概要
百貨店などの小売業では、商品が顧客に売れた時点で仕入先から仕入れ、同時に顧客へ販売する「消化仕入」という取引形態が用いられます。
消化仕入について、会計上は販売額と仕入額の差額だけを収益に計上する場合があります。しかし、消費税まで差額だけを課税売上げにすればよいとは限りません。商品の仕入れ・販売なのか、販売を受託して手数料を受け取る取引なのかを、契約内容に基づいて区別することが重要です。
以下は、国内の法人間の取引と国内販売を前提に、2026年10月27日現在の取扱いを説明します。
消化仕入とは
一般的な消化仕入は、商品を店頭に並べた段階では小売業者の仕入れとせず、顧客への販売時に、仕入先から小売業者への販売と、小売業者から顧客への販売を行う取引です。
そのため、通常は、店頭にある未販売の商品について、仕入先が在庫を保有します。ただし、商品の所有権、保管中の損害、盗難、返品、値引き等の負担は、個々の契約内容を確認する必要があります。
「消化仕入」という名称だけで、すべての責任や会計処理が一律に決まるわけではありません。
会計上の「本人」と「代理人」の判定
収益認識会計基準を適用する場合
収益認識会計基準を適用する場合は、顧客に商品等を提供する前に、自社がその商品等を支配しているかどうかを判断します。
| 区分 | 会計上の収益の計上 |
|---|---|
| 本人に該当する場合 | 顧客に提供する商品等の対価を総額で計上 |
| 代理人に該当する場合 | 報酬・手数料又は販売額から他の当事者への支払額を控除した純額を計上 |
本人・代理人は、顧客に約束した特定の商品やサービスごとに判定します。主に、約束を果たす責任を誰が負うか、売れ残りや返品等の在庫リスクを誰が負うか、販売価格を決める裁量が誰にあるかを検討します。これらは支配を判断するための指標であり、一つの条件だけで機械的に結論を出すものではありません(収益認識適用指針39~47項)。
消化仕入は代理人に該当することがありますが、必ず代理人になるとは限りません。また、商品に対する法的所有権を一瞬取得したとしても、それだけで会計上の本人になるわけではありません(収益認識適用指針45項)。
なお、ここでいう「代理人」は会計上の区分です。会計上の代理人に該当することから、法律上も商品の売買がない取引になるわけではありません。
中小企業は採用する会計ルールも確認する
すべての中小企業に、収益認識会計基準に基づく純額表示が求められるわけではありません。
中小会計指針と中小会計要領は、それぞれ独立した会計ルールです。中小会計指針の2025年9月19日修正版では、収益認識会計基準の考え方を取り入れるかどうかは、引き続き検討事項とされています。
中小会計要領では、収益・費用は原則として総額で計上することとされています。商品の仕入れ・販売である消化仕入について、従来の会計方針に従って売上高と売上原価を総額で計上する中小企業が、消化仕入という理由だけで差額の収益計上へ変更する必要はありません。適用対象、採用する会計方針と取引の実態を確認して処理します(中小会計指針73・74項、中小会計要領Ⅱ・1)。
消化仕入の仕訳例
設例の前提
百貨店A社が、仕入先B社との消化仕入契約に基づき、商品1個を顧客に販売した場合を考えます。
- 顧客への販売価格:税抜20,000円、消費税等2,000円、税込22,000円
- B社からの仕入価格:税抜19,000円、消費税等1,900円、税込20,900円
- A社は収益認識会計基準を適用し、会計上は代理人に該当すると判断
- A社・B社はいずれも適格請求書発行事業者
- A社は消費税の一般課税を適用し、必要な帳簿・請求書等を保存
- A社は課税売上げのみを行い、当該仕入れについて全額の仕入税額控除を受けられる
- 標準税率10%の商品で、税抜経理を採用
以下は、国税庁「収益認識基準による場合の取扱いの例」の「ケース6 消化仕入」を、消費税率10%に置き換えた例です。勘定科目は例示です。
百貨店A社の仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 22,000円 | 買掛金 | 20,900円 |
| 仮払消費税等 | 1,900円 | 手数料収入 | 1,000円 |
| 仮受消費税等 | 2,000円 |
会計上の収益は、20,000円から19,000円を差し引いた1,000円です。一方、仮受消費税等2,000円と仮払消費税等1,900円は、それぞれ認識します。
ここで「手数料収入」という科目を使うのは、会計上の純額表示のためです。この科目名によって、消費税上も1,000円の販売手数料だけを課税売上げとする取引になるわけではありません。
仕入先B社の仕訳
B社がA社に商品を販売した取引について、税抜経理による仕訳は次のとおりです。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 20,900円 | 売上 | 19,000円 |
| 仮受消費税等 | 1,900円 |
このほか、B社では販売した商品の原価を、採用する記帳方法に応じて処理します。
法人税は、総額表示か純額表示かだけで所得が変わるわけではない
法人税では、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って収益や費用等を計算します(法法22④)。
上記の例では、会計上の収益を純額の1,000円とする処理について、国税庁のケース6は法人税も同じ取扱いを示しています。
