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水商売(キャバクラ店・クラブ)の税務トラブルは、どのようなものがあるか

水商売(キャバクラ店・クラブ)の税務トラブルは、どのようなものがあるか

概要

 キャバクラ店・クラブの税務調査では、売上を誰がどれだけ計上すべきか、キャストへの支払が給与か報酬か、源泉所得税と消費税をどう処理するかが争点になります。お店が作成した契約書や支払明細だけで結論が決まるわけではありません。売上金の流れ、勤務の実態、支払の計算方法を確認する必要があります。

売上の計上と経営主体

 現金売上、カード売上、売掛金などは、店舗ごとの伝票・日報と照合して計上します。キャストへの日払額や店舗経費を当日の現金売上から支払っていても、店の売上と支払をそれぞれ把握しなければ、売上の計上漏れにつながります。

 複数の店舗や会社が関わる場合には、どの事業者に売上が帰属するかも問題になります。営業許可、賃貸借契約、カード加盟店契約の名義に加え、売上金を管理する者、経費を負担する者、従業員を指揮監督する者などを確認します。平成28年8月22日裁決では、店舗の名義人と実際に事業を営む法人との関係が争われました。東京地裁平成24年4月17日判決でも、クラブの売上の帰属が問題になっています(法法11・22②、消法13)。

 売上伝票が一部見当たらないというだけで、あらゆる期間・店舗の売上除外が当然に認められるわけでもありません。平成24年5月25日裁決は、個々の資料からどこまで売上除外を認定できるかを検討しています。店側も、売上伝票、カード明細、入金記録、現金出納帳を日々照合できる状態にしておくことが大切です。

キャストへの支払は給与か、報酬か

 キャストへの支払が給与に当たるか、独立した役務提供への報酬に当たるかは、名称だけでは決まりません。出勤日や勤務場所を店が決める程度、接客や退店についての指示、勤務時間の管理、時給保証や歩合の計算方法、売掛金の回収リスクなどを総合して判断します。指名客を持つこと、歩合が付くこと、衣装代などを本人が負担することも、それだけで独立した事業者である根拠にはなりません(所法28①・204②一、消法2①十二)。

 福岡地裁平成28年7月28日判決と、その控訴審である福岡高裁平成29年1月11日判決では、出勤や接客に対する店の指導、時間的な拘束、支払の仕組みなどから、ホステスへの支払が給与と判断されました。

 平成30年1月11日裁決でも、月払・日払のキャストに対する支払の給与性などが争われました。この裁決に続く同じ紛争の東京地裁令和2年9月1日判決は、キャスト支給額の給与性を判断しています。ただし、同判決で消費税に関する請求が却下された部分は、出訴期間に関する判断です。消費税の実体上の争点について裁判所がすべて判断したという意味ではありません。

 キャスト以外への支払も、その人の役割に応じた判定が必要です。札幌地裁平成25年6月20日判決では、クラブの「ママ」に対する支払について、法人との関係や職務の実態から役員給与該当性が争われました。

ホステス等への報酬に関する源泉所得税

 居住者であるホステス等への支払が給与ではなく、所得税法上のホステス報酬・料金に当たる場合、原則として「報酬額-5,000円×報酬の計算期間の日数」に10.21%を乗じて源泉徴収税額を計算します。「計算期間の日数」は店の営業日数や本人の出勤日数ではなく、報酬額の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数です(所法204①六・205二、所令322)。

 例えば、4月1日から4月30日までを計算期間とする報酬60万円を支払い、同じ月に給与を支払っていない場合、源泉徴収税額は(60万円-5,000円×30日)×10.21%=45,945円です。最三小判平成22年3月2日・民集64巻2号420頁は、この「計算期間の日数」の解釈について判断しました。

 同じ人に同月中に給与も支払う場合には、上記の控除額について調整が必要です。また、給与に当たる支払は給与の源泉徴収規定で計算します。「5日働いたから報酬の計算期間も5日」「報酬の源泉税額の方が少ないから報酬とする」という判断はできません。

 ホステス等の報酬から徴収した源泉所得税等は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。この報酬は、給与等について納期の特例を受けているお店でも、その特例の対象になりません。

