又は労務の対価の後払いという性質を持つか、一時の給付としての性質を持つか等を確認します。退職給付として新たにRSUを付与する制度であれば、付与目的や契約内容に照らして、これらの要素を検討します(所法30①、所基通30-1)。

 退職後に株式を受け取ったという事実だけでは、退職所得とは判定できません。在職中の勤務報酬として付与されたRSUが、退職後に権利確定する場合は、給与所得となることがあります。

 令和3年7月12日裁決(東裁(所)令3第4号)では、在職中に付与されたRSUについて、退職時の新規付与や契約変更が認められず、既存の規定に従って退職後も権利が確定しました。このため、退職によって初めて給付されたものではないとして、給与所得と判断されています。収入すべき時期も、退職日ではなく各権利確定日とされました。

 名古屋地裁平成26年5月29日判決では、退職によってRSUの権利確定時期が前倒しされた場合でも、在職中の業績に基づく賞与としての性質などから、給与所得と判断されました。退職時の前倒しという条件に加えて、報酬の性質を確認する必要があります(同判決・税資264号順号12480)。

 RSについても、平成23年2月1日裁決及び東京地裁平成24年7月24日判決では、在職中の業績に応じて付与された株式の退職後の制限解除について、給与所得と判断されています。これらは平成28年の制度整備前の事案であり、当時の法令と契約内容を前提とした判断です(平成23年2月1日裁決・裁事82集、東京地裁平成24年7月24日判決・税資262号順号12010)。

令和3年7月12日裁決の事例

 この裁決では、従業員が在職中に外国親会社から付与されたRSUについて、会社都合による退職後も、従前の規定に従って毎年一部ずつ権利が確定し、株式を取得しました。

 退職に際してRSUが新たに付与された事実や、付与契約を変更した事実は認められていません。退職後もRSUが失効しなかったのは、既存の規定に定める条件を満たしたためであり、退職によって初めて給付されたものではないとして、給与所得と判断されました(令和3年7月12日裁決・東裁(所)令3第4号)。

 また、退職時に失効しないこととなっただけでは、直ちにRSUに係る権利が確定したとはいえないとして、収入すべき時期は、規定書に定められた各権利確定日とされました。

 退職に基因して譲渡制限が解除される特定譲渡制限付株式については、退職所得となる取扱いもあります。退任日を制限期間の満了日とする制度に関する大阪国税局の文書回答事例でも、その照会事実を前提に、受給者の所得は退職所得になるとされています。付与目的、解除条件及び退職との因果関係を確認する必要があります(所基通23~35共-5の2、大阪国税局令和元年6月25日文書回答事例)。

事業所得となる場合

 RSでは、雇用契約等によらず、個人が営む事業の業務に関連して株式が交付された場合、事業所得となります。例えば、個人でコンサルティング事業を営む外部専門家が、業務委託契約に基づく報酬として特定RSを受け取る場合です(所法27①、所基通23~35共-5の2)。

 RSUでも、制度が外部の役務提供者への付与を対象としており、個人が営む事業の業務に対する報酬として付与される場合、その経済的利益は事業所得となります。金銭で支払われる事業報酬を株式報酬に置き換えた場合も、事業から生じる収入として判断します(所法27①・36①②)。

 ここで重要なのは、受給者が個人事業主であるという肩書だけではなく、その株式報酬が実際にその事業の業務に関連するものかという点です。個人事業と並行して会社の従業員として働いている場合、その勤務に対する株式報酬は給与所得として判断します。

雑所得となる場合

 RSでは、雇用契約等によらない業務に関連して交付された場合で、その業務が事業と認められないときは雑所得となります。また、雇用契約等に基因する交付及び個人の業務に関連する交付のいずれにも該当しない場合は、原則として雑所得とする取扱いがあります(所基通23~35共-5の2)。

 RSUでも、雇用契約等によらない業務の報酬で、その業務が事業と認められない場合など、他の所得区分に該当しない役務報酬は雑所得となります。例えば、会社員が勤務先とは別の会社に独立して助言等を行い、その報酬としてRSUを受ける場合、その助言業務が事業と認められなければ雑所得として判断します(所法35①)。

