概要
領収書やレシートを受け取るときは、宛名・日付・金額に加え、取引内容やインボイスとして必要な記載事項を確認しましょう。また、受け取った後の保存方法も大切です。
特に、所得税・法人税で経費等として認められるかという問題と、消費税の仕入税額控除を受けられるかという問題は、分けて判断する必要があります。
本稿は、2026年10月18日現在の制度に基づいています。消費税については、主に一般課税で仕入税額控除を受ける場合を説明します。
領収書の有無だけで経費になるかは決まりません
所得税・法人税では、支出の実態、事業との関係、金額、計上時期などを確認します。領収書は重要な証拠ですが、領収書がある私的な支出を、そのまま事業の経費にできるわけではありません。また、固定資産の購入代金など、支払った金額の全額を直ちに経費にできないものもあります(所法37①・45①一、法法22③等)。
反対に、領収書がない場合でも、契約書、請求書、振込記録などから取引の実態を説明できることがあります。ただし、消費税の仕入税額控除には、原則として、法定事項を記載した帳簿とインボイス等の保存が必要です。経費の支払事実を説明できる資料が、そのままインボイスの代わりになるとは限りません(消法30⑦~⑨)。
領収書・レシートで確認したい6つの事項
領収書もレシートも、必要事項を満たしていればインボイスとして使用できます。「手書きの領収書」という名称や形式が優先されるわけではありません(消基通1-8-1、国税庁「インボイスQ&A」問26)。
| 確認する事項 | 通常のインボイスで必要な内容 |
|---|---|
| 発行者 | 氏名または名称と登録番号 |
| 取引年月日 | 商品の販売やサービスの提供を行った年月日 |
| 取引内容 | 商品・サービスの内容。軽減税率の対象である場合は、その旨 |
| 税率ごとの金額と税率 | 税率ごとに区分して合計した税抜金額または税込金額と、適用税率 |
| 消費税額等 | 税率ごとに区分した消費税額等 |
| 宛名 | 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 |
表示されている金額が、実際の取引や支払内容と一致しているかも確認してください。
上表は、通常の適格請求書の記載事項です。小売店や飲食店などが交付する「適格簡易請求書」では、宛名を省略でき、適用税率と消費税額等はいずれか一方の記載で足ります(消法57の4①②)。
宛名は会社名などを基本に。ただし「上様」でも使える場合があります
通常のインボイスでは、買手の氏名または名称が必要です。法人の経費であれば会社名、個人事業であれば本人の氏名や事業者を特定できる屋号など、取引の主体が明らかになる宛名で発行してもらいましょう。
一方、小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、不特定かつ多数の者が利用する駐車場業など、法令で定める事業については、適格簡易請求書を交付できます。適格簡易請求書は宛名を必要としないため、宛名が「上様」または空欄であっても、他の必要事項を満たしていれば、消費税の仕入税額控除のための書類として使用できます(消法57の4②、消令70の11)。
したがって、適格簡易請求書に該当するレシートを受け取った場合に、宛名入りの手書き領収書へ変更してもらう必要はありません。
なお、会社の費用を従業員が立て替え、適格簡易請求書に従業員名が記載されている場合は、従業員名簿等と併せて保存するなど、会社が負担する費用であることを確認できるようにします(国税庁「インボイスQ&A」問94-2)。
日付は、実際の取引と一致しているか確認します
インボイスで必要なのは、原則として、商品を販売した日やサービスを提供した日などの取引年月日です。領収日や発行日が書かれていても、取引年月日と異なる場合には、他の書類と併せて必要事項を確認できるようにしましょう(消法57の4①二、消基通1-8-1)。
日付を空欄にしてもらったり、実際と異なる日付で発行してもらったりすることは避けてください。
「お品代」だけでなく、取引内容が分かる記載を確認します
何を購入したか分からない「お品代」だけの記載よりも、「文房具代」「書籍代」「飲食代」など、取引内容が分かる記載が望ましいでしょう。必ずしも全商品の名称を一つずつ記載する必要はありませんが、課税対象となる取引か、軽減税率の対象かなどを判別できることが必要です(消法57の4①三・②三、国税庁タックスアンサーNo.6625)。
領収書だけでは内容が分からない場合でも、相互の関連が明確な明細書や納品書などと併せて、インボイスの記載事項を満たすことができます。関連する書類をまとめて保存しましょう(消基通1-8-1)。
接待などの支出については、領収書とは別に、相手先、参加者、目的などを記録しておくと、事業との関係を説明しやすくなります。
発行者の住所と、登録番号は区別して確認します
発行者の住所や電話番号は、相手方の確認に役立ちます。ただし、住所・電話番号・社判は、インボイスの法定記載事項ではありません。インボイスとして重要なのは、発行者の氏名または名称と登録番号など、法令で定められた事項です(消法57の4①②)。
受け取った適格請求書等に登録番号などの不足・誤りがある場合は、原則として、発行者に訂正した書類の交付を求めます。買手が無断で追記してインボイスを完成させることはできません。買手が仕入明細書等を作成し、売手の確認を受けて保存する方法も認められます(消法30⑨三、国税庁「インボイスQ&A」問92)。
5万円以上でも収入印紙が不要な場合があります
営業に関して作成する紙の金銭等の受取書は、原則として、記載金額が5万円以上であれば印紙税の対象となります。ただし、領収書の金額が5万円以上というだけで、必ず収入印紙が必要になるわけではありません(印法別表第一の十七)。