専属契約などの契約金に関する源泉所得税

 一定のお店のために役務を提供することなどを約束して支払う契約金は、仕度金や移転料などの名目でも、契約金としての源泉徴収が必要になる場合があります。給与を受ける人に雇用契約時の契約金を支払う場合も、その契約金は給与とは別に判定します(所法204①七)。

 居住者に支払う契約金の源泉徴収税額は、1回の支払額が100万円以下なら支払額の10.21%、100万円を超えるときは「100万円×10.21%+100万円を超える部分×20.42%」です。税率の区分は、現実の1回の支払額によって判定して差し支えない取扱いがあります(所法205一、所基通205-1)。

 分割払いを検討する場合には、契約内容と実際の支払時期・金額を一致させる必要があります。また、「手取り額を保証する」契約かどうかによって、店が負担する総額の計算は変わります。源泉徴収は支払を受ける人の所得税等の前払いに当たるため、源泉徴収税額の差をそのまま店の確定的な節税額とみなすことはできません。

消費税の仕入税額控除

 給与等の支払は消費税の課税仕入れに当たらず、仕入税額控除の対象になりません。一方、独立した事業者から国内で接客等の役務提供を受け、その対価を支払う場合には、課税仕入れになり得ます。受取人が所得税の確定申告書で「事業所得」と記載したかどうかだけで、店側の消費税処理は決まりません(消法2①十二・30①、消基通11-1-2)。

 一般課税で仕入税額控除を受けるには、原則として必要な帳簿と適格請求書等の保存を確認します。相手方が適格請求書発行事業者でない場合にも経過措置はありますが、控除できる割合は、2026年9月30日まで80%、同年10月1日から2028年9月30日まで70%、2028年10月1日から2030年9月30日まで50%、2030年10月1日から2031年9月30日まで30%です。経過措置にも保存要件等があります。簡易課税や納付税額の特例を適用する場合は、個々の支払について同じ方法で控除額を計算するわけではありません。

 したがって、「15万円を報酬とすれば消費税の納税額が必ず13,636円減る」とは説明できません。まず給与か課税仕入れの対価かを実態で判定し、その後に店側の計算方法とインボイスの要件を確認します。

調査に備えて確認したい資料

 お店側では、売上伝票・日報と現金・カード入金の照合記録、店舗間の資金移動、キャストとの契約書、出勤表、勤務条件の説明資料、支払計算表、源泉所得税の納付記録、請求書等を整合させておくことが重要です。契約書上の呼び方と実際の勤務・支払が違う場合には、実態に即して税務処理を見直します。

まとめ(報酬なのか、それとも給与なのか)

 お店側としては、上記の理由から、キャバ嬢等に対する支払いを給与ではなく報酬(キャバ嬢等からすると事業所得)としたがる傾向にあります。

 しかしながら、いざ、税務調査が入った場合は、お店側にとって厳しい結果がでている(給与と判断される)のが実情です。

 プロのホステスを主体としているのではなく、学生・OLがアルバイト感覚で働いているようなお店は要注意です。

 なお、 報酬なのか、それとも給与なのかについては、下記に参考事例として過去の裁決例・裁判例を挙げておきますが、ポイントは以下であり総合勘案により判断します。

判定項目給与報酬
ホステスとの契約が、雇用契約又はこれに準ずる契約等に基づいているかYESNO
ホステスが店側の指揮命令に服し、店側との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受けているか
・店長、黒服が出勤の可否を毎日確認しているのか
・店長等が作成したシフトに従って勤務しているのか
・ホステス各自が自由に出勤日を決めることができないのか
・タイムカード等を元に、店長等が勤務時間(出勤時間及び退勤時間)を管理しているのか
・無断欠勤や遅刻により罰金が科せられることがあるのか
・同業他店での勤務は禁止なのか
・接客方法や接客態度等に関する店側の詳細な決まりがあるのか
・ホステスが休むことができる日数には制限があるのか
YESNO
ホステスの業務が自己の計算と危険において、独立して営まれているか
・採用間もない一定期間であっても、ホステスに対して一定額の支給が保証されるようなことはないか
・ホステス自身が売掛金を回収する責任はあるのか
・ホステスへの支給額は接客時間等を基準に算出されていないか
・接客のためにホステスが費用負担をしているか
NOYES