 事業所得と雑所得の区分は、RS・RSUという報酬の形式ではなく、その所得を得るための活動が社会通念上の事業に当たるかにより判定します。独立性、営利性、継続性、活動の規模、帳簿書類の保存状況等を確認するため、「副業だから雑所得」「開業届を出しているから事業所得」といった事情だけでは判断できません(所基通35-2及び国税庁の同通達解説)。

 以上は、株式報酬を受ける段階の所得区分です。その後の株式売却による所得は、株式等の譲渡に関する課税として別に計算します(措法37の10・37の11)。

株式報酬の評価と外貨の円換算

 RSUによって取得する上場株式の評価について、会社の報酬明細に記載された評価額が、そのまま日本の所得税の計算に使えるとは限りません。東京地裁平成28年1月21日判決では、株式転換日の終値による評価が認められています(所法36②、同判決・税資266号順号12784)。

 外貨建ての給与収入は、原則として収入に計上すべき日の為替相場の仲値、いわゆるTTMにより円換算します。株式報酬の課税日と為替換算日を対応させ、金融機関名、適用レート及び株価の資料を保存しておきます(所法57の3①、所基通57の3-2)。

 例えば、課税日に100株を取得し、1株の評価額が50米ドル、適用するTTMが1米ドル150円であれば、給与収入に算入する額は75万円です。

  • 100株 × 50米ドル × 150円 = 750,000円

 株式を売却した場合の譲渡代金等の円換算は、報酬の円換算とは別に、株式譲渡に適用される取扱いを確認します。外貨を日本円に換えていなくても、日本の申告では円換算による所得計算が必要です。

株式売却時の取得費

報酬としての課税と株式売却による課税

 特定譲渡制限付株式の取得価額は、原則として譲渡制限解除日の価額です。給与等として課税される価額が、その後の株式売却に係る取得費の基礎になります(所令109①二、措通37の10・37の11共-9)。

 RSUにより取得した株式についても、通常は報酬として課税対象となった株式の時価が取得費の基礎になります。無償で株式を受け取ったという理由だけで、取得費をゼロにすることは適切ではありません(所令109、国税庁タックスアンサーNo.1464)。

 株式売却による所得は、売却代金から取得費及び売却手数料等を差し引いて計算します。一般株式等と上場株式等は区分して申告分離課税の対象となります(措法37の10・37の11)。

 先ほどのRSの例で、取得価額2,000円の株式100株を1株2,500円で売却し、手数料がなく、同一銘柄の他の株式を保有していないとすると、株式売却による所得は5万円です。

  • 売却代金250,000円 − 取得費200,000円 = 50,000円

同一銘柄の株式を別に保有している場合

 同一銘柄の株式を複数回取得して一部を売却する場合、譲渡所得等に該当する取引の取得費は、原則として総平均法に準ずる方法で計算します(所令118①、国税庁タックスアンサーNo.1464・No.1466)。

 ただし、譲渡制限が解除されていない特定譲渡制限付株式は、制限期間中の同一銘柄株式の取得費の平均計算に含めません。解除日の価額が取得価額となるため、制限期間中は取得価額が確定していないからです(所令109①二、国税庁質疑応答事例「特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)に係る譲渡制限期間中の取得費の計算」)。

 解除後は、その価額を取得費計算に反映します。特定口座内の株式と一般口座等の株式では、取得費計算の管理単位が異なるため、全ての口座の株式を一括して平均するわけではありません(措法37の11の3)。

売却損が出た場合

 報酬として給与所得が生じた後に株価が下落し、売却損が出ても、その株式の譲渡損失を給与所得から差し引くことはできません。給与としての課税額と、株式の譲渡損益は、それぞれの制度に従って計算します(措法37の10・37の11、国税庁タックスアンサーNo.1465)。

 上場株式等の譲渡損失には、一定の配当等との損益通算や3年間の繰越控除がありますが、対象となる譲渡方法や申告の要件があります。特に、国内登録のない外国証券会社を通じた国外での売却については、上場株式であっても、この損益通算・繰越控除の特例の対象にならないことがあります(措法37の12の2、国税庁タックスアンサーNo.1474)。