| 領収書などの状況 | 印紙税の取扱い |
|---|---|
| 営業に関して交付する、記載金額5万円以上の紙の金銭等の受取書 | 原則として課税 |
| クレジットカード払いである旨を明記した領収書 | 金銭等の受取書に該当せず、印紙は不要 |
| 電子データだけで交付し、紙の領収書を交付しない場合 | 電子データ自体に印紙税はかからない |
| 消費税等を除いた記載金額が5万円未満となる場合 | 所定の区分記載等の要件を満たせば非課税 |
| 営業に関しない受取書 | 非課税 |
例えば、消費税の課税事業者が発行した領収書に「本体48,000円、消費税等4,800円、合計52,800円」と記載されている場合、印紙税の記載金額は48,000円となり、印紙税はかかりません。単に「税込52,800円」と記載されている場合とは取扱いが異なります。なお、免税事業者が作成する領収書については、消費税等に相当する金額を区分しても、その金額を除外できません(国税庁タックスアンサーNo.7124、同庁質疑応答事例「消費税及び地方消費税の免税事業者が作成する受取書」)。
印紙税の納税義務者は、原則として領収書などの作成者です。印紙の貼付の有無だけで、買手の経費算入や消費税の仕入税額控除が決まるわけではありません。必要な印紙がないと思われる場合は、発行者に確認しましょう(印法3①、所法37①、法法22③、消法30⑦~⑨)。
領収書を受け取れない場合はどうすればよいでしょうか
銀行振込の場合
請求書や契約書と、振込明細・通帳の記録などを併せて保存し、何の代金を、誰に、いつ支払ったかを明らかにします。銀行振込で支払った場合に、別途「領収書」という名称の書類を必ず取得しなければならないわけではありません。
ただし、振込記録だけでは、通常、インボイスの記載事項を満たしません。消費税の仕入税額控除を受ける場合は、原則として、取引先から交付されたインボイス等も保存します(消法30⑦~⑨)。
事務所家賃のように、毎月請求書や領収書が交付されない取引では、必要事項を記載した契約書と、振込記録や通帳などを組み合わせて保存する方法があります。既存の契約書に登録番号などが不足している場合には、貸主から不足事項の通知を受け、その通知も保存します。単に契約書があるというだけでは十分とは限りません(国税庁「インボイスQ&A」問95)。
なお、住宅の貸付けとして非課税となる家賃は、事務所家賃とは消費税の取扱いが異なり、インボイスの有無にかかわらず、その家賃に係る仕入税額控除の対象にはなりません(消法6①・別表第一十三)。
クレジットカード払いの場合
通常、クレジットカード会社の利用明細書だけでは、インボイスとしての保存要件を満たしません。原則として、購入先が発行するインボイスに該当するレシート・領収書なども保存します(消法30⑨一、国税庁「インボイスQ&A」問103)。
電車・バスなどの交通費の場合
税込3万円未満の一定の鉄道・バス・船舶による旅客運送は、公共交通機関特例の対象となり、必要事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます。現金で支払った場合だけの特例ではありません(消法30⑦、消令49①一イ、国税庁「インボイスQ&A」問42・105)。
交通費明細書などには、利用日、交通機関名、利用区間、金額、業務目的を記録し、帳簿にも必要事項と公共交通機関特例の対象である旨を記載しましょう。
3万円未満かどうかは、乗車券1枚ごとではなく、原則として1回の取引の税込合計額で判定します。また、タクシーや航空機は、この公共交通機関特例の対象ではありません。別の特例が適用されない場合は、原則としてインボイス等の保存が必要です(国税庁「インボイスQ&A」問42・43)。
交通系ICカードを使う場合も、チャージ額だけでなく、実際の利用内容を確認できるようにしておきましょう。
給料を現金で支払う場合
給与明細の会社控え、賃金台帳、現金出納帳などを保存します。実際に現金を渡したことを明らかにするため、従業員の受領署名などを残しておく方法も有用です。給与明細の会社控えだけで、常に現金の支払事実まで証明できるとは限りません。
なお、給与等を対価とする役務の提供は、消費税の課税仕入れから除かれています。給与は消費税の仕入税額控除の対象ではなく、インボイスも必要ありません(消法2①十二)。
領収書を紛失した場合
まずは、発行者に再発行の可否を確認しましょう。請求書、購入履歴、振込記録、取引内容のメモなども整理しておきます。
自作の出金伝票や経費精算書は、支出を説明するための補助資料になります。ただし、それだけでインボイスの代わりになるわけではありません。消費税については、再交付されたインボイスを保存するか、帳簿のみで控除できる特例などの適用があるかを確認します(消法30⑦~⑨)。
また、同じ取引についてレシートと領収書の両方がある場合や、領収書を再発行してもらった場合には、経費を二重計上しないように管理してください。
インボイスを保存しなくても控除できる例外と経過措置
一定規模以下の事業者に適用される「少額特例」
次の要件を満たす課税仕入れは、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます。仕入先がインボイスの登録をしていない事業者である場合も対象です(平成28年改正法附則53の2)。
- 買手の基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下であること
- 2023年10月1日から2029年9月30日までの間に行う課税仕入れであること
- 1回の取引の税込金額が1万円未満であること