| 表示方法 | 収益 | 対応する原価 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 総額表示 | 20,000円 | 19,000円 | 1,000円 |
| 純額表示 | 1,000円 | ― | 1,000円 |
このように、同じ取引について表示だけを変えても、利益は変わりません。ほかに会計・税務の差異がなければ、この表示の違いだけを理由とする別表四の申告調整は通常不要です。
ただし、収益や原価の計上時期、仕入税額控除を受けられない消費税等の処理などは別に確認します。会計処理と法人税の処理が常に一致するという意味ではありません。
消費税は売上げと仕入れをそれぞれ総額で認識する
会計上の収益1,000円を、そのまま課税売上高にしない
上記の消化仕入では、B社からA社への商品販売と、A社から顧客への商品販売があります。A社の課税売上げと課税仕入れは、次のようになります(消法28①・30①、国税庁「収益認識基準による場合の取扱いの例」ケース6)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 顧客から受け取る販売代金(税込) | 22,000円 |
| 課税売上高に算入する金額(税抜) | 20,000円 |
| 売上げに係る消費税等 | 2,000円 |
| B社に支払う仕入代金(税込) | 20,900円 |
| 仕入代金の税抜本体額 | 19,000円 |
| 仕入れに係る消費税等 | 1,900円 |
仕入税額控除を全額受けられる前提では、消費税等の差額は2,000円-1,900円=100円です。実際の申告は課税期間全体で行い、国税・地方消費税の計算や端数処理もあるため、この100円は取引単位の説明用の金額です。
課税売上高が必要となる免税点や簡易課税の適用判定、課税売上割合の計算等でも、会計上の純額の収益をそのまま使わず、消費税上の金額を集計します(消法9②・30⑥・37①)。
売上げ・仕入れの時期
消費税では、棚卸資産の譲渡の時期は原則として引渡しの日です(消基通9-1-1)。
この例のように、顧客への販売時にA社の仕入れと販売が成立する契約であれば、その時点でB社のA社に対する売上げと、A社の顧客に対する売上げを認識します。店頭への搬入や代金の精算だけを基準に、取引の計上時期を決めないようにします。
簡易課税の事業区分は、科目名では決めない
簡易課税を適用する場合も、会計上「手数料収入」と表示したことだけで、第5種事業と判断することはできません。
本例のように、他の者から購入した商品をその性質・形状を変えず一般消費者に販売する事業は、通常、小売業として第2種事業に該当します。B社のA社に対する商品販売は、通常、卸売業として第1種事業に該当します。実際には、商品販売契約なのか手数料契約なのかを確認して判定します(国税庁「簡易課税制度の事業区分」「デパートのテナント」)。
インボイス制度開始後の注意点
仕入税額控除には帳簿・請求書等の保存が必要
一般課税で仕入税額控除を受けるには、原則として所定の帳簿と適格請求書等を保存します。純額で収益計上していることは、この保存要件を省略できる理由にはなりません(消法30⑦)。
本例では、A社はB社からの税込20,900円の仕入れに関する適格請求書等を保存します。A社が仕入明細書等を作成する場合も、必要な事項を記載し、B社の確認を受けたものを保存することで対応できます(消法30⑨三)。
A社から顧客への税込22,000円の販売については、A社が売主として適格請求書等の交付に対応します。小売業では、適格簡易請求書の要件を満たすレシート等による対応も可能です(消法57の4①②)。
仕入先がインボイス未登録の場合
B社が適格請求書発行事業者でない場合は、上記の例と同様に1,900円の全額を控除できるとは限りません。
免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置では、必要な帳簿・区分記載請求書等を保存するなどの要件を満たす場合、次の割合の控除が認められます。令和8年度改正により、令和8年10月からの割合・期間が見直されています。
| 課税仕入れを行った期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 経過措置による控除なし |
また、一の未登録事業者からの課税仕入れについて経過措置を適用できる金額の上限は、2026年10月1日以後に開始する課税期間から、事業年度の税込仕入額1億円までに引き下げられています。控除割合の切替えと、この上限額の適用開始時期は区別します(所得税法等の一部を改正する法律〔平成28年法律第15号〕附則52・53、国税庁「令和8年度税制改正特集」)。
控除できない消費税等が生じる場合は、その会計・法人税の処理も含めて、上記の仕訳例を調整する必要があります。
期中に総額で記帳し、決算等で純額表示にする場合
会計上、純額表示をすべき取引について、消費税の集計や取引先との照合のため、期中は売上・仕入を総額で記帳し、決算等で純額表示へ振り替える方法も考えられます。
税抜経理であれば、上記の例のA社について、次のように処理します。
期中の仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 22,000円 | 売上 | 20,000円 |
| 仮受消費税等 | 2,000円 | ||
| 仕入 | 19,000円 | 買掛金 | 20,900円 |