源泉徴収と確定申告

国内で給与等として支払われる場合

 居住者に対して国内で給与等を支払う者は、原則として、その支払の際に所得税等を源泉徴収します。株式の発行法人と給与等の支払者が異なる場合もあるため、源泉徴収義務は、実際の支払関係を確認して判断します(所法183①)。

 給与等の源泉徴収税額の納付期限は、原則として支払月の翌月10日です。納期の特例の適用を受けている場合などは、納付期限が異なります(所法183①、216)。

 株式報酬では現金が支給されないため、給与からの控除や受給者からの現金の預かりなどにより、納税資金を確保する対応が必要となることがあります。退職所得に該当する場合には、給与所得とは異なる源泉徴収の計算・手続によります(所法199以下)。

外国親会社から直接受け取る場合

 外国親会社から国外で直接支払われ、日本の源泉徴収義務のない給与等に該当する場合には、通常、受給者が確定申告により精算する必要があります。国内の勤務先で年末調整を受けていても、外国親会社からの株式報酬が、その年末調整に含まれているとは限りません(所法120①・121①、国税庁タックスアンサーNo.1900)。

 給与所得者の「20万円以下なら申告不要」という取扱いには、給与の全てが源泉徴収の対象となることなどの条件があります。源泉徴収義務のない外国親会社から受け取る給与等について、金額が20万円以下という理由だけで、この取扱いを適用することはできません(所法121①、国税庁タックスアンサーNo.1900)。

 外国で税金が差し引かれている場合は、その税の内容や課税対象期間を確認します。外国で徴収された税金が、全て日本の源泉徴収税額として控除できるわけではなく、外国税額控除等の要件に従った検討が必要です(所法95)。

特定口座への受入れ

 平成30年(2018年)4月1日以後に譲渡制限が解除される特定譲渡制限付株式等については、一定の要件を満たすものを特定口座に受け入れる制度が設けられています(平成30年改正措令附則9①、財務省「平成30年度税制改正の解説」175~177頁)。

 例えば、取得時から同一の金融商品取引業者等の所定の口座で継続して管理され、譲渡制限が解除された株式の全てを所定の方法で特定口座へ振り替えることなどが要件となります。持株会を通じて取得する場合にも、その制度に応じた受入要件を確認します(措令25の10の2、東京国税局令和4年6月23日文書回答事例)。

 この制度により特定口座へ受け入れる場合、取得日として管理される株式の当初取得日と、取得価額を決める譲渡制限解除日は異なることがあります。両者を混同せず、証券会社が必要とする証明資料を確認します。

 海外の証券口座で取得・保管したRSU株式等を、希望すればそのまま日本の特定口座に移せるという制度ではありません。また、特定口座に受け入れられた場合でも、その口座で管理される株式売却に係る課税と、RS・RSUによる報酬の課税は別に確認する必要があります。

会社側の法人税の取扱い

 受給者の所得税の処理と、会社側の損金算入の処理は、別々に確認する必要があります。特定譲渡制限付株式を対価とする役務提供費用については、法法54の要件に該当する場合、給与等課税額が生ずることが確定した日の属する事業年度に費用を帰属させる特例があります(法法54①)。

 ただし、この特例は、役員給与の損金算入要件を全て満たしたことを意味するものではありません。役員に対するRS等については、事前確定届出給与又は一定の業績連動給与等への該当性を確認し、不相当に高額な部分の損金不算入等も検討します。株式による事前確定届出給与には、市場価格のある株式等であることなど、適格株式の要件もあります(法法34①②、国税庁タックスアンサーNo.5211)。

 一定の特定譲渡制限付株式による事前確定届出給与について、届出を不要とするためには、役員の職務執行開始日から1月を経過する日までに株主総会等の決議による定めをし、その決議日から1月を経過する日までに交付する旨を定め、実際にもその定めに従って交付すること等が必要です。対象株式や定めの内容についても要件があります(法令69③一、国税庁タックスアンサーNo.5211)。

 また、将来の所定期間の役務提供の対価として交付され、その期間の報酬費用として損金経理される一定のRS等は、受給者の所得税上は退職所得に該当しても、法人税上の退職給与には該当しない取扱いがあります。この取扱いには、業績連動給与の除外や、退職給付引当金等の繰入れを除くなどの条件があるため、所得税上の退職所得を一律に法人税上の退職給与から除外するものではありません(法基通9-2-27の2)。