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主な参考裁判例・裁決例

 最三小判平成22年3月2日・民集64巻2号420頁/福岡地判平成28年7月28日・税資266号-113、福岡高判平成29年1月11日・税資267号-2/平成30年1月11日裁決・裁事110集、東京地判令和2年9月1日・税資270号-83/札幌地判平成25年6月20日・税資263号-113/東京地判平成24年4月17日・税資262号-80/平成28年8月22日裁決・裁事104集/平成24年5月25日裁決・裁事87集。

裁決例・裁判例

(1)給与所得と判断されたホステス報酬-福岡地裁平成28年7月28日判決(税資266号-113(順号12891))、福岡高裁平成29年1月11日判決(税資267号-2(順号12951))

(1)福岡地裁(棄却)(控訴)
① 認定事実によれば、本件ホステスらの出勤日は各店舗のほかの従業員やホステスらとの間で調整して決められており、各自が自由に決めることができなかったこと、各店舗においては、始業前に朝礼への参加が義務付けられ、業務開始の準備、接客方法や接客態度等に関する詳細な決まりがあり、これらに基づいてホステスらに対し業務上の指導が行われることもあったことが認められる。これらの事実に照らせば、本件ホステスらは、原告(お店側)の業務上の指導の下で、接客等の業務を行っていたといえる。そして、ホステスらが顧客から受け取る金員は、原告の売上げとされ、ホステスらが受け取る金員は給与規定に基づき計算されたものに限られていたことからすると、本件支給金員は、ホステスらが提供する労務の対価であったといえる。

② 本件ホステスらの勤務時間は、タイムカード等によって管理されていなかったものの、出勤時間及び退勤時間は決まっており、これに違反した場合には罰金が科されていたこと、出勤日はホステスらの希望を踏まえて調整されていたものの、休むことができる日数には制限があった上、出勤が強制され、自由に休みを取ることができない場合があり、ホステスらが自由に決めることができなかった。このことからすると、本件ホステスらは、給与支給者である原告との間で、時間的な拘束を受けていたといえる。

③ 以上の事実に照らせば、本件支給金員は、原告とホステスらとの間で締結された、雇用契約又はこれに類する原因に基づき、使用者からの指揮命令に服したことの対価として受領していたものといえるから、本件支給金員は、給与所得に当たり、所得税法204条1項6号は適用されず、本件告知期間の源泉徴収に係る所得税額は、法185条1項に従って算定されることとなる。

(2)福岡高裁(棄却)(上告・上告受理申立て)
① 本件各店舗が接客付き飲食店であり、本件ホステスらの業務が個々の客を接客するものであることからすれば、本件ホステスらが、それぞれの顧客情報を管理していたからといって、直ちに本件ホステスらが自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたことが根拠付けられるものではない。

② 本件各店舗のマニュアル等において、顧客名簿の作成を促す記載がみられることや、本件支給金員はホステスらの出欠、遅刻の有無、同伴の有無、同伴者の氏名等を記載した管理表等を用いて計算されているため、ホステスらにおいて、その正確性を確認するため、顧客名簿との照合をせざるを得ないことからすれば、本件ホステスらがそれぞれ顧客情報を管理しているからといって、このことのみから直ちに本件ホステスらが自己の計算と危険において独立して業務を行っているものということはできない。

③ 控訴人(お店側)は、本件ホステスらが風営法2条13項所定の接客業務受託営業を営む者であることを前提に縷々主張する。しかし、本件支給金員の所得区分を判断する上で、本件ホステスらが風営法にいう接客業務受託営業者に当たるか否かは全く関係がなく、控訴人の主張は失当である。なお、同項は雇用契約による場合も予定しているというべきであるから、同項の規定から直ちに本件支給金員が当然に請負契約又は委任契約に基づく報酬であると認めることはできない。