| 仮払消費税等 | 1,900円 |
この段階で、税抜売上20,000円と税込仕入20,900円について、適用税率・インボイスの状況等に応じた消費税区分を設定します。
決算等の表示振替
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 20,000円 | 仕入 | 19,000円 |
| 手数料収入 | 1,000円 |
この振替は、商品の販売や仕入れを取り消す処理ではありません。消費税集計に影響させない表示上の振替として、借方・貸方とも通常は「対象外」等の区分で処理します。
振替後も、消費税の集計に税抜売上20,000円と仕入れに係る消費税等1,900円が残っているか確認します。振替仕訳に課税売上げ・課税仕入れの区分を付けると、元の課税売上げや課税仕入れを消してしまうことがあるためです。
会計ソフトによって設定方法は異なります。消費税の集計表、総勘定元帳、売上・仕入明細を照合し、通常の買取仕入と混在する場合は補助科目等で区別しておきます。また、月次・中間の財務情報を作成する場合も、必要な表示調整を行います。
税込経理を採用している中小企業の場合
収益認識会計基準を採用せず、取引の実態に沿って売上・仕入を総額で計上する中小企業が税込経理を行う場合、上記の取引の基本的な仕訳は次のとおりです。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 22,000円 | 売上 | 22,000円 |
| 仕入 | 20,900円 | 買掛金 | 20,900円 |
売上げと仕入れの差額は1,100円ですが、これは納付する消費税等を費用にする前の金額です。上記の前提で消費税等の差額100円を租税公課に計上すれば、他の費用を考慮する前の利益は1,000円となります。
税込経理による納付消費税等の損金算入時期は、申告時期や決算での未払計上等も踏まえて別に確認します。
税法上、税込経理を選択できることと、収益認識会計基準に基づく財務諸表上の収益表示は別の問題です。同基準を適用する会計では消費税等を収益に含めないため、税込経理の差額1,100円を、そのまま同基準による収益として説明することは適切ではありません(収益認識会計基準47項、国税庁タックスアンサーNo.6375)。
委託販売との違い
消化仕入と委託販売の違いは、商品の保管責任だけで判断しません。誰が誰に商品を販売し、小売業者は何の対価を受け取る契約なのかを確認します。
| 確認事項 | 本文の設例の消化仕入 | 通常の委託販売 |
|---|---|---|
| 商品の取引関係 | B社からA社、A社から顧客への商品販売 | 委託者の計算による顧客への商品販売 |
| 小売業者等の立場 | 商品の仕入れ・販売を行う | 商品販売を受託する |
| 小売業者等の消費税上の課税売上げ | 顧客への商品販売額の全額 | 原則として委託販売手数料 |
| 保管・盗難・返品等の責任 | 契約内容を確認 | 契約内容を確認 |
委託販売の受託者は、原則として委託者から受け取る販売手数料を、役務提供の対価として課税売上げに計上します。標準税率の課税資産だけの販売を委託されている場合には、受託者が商品販売額を課税売上げ、委託者への支払額を課税仕入れとして処理できる取扱いもあります(消基通10-1-12)。
ただし、軽減税率対象商品の委託販売では、この総額処理の取扱いは適用されず、販売手数料自体には標準税率が適用されます。消化仕入による商品の売買と、商品の販売を受託する役務提供を混同しないことが重要です。
契約・会計・消費税の記録をそろえる
消化仕入の処理では、次の事項を確認しておきます。
- 契約上、商品の売主・買主が誰になるか
- 在庫、保管、返品、値引き等の責任を誰が負うか
- 採用する会計ルールと、本人・代理人の判定結果
- 消費税上の商品販売額・仕入額と適用税率
- 適格請求書等の交付・保存と、仕入明細書の確認方法
- 会計上の収益と消費税の集計額が異なる理由を説明できる明細
会計上の収益を純額で表示する場合でも、商品の仕入れと販売に関する消費税の記録は残す必要があります。決算書の表示と消費税申告の集計が、それぞれ取引の内容に合っているかを確認しましょう。
主な根拠資料
- 法人税法22④、消費税法9②・28①・30①⑥⑦⑨・37①・57の4①②
- 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」47項、企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」39~47項
- 国税庁「収益認識基準による場合の取扱いの例」(平成30年5月)ケース6・6頁。原資料の消費税率は8%
- 国税庁「『収益認識に関する会計基準』への対応について~法人税関係~」(平成30年5月)35・36頁
- 日本税理士会連合会「中小会計指針・中小会計要領」掲載の各原文
- 消費税法基本通達9-1-1、同10-1-12
- 国税庁タックスアンサーNo.6375「税抜経理方式または税込経理方式による経理処理」、No.6509「簡易課税制度の事業区分」、No.6625「適格請求書等の記載事項」
- 国税庁質疑応答事例「デパートのテナント」
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」
- 財務省「令和8年度税制改正の解説・消費税法等の改正」849頁