基準期間は、個人事業者では前々年、法人では原則として前々事業年度です。特定期間は、個人事業者では前年の1月から6月、法人では原則として前事業年度開始の日から6か月間です。
1万円未満の判定は、商品1点ごとではなく、通常1回の取引として行う課税仕入れの合計額で行います。税込1万円ちょうどの取引は対象外です(国税庁「インボイスQ&A」問111・112)。
なお、少額特例は消費税の仕入税額控除に関するものです。所得税・法人税などの保存義務までなくなるわけではないため、受け取った領収書等を一律に廃棄してよいという意味ではありません。
免税事業者等からの仕入れに係る経過措置
インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについても、一定の帳簿と、区分記載請求書等と同様の事項を記載した領収書・請求書等を保存することで、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります(平成28年改正法附則52・53)。
| 課税仕入れを行った日 | 経過措置による控除割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | この経過措置による控除なし |
2026年10月1日からの控除割合は70%です。令和8年度税制改正により、従前予定されていた「2026年10月から50%」という取扱いが見直されています。上表の将来の割合も、成立済みの改正に基づくものです(平成28年改正法附則53①、国税庁「インボイスQ&A」問113)。
この経過措置を使う場合は、通常の帳簿の記載事項に加えて、「70%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記録します。
また、一の免税事業者等からの対象仕入れの年間または事業年度の合計額には上限があります。2026年10月1日以後に開始する課税期間では税込1億円を超える部分は対象外です。2024年10月1日から2026年9月30日までの間に開始する課税期間では、上限は税込10億円です(平成28年改正法附則52①・53①、令和8年改正法附則90③、国税庁「インボイスQ&A」問113)。
電子で受け取った領収書と、保存期間にも注意します
メールやウェブサイトで受け取った領収書はデータを保存します
所得税・法人税の帳簿書類の保存義務者が、メール添付のPDFやウェブサイトから取得する領収書などを電子取引として受け取った場合は、原則として、電子データを所定の要件に従って保存します。2024年1月以後の電子取引について、印刷した紙だけを残し、元のデータを削除する対応は避けてください(電子帳簿保存法7)。
消費税では、受け取った電子インボイスを整然とした形式で明瞭に印刷して保存することで、請求書等の保存要件を満たす取扱いがあります。しかし、これは所得税・法人税についての電子取引データの保存義務がなくなるという意味ではありません(消規15の5②、国税庁「インボイスQ&A」問85)。
紙で受け取った領収書についても、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たしている場合などを除き、単に写真を撮っただけで原本を廃棄しないようにしましょう(電子帳簿保存法4③)。
保存した書類は、税務調査で確認できるように整理します
消費税の仕入税額控除に係る帳簿とインボイス等は、原則として、その課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存します。消費税の申告期限の延長特例を適用する法人は、3か月を経過した日から7年間です。なお、消費税には、6年目・7年目は帳簿または請求書等のいずれか一方の保存でよい取扱いがあります(消令50①、消基通11-6-9、国税庁タックスアンサーNo.6625)。
ただし、他の税法上の保存義務も併せて確認します。例えば、法人税では欠損金が生じた一定の事業年度の帳簿書類について、10年間の保存が必要となる場合があります(国税庁タックスアンサーNo.5930)。
最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決では、調査担当職員の適法な提示要求に応じず、帳簿等を適時に提示できるように保存していたとはいえないとされた事案について、仕入税額控除の適用が否定されています。旧法に関する判決ですが、書類を受け取るだけでなく、必要なときに確認できる状態で整理・保存しておくことが重要です(平成13年〔行ヒ〕第116号)。
主な根拠資料
- 消費税法30⑦~⑨・57の4①②、消費税法施行令49①・50①・70の11
- 所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則52・53・53の2、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則90③
- 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和8年5月改訂)
- 国税庁「仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項(No.6497)」
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」
- 国税庁「金銭又は有価証券の受取書、領収書(No.7105)」「消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額(No.7124)」「クレジット販売の場合の領収書」
- 国税庁「電子帳簿等保存制度・電子取引関係」