(2)事業所得に該当するものと給与所得に該当するものがいるとされた事例-平成26年7月1日裁決(東裁(諸)平26第1号)

① 一般に、給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決)。したがって、ある給付が給与等に当たるか否かについては、労務等の提供及び支払の具体的態様等を基に、客観的、実質的にみて上記の基準に該当するかどうかによって判断するのが相当である。

② 認定事実によれば、B及びCらは、出勤表や各タイムカードにより出勤日や入退店時間、従事時間、同伴、遅刻及び欠勤等を請求人(お店側)によって管理され、請求人の指揮命令に服して、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務を提供し、その対価として、日給又は時間給を基本とし、これに、各人が接客業務を行ったか否かに関係なく得意客の飲食代金に応じ決定された金額とホステスチャージ・同伴の実績等に応じ決定された金額が加算された金員を、月払により支給されていたものというべきである。そうすると、請求人が、B及びCらに支払った金員は、いずれも所得税法28条1項に規定する給与等に該当すると認められる。

③ Aについては、本件店舗において接客業務に従事していたことにつき、請求人との関係において空間的、時間的な拘束を受け、請求人の指揮命令に服していたとまではいえない上、Aに対する金員は、Aの客の売上げの50%相当額に当該客のほとんどの者が支払っていたホステスチャージ及び同伴料等が加算される支払体系であったこと、及び接客のために費用負担をしていたことが推認されることからすると、所得税法28条1項に規定する給与等には該当しないと認められる。

(3)キャストに支払った金員は給与等に該当するとした事例-平成30年1月11日裁決(裁事110集)

① 請求人(お店側)は、請求人が営むキャバクラ店において接客業務に従事する女性(キャスト)は請求人から時間的、空間的な拘束を受けておらず、営業で必要な費用(携帯電話代金等)を負担しているから、キャストへの支給額(本件支給額)は所得税法第27条《事業所得》第1項に規定する事業所得に該当する旨主張する。

② しかしながら、キャストは接客業務に従事するに当たり、請求人との間で、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意していたこと、請求人はキャストの勤務時間又は接客時間を管理していたこと、キャストは指名客以外の客に対しても店長の指示により接客していたことが認められるから、キャストは入店から退店までの間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的又は断続的に労務又は役務の提供をしていたとみることができる。そして、キャストが営業のために必要な費用の一部を負担しているとの請求人の主張を考慮しても、本件支給額は接客時間等を基準に各種手当て及びペナルティの有無を勘案して算出されていること、採用後1、2か月間は一定の時給が保証されていること、キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかったことからすれば、キャストは自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできない。以上によれば、本件支給額は、キャストと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価であるから、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等に該当する。

(4)キャバクラ店のキャストに支払った業務の対価は給与等に該当とするとした事例-東京地裁令和2年9月1日判決(平成30年(行ウ)268号、平成31年(行ウ)第197号追加的併合)

ア 本件月払キャストについて
 本件月払キャストは、原告(キャバクラ店を営んでいた株式会社)から事前に勤務条件を説明された上で、それに合意して本件各店舗で勤務を開始したものである。
 また、勤務に際しては、仮に本件各店長が出勤の可否を毎日確認している実情があるとしても、本件各店長との間で、週の出勤日数や曜日について事前に取り決めをし、本件各店長が作成したシフトに従って勤務することが前提になっており、本件各店長において客が来ないと判断した場合に帰らせることがあるなど、退店についても本件各店長の指示を受けている。そして、本件各店長は、本件月払キャストについて、タイムカードによる入退店時刻を基礎として、休憩時間及び待機時間を差し引いて算出した接客時間をパソコンで管理し、採用後間もない本件月払キャストについては、接客時間が少なくなることから、入退店時刻による勤務時間を基に管理している。加えて、本件月払キャストは、無断欠勤等により罰金を科されることがあり、他のキャバクラ店での勤務も禁止されている。これらのことからすれば、本件月払キャストは、原告の指揮命令に服して空間的、時間的拘束を受けていたといえる。
 さらに、本件月払キャストは、あらかじめ決められた接客又は勤務1時間当たりの支給額に接客時間又は勤務時間を乗じて計算した金額に、各種手当の額を加算した額の支給を受けており、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供をし、その対価として金員の支給を受けていたものといえる。
 そして、本件月払キャストによるこのような業務の対価の支給の受け方に加え、本件月払キャストは採用後間もない期間においては勤務時間に応じた一定額の支給が保証されていたこと、本件各店舗における飲食料金等の支払方法は原則として現金又はクレジットカードによるとされており、本件月払キャストが客に対する売掛金を回収する責任を負うことはなかったことからすれば、本件月払キャストが自己の計算と危険において労務又は役務の提供をしていたということはできない。