海外赴任・帰国を伴う場合

 RS・RSUの課税日が海外赴任中に到来する場合には、その日の居住者・非居住者の区分と、報酬の対象となる勤務期間を確認します。非居住者であっても、日本で行った勤務に対応する給与等が国内源泉所得として課税されることがあります(所法161①十二イ、所基通161-41)。

 平成24年9月26日裁決では、RSU株式を取得した時点で非居住者であったことが認められましたが、RSUの付与日から退職日までの期間に含まれる国内勤務に対応する部分は、日本で課税されるとされました。取得日に非居住者であれば全額が日本で非課税になる、という判断ではありません(平成24年9月26日裁決・裁事88集)。

 同裁決の配分に用いられた期間は、その制度と退職までの事実関係に応じたものです。全てのRSUについて一律に同じ期間を使うことはできません。役員に関する国内源泉所得の規定や、租税条約による取扱いも含め、個別に検討する必要があります(所法161・162、所令285、所基通161-41・161-42)。

申告前に確認する資料

 株式報酬の明細だけでは、課税時期や所得区分を判断できない場合があります。次の資料を対応させて確認すると、申告漏れや取得費の計算誤りを防ぎやすくなります。

  • 株式報酬制度の規定、付与契約書及び変更契約書。
  • 付与日、権利確定日、譲渡制限解除日、株式転換日及び交付株数が分かる明細。
  • 失効・無償取得・退職時の取扱いを定めた契約条項。
  • 課税日の株価、為替レート及び報酬として計上した金額の計算資料。
  • 給与・退職所得の源泉徴収票、外国の税金に関する資料。
  • 証券口座の取引履歴、同一銘柄株式の取得費の記録及び株式売却明細。
  • 海外勤務がある場合は、出入国日、勤務場所、対象勤務期間及び生活の本拠に関する資料。

主な裁判例・裁決例と根拠資料

 平成28年の制度整備より前のRS判決・裁決は、当時の法令と各報酬契約を前提とした判断です。現行の特定譲渡制限付株式への該当性は、現在の要件に沿って確認します。

裁判例・裁決例主な論点
東京地裁平成17年12月16日判決(訟月53巻3号871頁、税資255号順号10237)外国親会社のRSによる利益の給与所得該当性と、譲渡制限解除時の課税
平成23年2月1日裁決(裁事82集)/東京地裁平成24年7月24日判決(税資262号順号12010)在職中に付与されたRSが退職後に解除された場合の給与所得該当性
平成24年2月10日裁決(裁事86集)ストック・ユニットの株式転換日と、口座入庫日・取引制限解除日の区別
平成24年9月26日裁決(裁事88集)非居住者が取得するRSU株式に係る国内源泉所得
名古屋地裁平成26年5月29日判決(税資264号順号12480)退職に伴うRSUの権利確定の前倒しと、給与所得・退職所得の区分
東京地裁平成27年9月30日判決(税資265号順号12728)/東京高裁平成28年4月14日判決(税資266号順号12842)/最高裁第三小法廷平成29年1月10日決定(税資267号順号12950)株式転換日の収入計上、株式評価及び円換算。最高裁は法定上告事由に当たらないとして上告棄却
東京地裁平成28年1月21日判決(税資266号順号12784)株式報酬の収入すべき時期と終値による評価
令和3年7月12日裁決(東裁(所)令3第4号、TAINS F0-1-1381)退職後も既存の規定に従って権利確定するRSUの給与所得該当性。情報公開による開示資料
  • 所法28・30・36・57の3・95・120・121・161・183、所令84・109・118。
  • 所基通23~35共-5の2・5の3・5の4、所基通57の3-2、所基通161-41。
  • 国税庁質疑応答事例「特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)に係る譲渡制限期間中の取得費の計算」(譲渡所得目次一覧掲載)。
  • 国税庁タックスアンサーNo.1464「譲渡した株式等の取得費」、No.1466「同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費」、No.1465「株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い」、No.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」、No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」。
  • 大阪国税局令和元年6月25日文書回答事例、東京国税局令和4年6月23日文書回答事例。
  • 法法34・54、法令69、法基通9-2-27の2及び国税庁の解説、国税庁タックスアンサーNo.5211。
  • 財務省「平成28年度税制改正の解説」所得税法等の改正(特定譲渡制限付株式の制度整備)、「平成29年度税制改正の解説」法人税法等の改正(役員給与)、「平成30年度税制改正の解説」175~177頁(特定口座への受入れ)。