イ 本件日払キャストについて
 本件日払キャストは、原告から事前に勤務条件を説明された上で、それに合意して勤務を開始したものである。
 また、本件日払キャストについて、主として本人の申出により出勤日が決まるものの、通常勤務する店舗においてキャストが余っているときは、原告が営む他の店舗において勤務することを依頼される場合もあり、本件各店長において客が来ないと判断した場合に帰らせることもあるなど、勤務する店舗や退店について本件各店長の指示を受けている。そして、本件各店長は、本件日払キャストについて、入店から退店までの時間から本件各店長に申し出て休憩したり、店外に出たりするなどしていた時間を差し引いた時間を勤務時間として管理している。これらのことからすれば、本件日払キャストは、入店から退店までの時間において、原告の指揮命令に服して、空間的、時間的な拘束を受けていたといえる。
 さらに、本件日払キャストは、あらかじめ決められた勤務1時間当たりの支給額に勤務時間を乗じて計算した金額に、各種手当の額を加算した額の支給を受けており、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供をし、その対価として金員の支給を受けていたということができる。
 そして、本件日払キャストによるこのような業務の対価の支給の受け方に加え、本件各店舗における飲食料金の支払方法が原則として現金又はクレジットカードによるとされており、本件日払キャストが客に対する売掛金を回収する責任を負うことはなかったことからすれば、本件日払キャストが自己の計算と危険において労務又は役務の提供をしていたということはできない。