リストリクテッド・ストック・ユニットに係る経済的利益は退職所得ではなく給与所得に該当するとされた事例-令和3年7月12日裁決(東裁(所)令3第4号)(棄却)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 審査請求人Xは、平成17年9月、A社に入社し、平成27年7月に同社を退職した。Xの退職に当たっては会社都合退職の手続がとられている。

② A社の親会社である外国法人B社は、長期の企業目的達成のためのインセンティブを提供し、優秀な従業員等を誘致・確保し、普通株式や現金報奨を獲得する機会を提供することを目的として、「成功に対する貢献」などを基礎としてリストリクテッド・ストック・ユニット(以下「RSU」という。)を付与する制度(以下「本件RSU制度」という。)を実施している。
なお、RSUは、B社の普通株式1株に等しい価値を持つ譲渡制限付株式ユニットであり、RSUを付与された従業員等は、RSUが所定の時期に権利確定(vest)した際に、当該RSUの数に等しいB社の普通株式を取得することができる。
 本件RSU制度の概要は、以下のとおりである。

(イ)RSUは、「RESTRICTED STOCK UNIT AGREEMENT」と題する文書(以下「本件RSU規定書」という。)等に定められた条件を前提として、その一定数が対象者に対して付与される。なお、従業員に対しては、本件RSU制度上、B社の人事報酬委員会がRSUを管理・付与することとされている。

(ロ)RSUを付与された従業員は、以下の一ないし三の条件に基づき当該RSUに関する制限が失効する時まで、当該RSUについて売却、移転、譲渡、抵当に入れることその他の処分行為の制限(以下「本件譲渡制限」という。)がされる。なお、B社は、従業員が雇用終了後にB社とのあらゆる契約に違反する場合、本件譲渡制限の対象となるRSUに関する報奨の全て若しくは一部を取り消し、又は当該報奨から得られた株式又は金額の払戻しを求めることができる。
一 従業員の雇用が継続している場合、RSUの付与日の1年後から1年ごとにRSUの4分の1ずつ権利確定(vest)し、同時に、本件譲渡制限が解除される。
二 RSUの権利確定(vest)及び本件譲渡制限が解除される前に雇用が終了した場合、一定の場合を除き、RSUは没収される。
三 上記二にかかわらず、雇用終了の理由が、会社側が特別退職金等を支払う場合の退職に該当するとき、RSUは上記一に基づき引き続き権利確定(vest)し、本件譲渡制限が解除される。ただし、本件RSU規定書に記載された要件を遵守しない場合は、当該RSUは没収される。

(ハ)権利確定(vest)したRSUは、本件RSU規定書に定める権利確定日(vesting date)に、振替決済方式で交付される普通株式の形で決済される。

③ Xは、平成25年から平成27年までの間に、本件RSU規定書等に基づき、平成25年2月に3,467ユニットを、平成26年2月に2,056ユニットを、平成27年2月に1,631ユニットのRSUを付与された〔以下、Xが付与されたRSUを「本件RSU」といい、このうちXが退職する直前まで権利が確定(vest)せず、本件譲渡制限が解除されていなかったRSUを「本件未確定RSU」という。〕。
 B社は、平成27年2月以後、Xに対し、RSUを付与していない。

④ 本件未確定RSUは、XがA社を退職した後も、没収されなかった。本件RSU規定書には、退職に基因してRSUを付与する旨の規定はなく、XがA社を退職した際に、XとA社との間で、本件RSUに係る付与契約変更書などが改めて作成された事実はない。
 A社は、Xの退職に際して、Xに対し退職金として、退職一時金及び特別退職金を支払った。

⑤ Xは、平成28年分の所得税等の確定申告書を提出しなかった。Xは、平成29年分及び平成30年分の所得税等について、法定申告期限内に確定申告書を提出したが、各確定申告書には、本件未確定RSUが権利確定した場合に得られる経済的利益(以下「本件経済的利益」という。)に係る所得について記載されていなかった。 ⑥ 原処分庁は、本件経済的利益は平成28年分ないし平成30年分(以下「本件各年分」という。)の給与所得に該当するとして、令和2年6月、平成28年分の所得税等の決定処分等並びに平成29年分及び平成30年分の所得税等の各更正処分等をした。

(2)本件の主な争点

① 本件経済的利益は、給与所得又は退職所得のいずれに該当するかである。

② 本件経済的利益の収入すべき時期はいつかである。

(3)裁決要旨(棄却)

① ある金員が、所得税法30条1項にいう「退職所得、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるというためには、それが、(イ)退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、(ロ)従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、(ハ)一時金として支払われることの3つの要件を備えることが必要であり、また、同項にいう「これらの性質を有する給与」に当たるというためには、それが、形式的には上記(イ)ないし(ハ)の各要件の全てを備えていなくても、実質的にみてこれらの要件の要求するところに適合し、課税上、「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものであることを必要とすると解すべきである。

② 本件RSU制度は、B社からB社の従業員等に対して、B社の「成功に対する貢献」などを基礎として、B社の株式を支給する制度であり、すなわち、B社における従業員等報奨制度であると認められる。そして、Xは、A社に入社後、平成27年7月に同社を退職するまでの間、継続して同社に勤務し、本件RSUを付与された年の前年の業績に対して本件RSU規定書に基づき本件RSUを付与され、その結果、Xは本件経済的利益を得たのであるから、当該利益は、XのA社への職務の遂行に対する対価としての性格を有することが明らかである。したがって、本件経済的利益は、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたものと認められ、給与所得又は退職所得のいずれかに該当することとなる。

③ 本件未確定RSUは、Xの退職によっても没収されていない。そして、XがA社を退職した際に作成された雇用保険被保険者資格喪失確認通知書には資格喪失原因がA社の都合による離職である旨記載されており、実際にA社からの退職の際に特別退職金の支給を受けている。これらの事実関係からすれば、Xの退職は、「会社側が特別退職金等を支払う場合の退職」に該当すると認められる。したがって、本件未確定RSUは、雇用が継続している従業員が有するRSUと同様の条件で権利が確定(vest)し、本件譲渡制限が解除されていくことになる。他方で、本件RSU規定書には、従業員等の退職に基因してRSUを付与する旨の規定は存在せず、実際にもRSUを付与する権限を唯一有しているB社が、Xの退職に際して、XにRSUを付与した事実はない。したがって、Xが退職したにもかかわらず本件未確定RSUが没収されなかった原因は、Xが本件RSU規定書の各条件を満たしたことであったといえる。

④ 本件経済的利益は、本件RSU規定書の条件を満たすことによって得たといえるのであって、Xの退職、すなわち雇用関係の終了という事実によって初めて給付されたものではないし、一時金として支払われたものでもない。そうすると、本件経済的利益は、上記①の(イ)及び(ハ)の各要件を満たしておらず、また、実質的にみて上記各要件の要求するところに適合するともいえない。したがって、本件経済的利益は、退職所得には該当せず、給与所得に該当する。

⑤ 所得税法36条1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、その年において「収入すべき金額」(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨規定している。これは、現実の収入がなくても、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとしてその権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用したものと解すべきであり、ここにいう収入の原因となる権利が確定する時期は、それぞれの権利の特質を考慮し決定されるべきものである(最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決・民集32巻1号43頁参照)。

⑥ 本件RSU規定書に基づき付与されたRSUは、雇用の継続等の一定の要件を満たすことによって、RSUに基づく権利が確定(vest)して没収されないものとなり、同時に譲渡制限が解除され、権利確定したRSUは、RSU規定書に定める権利確定日(vesting date)に振替決済方式で交付される普通株式の形で決済されるものである。以上のようなRSUの特質を考慮すれば、RSUから生じる経済的利益について、その収入の原因となる権利が確定したといえる時期は、RSU規定書に定められた権利確定日であるといえる。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry

error: Content is protected !!