ウ 原告の主張について
(ア) 原告は、原告と本件各キャストの間の契約において、本件各キャストが自由意思により出動日、入店時刻及び退店時刻を決めることができ、本件各キャストは原告からの仕事依頼の指示に対する諾否の自由を有していた旨主張する。
 しかしながら、本件月払キャストについては、本件各店長との間で、週の勤務日数や曜日について事前に取り決めをし、本件各店長が作成したシフトに従って勤務することが前提になっており、無断欠勤等の場合は罰金が科されることになっていたものである。また、本件各キャストは、前記ア及びイのとおり、原告から退店等についての指示を受けることがあり、さらに、本件各キャストの勤務時間については、本件各店長が管理していたというのである。
 したがって、本件各キャストは、原告からの仕事依頼の指示に対する諾否の自由を有していたということはできない。
(イ) また、原告は、本件各キャストに対し、簡潔に本件各店舗の仕組みについて教えた後は一切指示をすることはなく、顔見知りが客として来た場合や過去に特定の顧客の接客をして不愉快な思いをした場合等には、本件各キャストは接客を断ることができるなど、本件各キャストが原告の指揮命令に服していない旨主張する。
 しかしながら、原告の主張するこれらの事情は、雇用契約の下において使用者の指揮命令に服している場合にもあり得るものであり、このような事情があるからといって、本件各キャストが原告の指揮命令に服していないということはできない。
(ウ) 原告は、①本件各キャスト同士を比較しても、同じ時間だけ接客をしても異なる所得を得ていること、②本件各店舗においては、席ごとの売上げを一定の割合で本件月払キャストに分配するシステムを採用しており、本件月払キャストに支給された金員は完全出来高方式に基づく報酬であること、③本件各キャストは、本件各店舗において、各種イベントを主催し、これに関し高額な報酬を受け取ることができることから、本件各キャスト支給額は、労務又は役務の提供との対価性を欠くものである旨主張する。
 しかしながら、①についてみると、本件各キャストによって接客又は勤務1時間当たりの支給額が異なるのは、客からの指名等の実績により支給額が決定されていたことによるものであり、業績への貢献等によって支給額が異なり得ることをもって、本件各キャスト支給額が労務又は役務の提供の対価ではないといえないことは明らかである。また、②についてみると、仮に本件月払キャスト支給額の算定方法が席ごとの売上げを一定の割合で本件月払キャストに分配することを意図して決定されたものであったとしても、本件月払キャストへの支給額は、接客又は勤務1時間当たりの支給額に接客時間又は勤務時間を乗じた額を基本として決定されるものであり、本件月払キャストが原告に対して提供した労務又は役務の提供の対価であることが否定されるものではない。さらに、③についてみると、本件各キャストがイベントを主催することにより高額の支給を得ることができたとしても、本件各キャスト支給額は、イベント開催日も含めて、接客又は勤務1時間当たりの支給額に接客時間又は勤務時間を乗じて各種手当の額を加算して決定されていたのであるから、これが労務又は役務の提供の対価であることが否定されるものとはいえない。
(エ) 原告は、①客との連絡は本件各キャストが管理し、本件各キャストが自身の収益の計算までしていること、②衣装代、整髪代、名刺代等の必要経費は本件各キャストの自己負担であり、本件各キャストは努力によって指名客が増えるほどその所得が増える一方、何もしなければ接客につくことができず所得を得ることができないという危険を抱えており、現に報酬が0円の日やマイナスになっている日がある者がいることなどから、本件各キャストは、自己の計算と危険において独立して業務を営んでいるといえる旨主張する。
 しかしながら、①については、このような事態は、雇用契約の下で、自己の計算と危険において業務を営んでいるわけではない場合にもあり得ることである。また、②についても、雇用契約の下で、自己の計算と危険において業務を営んでいるわけではない場合であっても、一定の必要経費を労働者が負担することはあり得ることであり、1日単位でみれば赤字となり得る日は生じ得るものである上、本件各キャストは、客から直接代金の支払を受けることはなく、売掛金の回収のリスクを負担することもないから、②の事情をもって、本件各キャストが自己の計算と危険において独立して業務を営んでいるということはできない。
(オ) 原告は、本件各キャストが原告において接客業務をして得た報酬を事業所得として確定申告をしていることや、本件各キャストが雇用保険及び労働者災害補償保険に加入していないことは、本件各キャストが個人事業者であることを裏付けるものである旨主張する。
 この点について、証拠によれば、本件月払キャストであるAは、原告から支給を受けた金員を事業所得として、平成28年分の所得税等に係る確定申告をしていたことが認められる。しかしながら、本件各キャストが原告から支給を受けた金員を事業所得として確定申告をしていたとしても、当該キャストが当該所得を事業所得として申告すべきものと考えていたにすぎず、これをもって当該所得が事業所得であることにはならない。また、本件各キャストが雇用保険や労働者災害補償保険に加入していないとしても、原告が加入手続をしていないにすぎないともいえるから、これをもって本件各キャストが個人事業者であることが裏付けられるとはいえない。
(カ) 原告は、本件各告知処分等は、所得税法204条1項6号の「ホステス」についてみだりに規定の文言を離れて解釈するものであって、課税要件明確主義に反し、また、本件各告知処分等においてのみホステスへ支払われた金銭を給与とするのは、租税法律主義に反する旨主張する。
 しかしながら、所得税法204条1項6号、2項1号によれば、ホステスの業務に関する報酬についても、同法28条1項に規定する給与等に該当することがあり得るのは明らかである。したがって、本件各告知処分等は、同法204条1項6号の「ホステス」についてみだりに規定の文言を離れて解釈するものではなく、課税要件明確主義に反するとはいえない。また、ホステスへ支払われた金銭を給与と認定することが租税法律主義に反するともいえない。
(キ) 原告は、以上の他にも本件各キャスト支給額が所得税法28条1項に規定する給与等に該当しない根拠を主張するが、これらはいずれも上記の給与等に該当しないことの根拠となるものとはいえない。

エ  以上によれば、本件各キャストは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供をしていたということができるから、本件各キャスト支給額は、所得税法28条1項に規定する給与等に該当するものと認められる。

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